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第54話 アルマ王国へ出発

デカマユを倒した後、かつてケジンの町があった廃墟に他の町の騎士団達がやって来た。

私達は次の目的地となっているアルマ王国へ行くための木船を造っていたところを彼らに取り押さえられたのだった。




「だから私達はあの怪物を倒しただけだから!」

「あんな怪物をお前達だけで倒せるわけがないだろ!あれは一体なんだ!突然消えたという事は召喚獣か!」

「私は鍛冶師で他は剣士!召喚獣なんて呼べるわけないじゃないですか!」

「それだけじゃない!この町に住んでいた人達はどこへ消えた!」

「あの怪物に吸収されてしまったんですよ!」



オハリシドという町の騎士団長リックは唾を飛ばしてカジヤンを問い詰める。無意識なのかカジヤンはウサ耳を折っていた。


「俺達、先を急いでるんだ。悪い事をした証拠もないんだし、早く解放してくれないか」

「その船で国外へ逃亡するつもりだな!」


団員が木船目掛けて振り下ろしたハンマーをアクトが受け止める。しかも武器は没収されて腕も縛られている彼はなんと、額で止めたのだ


「アクト!ちょっとあんた!」

「どうか頼んます…俺達、先急いでるんで…」


血を流しながら地面を頭に付けた。痛みに耐えられなかったわけじゃない。これは土下座だ!


「は…あんた達!騎士の癖して騎士道精神ないわけ?子どもを殴った上に土下座させるなんて!」

「だったら大人らしくお前達も土下座してみたらどうだ。えぇ?」


ブレイズ、カジヤンが頭を下げる。私も頭を下げないと…うん、下げないといけないのは分かってるんだけど…


「…おい女、どうした?プライドってやつに邪魔されてるのか?俺が足で手伝ってやろう」

「その水虫付いた足で踏まれたくないんだけどぉ!?」

「んなっ!?この野郎!」


騎士団長の蹴りが炸裂し、私は横に倒される。纏意が発動出来ればこいつの足が怪我してたんだけどなぁ。


「へっ…あぁ?なに笑ってやがる」

「土下座してないけど?ただ横に寝そべってるだけですけど~?」


何度だって蹴られてやる。誰がこんな金属臭い男に詫びるもんか!


「てめぇ!」

「それじゃあ、あなた方との契約もここまでですね」



なんだ?後ろに立っていた騎士の一人が鎧を脱ぎ始めた。契約って言ってたけど、雇われ騎士なのかな?


「契約書に書いてありましたよね。非人道的な事には一切手を貸さない。そして任務中にそれを確認した場合、その時点で契約を解除すると。口頭でも確認したはずです」

「おいおい──」

「さて、私はあなた方とは何の縁もない剣士となったわけです。まず私は捕らえられた方々の言葉を信じて、ここは彼らを見逃してもらいたいわけですが…」

「クルミ…お前…!」

「天揺のオルテガ…でしたっけ。ちょっと大きいだけのマチュリアメギドラゴンすら倒せないあなた達が私の相手になるとでも?」


マチュリアメギドラゴンは危険度SSで翼竜型の魔物だ。しかも二つ名があるってことは、この人はユニークの個体を倒したってこと?


「さあ剣を収めて、その方々を解放しなさい」

「チッ…お前ら、そいつらを解放してやれ」


その人のおかげで私達は解放された。まあ、本気で戦えば私達が勝ってたけどね。


────────────────────────


「感謝する。俺はブレイズだ」

「私はクルミと言います。その木船、ここから海へは距離がありますし、運ぶの手伝いますよ」



その剣士はクルミと名乗った。私達と話している時はとても穏やかで、さっきみたいに人に圧を掛けるような人には思えなかった。


「そうですか、アルマ王国へ行くんですね。だったらまた会う事があるかも…」

「あなたもアルマに来るの?」

「はい。強くなるために色んな国を回っているんです。アルマもその目的地の一つですから」


クルミは誠実さを感じさせる人だった。



そして辿り着いた海岸で、私達は木船を浮かべた。それにしても4人乗り…沈んだりしないよね。



「今更だけど本当にこの木船で行くの?港から出る船に乗った方が良いんじゃないか?」

「いつ敵が来るか分からない。アルマで体勢を立て直すんだ」


「それでは私はこれで。縁があったらまた会いましょう」


乗組員4人で木製のオールを漕ぐ。砂浜にいるクルミに手を振られながら、私達はイケネミを発った。



「それで、この先どうすんだ?その勇者セスタを倒すにはいつまでも逃げてられないだろ」

「そのためにまず、勇者の弟子を迎え撃つわ。マユ、クロウ、レイ・スノビ―、そして残る一人…」



四人で力を合わせて、確実に一人ずつ倒す。それが一番望ましい戦い方だ。しかし相手がそう都合よく動いてくれるとも限らないだろう。



「迎撃戦をするつもりなら、早くアルマに着くべきだ。時間があればそれだけ準備が出来る」


迷っている暇はない。ブレイズの言葉を聞いてから私達のオールを動かす腕が速くなった。

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