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第6話 邂逅、斬木のヤノーコ

バニーラという魔族の脚力は素晴らしかった。私達を抱えているのにも関わらず、カジヤンは追ってくる兵達を振り切ってしまったのだ。




「って逃げたのは良かったけど遭難したじゃん!」


けれどカジヤンが森に入ったせいで遭難してしまった。方位磁石がグルグルと回っているのを見るに、おそらくここは普通の森じゃない。簡単には出られないだろう。


「また森燃やせばいいんじゃないですか?」

「お前達、まさか森を燃やしたのか!馬鹿野郎!」


カジヤンは真面目に考えないし土カスはうるさいし、どうすればいいのよ…


「とりあえずカジヤン、それちょうだい」

「え?クワァーバル様をですか?どうぞ…ってちょっと!」


元はと言えばこいつのせいだ!この森に捨ててやる!


「放せカジヤン!こんな土カス持っていても不幸になるだけよ!」

「精霊様を捨てるなんて罰当たりですから!ここは一旦冷静に!」

「うわあああああ!」

「うるさいわよカジヤン!」

「違いますよ!悲鳴です悲鳴!向こうの方からです!」




ひとまずクワァーバルを捨てるのは後回しに。冒険者として悲鳴を放っておくわけにはいかない。


「誰か助けてくれえええええ!」


悲鳴を辿るカジヤンについて行った。そこでは傷だらけになった冒険者達が、巨大なカマキリの魔物と戦っていたのだ。それを見た途端、カジヤンが叫んだ。


「あれはタイフウドオリカマキリ!…そういうことか!」

「ちょっとどういうことよ!?なんなのあのカマキリ!」

「良かった!手を貸してくれ!」


手を貸してくれってこいつ無茶苦茶強そうなんだけど!?


「あいつは基本、切っても再生するセレンの木が生える森にのみ生息する魔物です!ですがここはハチヨウの木が集まった森、本来タイフウドオリカマキリがいて良い場所ではないんです!」

「なんでそんなやつがここにいるのよ!」


倒れていた冒険者を襲おうとしていた鎌を剣で弾いた。凄いパワーだ。腕にジーンときた!


「稀にセレンの木の再生が追い付かず、本来いるべき森を離れて別の森へ移ってしまう個体がいるんです!その場合森にはまるで台風が通った後の様な惨状が広がり、そのことからタイフウドオリという名前が付けられました!こいつはおそらくそのパターンです!」

「解説どうも!一旦引くよ!」



こいつをこのままにしておくつもりはないけど、負傷者がいる以上まともに戦っていられない。私は視力の良い虫系の魔物に有効な閃光弾を地面に投げつけた。そしてカマキリが怯んでいる内、冒険者達を連れてその場を離れた。




カマキリから離れて逃げた先は小さな泉。私達は冒険者達の手当てをしながら、あのカマキリについて話を聴いていた。


「あいつは斬木(ざんぼく)のヤノーコと名付けられたユニークモンスターです。3日前、北にあるセレンの森で急成長を遂げたあいつは森の木を全て伐採。それから行き着いた先を荒らし回っているんです」

「我々はヤノーコの討伐クエストを受けてここに来たのですが…侮っていました。まさかこれほどまでの強さだとは…」


ユニークモンスターは侮っているような人が勝てるようなやつじゃない。魔物の中でも突然変異種、異常な力を持ってしまった個体なんだ。


「シエルさん…」

「私も放っておくつもりはないわ」


そうは言ってみたけど、私達で勝てるはずがない…せいぜい強い冒険者達が集まるまで時間を稼ぐしか出来ないだろう。



「シエル、お前ではあいつに勝てないぞ」

「黙らっしゃい土カス。今作戦考えてるんだから」

「あいつと戦いたければ俺が力を貸してやる」

「…あんた強いの?瓶詰精霊様に何が出来るって言うんですか~」

「この姿でもお前を倒すことぐらいは出来る」






「待ってくださいシエルさん!水の中は駄目です!流石に精霊様も死にます!」

「うるせえ!こいつは沈めることに決めた!じゃないと気が済まない!」

「考え直せ!俺達が力を合わせなければあいつは止められない!被害は広がって更に多くの者が傷付くことになるぞ!」


くっ…!確かにそれは嫌だけどこんなやつと協力なんて…!


「シエルさん頼みますよ!」



カジヤンが必死になって頼むものなので、この土カスを水に沈めるのはやめにした。


ここまで偉そうにしてるけど本当にユニークが倒せるのだろうか。もしも無理だったら今度こそ沈めてやるんだから。

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