第53話 共闘
噴き上がる水の道を渡った先には森があった。さらにその先を進んで、敵を観察しているブレイズと合流した。
「フッ…お互いに迷いを断ったようだな」
「えぇ、ただ来たのは良かったけど、まだ魔力が回復してなくて…」
纏意は発動出来てもケンソォドソーダーは無理。第1ラウンドでブレイズが言った作戦は不可能だ。
「ウオォオオオオオ!」
巨体のマユことデカマユの足元にいるアクトは、隕石のようなパンチを避けながらチビマユを切り伏せていた。それにしても凄い子だ。軽量型の鎧すら着ずに戦うなんて。
「加勢してくる。あんたはケンソォドソーダーを準備なさい!」
「私も行きます!」
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森を飛び出し、私とカジヤンはアクトナイトに加勢。無数のチビマユ達を相手に戦いを挑んだ。
「あんたは自分の意思でここに来た!そう思っていいんだな!?」
「私は冒険者よ!依頼されたからここに来た!依頼主が助けを求めたから戦うんだ!」
「及第点だ!」
シェルモードからナイトモードへ。一撃で無力化することを考えながらチビマユ達の身体を斬り絶つ。するとこいつらには再生能力は備わってないようで、倒した個体は黒い煙となって消滅した。
「チッ!キリがねえな!」
どれだけ倒しても、すぐにデカマユの翼からチビマユが産み落とされてしまう。敵の数は増える一方だった。
「何か弱点は見つかったんですか?」
「いいや。そもそもこいつらを相手にしながらだと本体を叩く余裕がなくてな!」
突然、辺りが影に覆われる。すると私とカジヤンはアクトに持ち上げられ、その地点から急速離脱。
振り返ると、さっきまでいた場所にデカマユのパンチが落ちていた。
「元魔女の戦い方とは思えないわね…」
「シエルさん!ブレイズさんの元に戻ってケンソォドソーダーの準備をしてください!」
「だけど、回復するにも結構の時間が──」
「あなた達があいつを倒すまで!私達がここで時間を稼ぎます!行ってください!」
私が充分な威力のケンソォドソーダーを撃てるまでかなり時間が掛かる。それでも、カジヤンは時間を稼ぐと言ってくれた。出来ないと思っていたさっきの作戦で私達が倒すと信じてくれたんだ。
「だったらここは任せる!」
「デカい一撃頼みますよ!」
「任せられた!」
私もカジヤン、それとアクトを信じよう。そうしてブレイズのいる森へ戻った。
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「なるほど、分かった。なら俺の魔力をお前に分ける。それでお互いに1撃ずつ撃てるはずだ。纏意を発動しろ」
チャンスは一度きり…そう考えている間にブレイズが私の手を取り、魔力を送ってきた。これで疲労感がなくなったりするわけではないけど、力が増幅するのを確かに感じた。
「だったら早速──」
「魔力を溜めるのは良いが発射のタイミングは俺が合図する」
自分の肉体に魔力を纏わせる技、それが纏意。魔力を消費するだけで発動できる魔法とは違って、魔力そのものを自分の意思で操作しなければならないという高難易度のテクニックだ。
そしてこれから撃つケンソォドソーダーとは、斬るという破壊運動を起こした魔力を前方へ押し出すという技だ。
「魔力の充填完了!」
「再度確認するぞ。俺は下半身、お前は上半身だ」
遠くで戦うカジヤン達の動きが変わっていた。羽虫のように飛び回り攻撃してくるチビマユ達を放置し、デカマユへの集中攻撃だ。
アクトは剣からのビーム攻撃。カジヤンはマジックストラップのハンマーを何度も投げつけている。大型の魔物相手だったらかなり有効な戦術かもしれない。しかしデカマユはリアクションを見せずに二人に手を伸ばしていた。
「カジヤン!アクト!」
デカマユが二人を掴まえた。きっとあのまま握り潰すつもりだ。
しかしアクトは自力で拳から脱出。そしてカジヤンを掴んでいた拳をバラバラに切り裂くと、彼女を連れてマユから離れた。
射線上から仲間が外れた。そして二人に意識を取られていたマユは、知らずに私達に背を向けていた。撃つには最高のシチュエーションだ!
「やるぞ!」
「えぇ!」
「「ダブル!!ケンソォドソォダアアアアアア!!」」
私とブレイズはそれぞれの狙った部位へ向けてケンソォドソーダーを撃ち込んだ。
不可視の一撃が大地を削り、天地を支配していた小さな悪魔達を消滅させる。ブレイズは構えた両拳を横へ動かす。そして薙ぎ払うように残ったチビマユを全滅させた。
「「ウオオオオオオ!!」」
「ま、まさか!?」
そして私のケンソォドソーダーに気付いたマユは、肉体を変形させるという方法でこちらを向いた。しかし何をするにも遅い!
「しま──」
「オオオオオオオ!」
二人のケンソォドソーダーがマユに直撃。まるでこの国を支配した様にそびえ立っていたマユは跡形も残らずに消滅し、再生することはなかった。
この世界のどこかに肉体の一部を残しているはずだ。今頃、あいつの魂はそれに向かって飛んでいるだろう。そしてまた私達の前に敵として姿を現すだろう。
けれど大丈夫だ。その時が来るまでにもっと強くなって、今みたいに力を合わせれば絶対に負けやしない。




