第8話 移動都市サンマルーキ
ユニークモンスターを倒した森からそう遠くない場所。そこには移動都市が来ていた。
移動都市というのは文字通り移動する都市だ。魔法や機械、超大型の魔物による牽引での移動など、移動方法は様々である。
数日おきに移動するのだが、住民が停まっていた地に取り残されたり、逆に難民達が入り込んできたりと問題点もあったりする。
「都市が滅茶苦茶高いところにあるわ~」
私達はエレベーターに乗って、その都市へと上がっているところだった。
「この移動都市はサンマルーキと呼ぶそうです。移動手段には機械国ギギで開発されたフロートシステムを採用しているそうで、理論上1時間で500キロメートルの移動が可能だそうです」
「解説どうも」
別にカジヤンの解説がなくとも、エレベーター前でもらったパンフレットに情報は載っている。というか今の説明は書いてあることをそのまま読んだだけだ。
「移動都市はその性質上情報の通達が早く、既に私達の手配書が出回っているかもしれません。なのでまず、このエレベーターを降りて最寄りのローゼンベルガーという服屋で変装していきましょう」
「そしたら勇者セスタの情報集めね」
都市に到着するとエレベーターの扉が開く。そこでまず、一つ目の試練が立ち塞がった。
「け、検問所…」
建物の出入口を塞ぐように検問所があり、その周りには大勢の人でごった返している。そりゃそうだ、都市の外から犯罪者を入れるわけにはいかないもんね。
「…やっぱ街に入るのは諦めますか」
「いいや、私は手配書がまだ来てない事に賭けるね」
このまま色んな場所を転々としていては何も解決しない。ここは勇気を振り絞って、そして神を信じてこの検問を通り抜ける!
「こんにちは~」
「入都ですね。身分を証明できる物はお持ちですか?」
「はいこれ、冒険者証明書です」
た、頼む…バレないでくれ…
「シエル・ラングリッター、冒険者ランクはB…前科無し………通って大丈夫ですよ」
ヨッシャー!ここにはまだ私の手配者が届いてないみたいだ!良かった~!
「それでは次の方~」
「あ~私はこの人の奴隷です~」
私に続いて奴隷を名乗ったカジヤンはあっさりと検問を通り抜けた。奴隷はあくまでの物扱いなので、身分証明の必要がいらないのだ。
「奴隷の印が残ってて良かったです。それじゃあ服を買いに行きましょうか」
その後にローゼンベルガーという店で私達は衣類を購入。ついでに別の店でウィッグやカラコンも買って、不意にガラスを見ると全く知らない顔となった私が映っていた。
「しばらくこれで過ごしましょうか」
「眼痛いんだけど…」
とりあえずこの姿なら捕まる心配もない。これでようやく、勇者セスタの情報を集めることが出来るぞ。
私達は都市に住む人達から話を聴いて、居住エリアにあるオノヤマというバーに情報が集まる事を知る事が出来た。
「あぁ、歩くの疲れるわ…情報集めって大変ね。見知らぬ人に質問すんの緊張するわ」
「まあ情報ゼロで終わるよりはいいじゃないですか。あれだったらまた背負って行きますよ。私、奴隷なんで…ところでクワァーバル様、大丈夫ですか?妙に静かですけど」
「俺は大地の精霊だ。こういう場所は得意じゃない。戦いのサポートもしてやれないから気を付けろ」
オノヤマというバーを見つけた私達は早速入店。ここでならセスタの情報も掴めるだろうか。