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第72話 どうやって殺すか

地底にいた私は、魔物を倒したクルミの腕でお姫様抱っこをされて、地上に向かっていた。

生きた心地がしない。

もしも今、あなたの兄弟弟子の3人は死んでいて、その内の2人は私達が殺しましたよなんて言ったら投げ捨てられるだろう。


「ねえ、クルミは魔族の事をどう思う?」


「急に何ですか?」


「いや…知り合いに魔族嫌いな人達がいてね。それって差別じゃん?」


「つまり魔族嫌いを克服して仲良くなって欲しいと?人の価値観なんて変えようとして変えられる物じゃありませんよ。まずその人が変わりたいって思わないと。それに嫌いイコール差別ではありません。誰だって苦手な人や殺したい人はいます」


ずいぶん達観したこと言うなこの子…


「ただまあ、勿体ないとは思いますよね。自分の世界を広げればそれだけ成長出来るのに」


「あなたは魔族が好きなの?」


「別に好きじゃないですけど嫌う理由もないじゃないですか。外見がどうって言われますけど、相手から見れば私達ヒトも妙な姿してますよ。前の街であったガングル族の女性なんて、どうしてヒトはクビナガゾウのフンと同じ色をしているのかって本気で考えてましたし」


意外だ!

あの師匠と兄弟弟子を持っていながら魔族に対する差別意識がないなんて!


「…もしかして師匠達が魔族嫌いなの知ってます?」


「え…」


「いますよね。著名人が差別意識を持った素振りを見せた瞬間に袋叩きにするやつら。もしあなたもあんな風に頭の弱い人達と同類だと言うなら軽蔑しますよ」


「だけど魔族嫌いだからって…殺すのは間違ってる」


「私もそう思います」


「だったらどうして止めないの?」


「私にその資格がないからです」


てっきり投げ捨てられると思っていたけど、クルミはしっかりと地上まで送り届けてくれた。

地上ではまだ悪臭が漂っていたが、明日になればこの臭いも風に乗って消えていくらしい。

臭いの原因は、冬眠中の魔物が出していた特殊な汗が原因だそうだ。


「それではシエルさん、私はこれで」


「これからどうするの?」


「この国のどこかにいる仲間を探します」


「…見つかるといいわね」


「ありがとうございます」


私はブレイズ達が部屋を取った宿に向かって歩いた。

幸い、宿が被るなどのハプニングは起こらず、この日の内に彼女と再会することはなかった。

そのあと宿に着いてからまず、ブレイズとアクトを私の部屋に集めてクルミが敵であることを伝えた。


「マジかよあんな子が…」


「大マジよ。多分私達じゃ勝てないわ」


アクトの凄い力は使えない。

3人掛かりで挑んでも勝ち目はないと、今回の動きを見て思った。


「まだそいつが俺達を敵だと認識してないならやりようはある」


「ブレイズ、何か策があるの?」


「暗殺だ」


「駄目よ!暗殺ってあんた!あんな子どもを殺すつもり!?」


「なら他に策はあるのか」


「…敵対してないならこのまま放置して…魔王と合流してセスタを叩くべきだと思う」


「それこそ駄目だ。クルミがお前の測った通りの実力なら、セスタと並んだ時点で勝ち目はない。2人が揃うケースだけは絶対に避ける必要がある」


「魔王って…そういえば魔王はどこで何やってんのよ!傷を治してるとか言って、ホントはもう1光年離れた国に逃げてんじゃないの!?」


「さっき連絡を取った。傷は完全に癒えたそうだ」


「だったらそいつも呼んで4人で何とかすればいいじゃない!」


「本命はセスタだ。それを忘れるな。魔王の力は決戦まで温存させておく」


このままじゃ意見がまとまらない…


「ちょっとアクト!あんたも何か案出しなさいよ!」


「シエルの案に一理あるけど、ブレイズの言う事が最もだ。バケモノを2人同時に相手しようなんて考えないで、俺達だけでやるべきだ」


「だから敵わないって言ってんじゃん!」


「力で敵わないならこれまで通り時間を掛けて倒す準備をすればいいだろ」


「そんな罠の通じる相手じゃないの!」


「なら真っ向勝負だ。言っとくがマテリアルに期待すんなよ。しばらく作れそうにないから」


こ、こいつ!

サラッと言ってるけど事の重大さ分かってんの!?

このまま戦ったら私達、セスタと戦う前にやられるかもしれないのよ!?

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