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結界の中は天変地異

俺の結界はあらゆる攻撃も外部へ漏らさない。 

この中でなら俺も全力を出せるが…戦力を一人置いてきてしまったのは痛い。

セスタめ、あの時よりも遥かにパワーアップしている!


「はぁぁぁ!」


「でりゃあぁぁぁ!」


勇者の聖剣ユーデクスと魔王の壊剣(かいけん)シュトレーナが衝突する。

やはりというか、両者の振るった万全な状態の剣は呆気なく折れた。


空気中の水分を凍らせようとすると、セスタは結界内の大地を操って地表を溶岩で満たしてそれを阻止した。


俺は結界の上空を漂う雲を操り雷を準備した。

あいつは結界の中にある物しか使えないが、俺は結界の外から攻撃を撃ち込むことができるのだ。


「喰らえ!サンダルフォン・リクスト!」


「アブソーバーメイデン!」


結界の外から雷撃が飛び込んだ。

しかしセスタが召喚した謎のアイアンメイデンに雷撃は飲み込まれ、そのまま使い手のエネルギーとなってしまった。


「ふぅ…次元を超えての干渉はできるようだな。所詮は魔族の張った結界か。どんどん撃ち込んでこい。全て吸収して私の力にしてやろう」


吸収されると分かっていて撃つわけがない。

俺は魔法で肉体を強化し、接近戦に持ち込んだ。


「そうだ、野蛮なオークにはそのファイトスタイルがよく似合っているぞ」


強気を装っているが、セスタは俺との相手に手一杯だった。

その背後から、バリアに包んでいたブレイズとアクトが攻撃を仕掛けた。


「ぐあっ!卑怯だぞ!」


「これがお前の大嫌いな魔族の戦い方だ!」


さらにもう一撃と言ったところで、セスタは魔力を解放して俺達を吹き飛ばした。

せっかく二人に付けてもらった背中の傷は、魔法の力で治されてしまった。


「デートルガ・アーク!」


セスタの背後に巨大な光輪が現われる。

すると指示していないのに結界が縮み始めた。


「俺の結界を操っているのか!?」


「便利な結界だな」


勇者を封じ込めるはずだった結界は牙を向けた。

セスタの思うがままに動く結界は鋭く尖り、俺達に攻撃してきたのだ。


「お望み通り解除はしないでやろう。お前達はこの中で殺してやる!」


既に結界は俺の手を離れてセスタの物となった。

しかもこれを維持するために消費しているのが俺の魔力だからタチが悪い。


やはり、あの技を使うしかないか…


「アクト!一瞬でいい、こいつの動きを止めろ!」


「分かった!」


「魔王!俺はどうすれば!?」


「ブレイズ!勇者との戦いは勇者であるお前が決着をつけろ!古来から伝わる伝承で魔王が勇者に勝てた例はないからな!俺にできるのはせいぜいこれぐらいだ!」


アクトは真っ正直からセスタに立ち向かっていく。

実力が離れていると分かっているのに、ああして突撃していけるとは肝の備わったやつだ。


「はぁぁぁ!」


「その太刀筋、我流だな…!?」


油断していたセスタの防御をアクトが崩し、そこから攻撃を当てた。


「油断したな!」


「このぉぉおおお!」


セスタが動揺した一瞬を見逃さず、俺は切り札の呪文を唱えた。


「ディザス・アサルド・ラーマァァァァア!」


「うわっ!」


アクトは蹴り飛ばされ、結界に開いた穴から追い出された。

しかしよくやってくれた。

おかげで俺の技を命中させることができた。


「ん、何か呪文を叫んだようだが…不発に終わったな。魔族には使えない魔法じゃないのか?」


「魔族魔族と…戦ってる相手のことぐらい名前で呼べないのか」


「殺す相手の名前などいちいち──」


セスタは気付いていないが、既に術の効果が現れている。

俺の結界が消滅しているのが何よりの証拠だ。


「なんだ…何が起こっている?力が…抜けていく…」


「お前と俺で引き算だ。俺のパワーの分だけ、お前のパワーは減少する!」


「なんだと!?」


対策しようのない意外な技だったろう。

それもそうだ。

これはお前を倒すために編み出したとっておきの技なんだからな。


「ごめんなさい…俺達の実力が及ばず、この技を使わせてしまって…」


「ブレイズ!気落ちしてる場合じゃないぞ!引き算したところでセスタはまだまだ強敵だ!」


代価としてマイナスの役割を果たした俺は死んで消えてしまうが、未練はない。


「この国の魔族を頼むぞ!ブレイズ!」


「は…はい!」


いい少年だ。

知的生命体が人間しかいなかった世界から来たというのに、偏見を持たなかった。

彼ならこの国に住む魔族を救ってくれるだろう。

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