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第52話 再起する戦士達

遠く離れたイケネミに見えるマユが、ここからは視認できないアクトナイトに向けて攻撃を開始した。



「ブレイズさん、シエルさん。アクトさんは確かに強いみたいですけど、1人であの怪物を倒すのは無理ですよ!加勢しましょう!」


「何なんだあいつは一体…レイアストの代わりにでもなったつもりか」


ブレイズと同意見だった。いくら強くて目的が一緒だからと言っても、アクトはレイアストとは違う。私の師匠でもないのに、あんな偉そうに説教しちゃってさ…


「どうしちゃったんですか二人とも!立ってくださいよ!」


人間より力があるはずのバニーラに引っ張られても、私とブレイズは立ち上がらなかった。まるで尻と地面がくっついてしまったみたいな感覚だ。


「ぐぬぬぬぬッ!仏像ですかあなた達は!?」

「フラリア、俺はどうすれば──」

「レイアストさんだったらこういう時、どうしてたんでしょう…私はあの人の事、ほとんど知らないから…」

「あいつなら…」

「決めましたよね。あの人がやり遂げられなかった事を私達で頑張るって。レイアストさんはここでうずくまっている様な人だったんですか?」


「レイアストなら…戦っていたはずだ。あの怪物は野放しにしておけないと」


するとブレイズはゆっくりと立ち上がって国の方を向いた。どうやら行くつもりらしい。


「まだ戦う力は残っている。お前は…うん、もう少し回復してから来い」

「ありがとうございます。お気を付けて」


フラリアに見送られて、ブレイズは水の道を走っていった。この足場と道はあとどれくらいの間、維持されるのだろうか。




「…シエルさん。行きましょう」

「レイアストは復讐を望むような人じゃなかった。だけど今、私がどんな気持ちでマユ戦っても敵討ちになってしまう気がする。レイアストが望んでない事をやってしまう気がして…」


説教を垂れられたのは気に入らないけれど、アクトが言っていた復讐心が引っ掛かっていた。クワァーバルからも指摘されたことだ。

怒りを力にするとか言っておいて、その結果が今の状況だ。温存していればブレイズとのケンソォドソーダーであいつを倒せたかもしれない。そもそも、クワァーバルの言う通りに冷静になって行動していれば…


「…仲間がやられたのに冷静でいられるわけないでしょ」


「過ぎてしまった事は仕方がない…と言うのは酷かもしれません。だけど動かないと何も変わりませんよ!一生レイアストさんの事を引き摺るつもりですか!それじゃああの人があなたを生かした意味がまるで無駄じゃないですか!」

「言いたい放題言ってくれちゃってさ!」


こいつは実際に負けてないから分からないんだ!あの時、一人だけ逃がされてどれだけ悔しい思いをしたか!


「八つ当たりですか!?殴る相手が違うでしょ!?」

「あんたに私の気持ちが分かるもんか!諦めないで信じてくれた人を失った気持ちが!」

「分かりませんよ!その気持ちはシエルさんの物なんですから!なのにどうして!誰かを失うのがつらいって分かってるのに戦ってくれないんですか!?」

「それは──」

「私だってブレイズさんを失いたくない!だから皆で戦って誰一人欠けることなくあいつを倒したいのに、それでもあなたは戦ってくれないんですか!」


カジヤン、そこまであいつのことを想ってるんだ…泣いてる…


「…冒険者って人を助けるのも仕事なんですよね。だったらお願いします!私からあなたに依頼させてください!一緒に戦って下さい!レイアストさんの敵討ちのためでなく、私達のために!」


そういえばそうだった。色々あり過ぎて忘れてたけど、私ってば元々冒険者だった。



もしもアイクラウンドでカジヤンと出会うことなく冒険者を続けていたらどうなっていただろう。きっと今よりもマシな状況だっただろう。勇者を敵に回すことなんてなかった。仲間を失う苦しさを知ることもなかった。


だけど私は変わることは出来なかっただろう。レイアストと出会うこともなかった。自分を信じられるようにもならなかった。冒険が一転してから私は変わったんだ。



修行から逃げた時と同じだ。もう、レイアストは…レイアストはいないんだ!仇討ちしたところで彼女は戻って来ない!

だけど今戦えば、もうあんな悲しい思いをせずに済むかもしれない。カジヤンが私みたいに泣き叫ぶことだってないんだ!




もう少し…あともう少しだけ…!頑張ろう!




「依頼だって言うなら…ツケだから。高くつくよ」

「シエルさん!」

「ちょっと寝不足でイライラしてただけだから…もう、戦えるぐらいには回復出来た」


ツケ…いや、謝礼をするのは私の方だ。ありがとうカジヤン。


私は冒険者としての自分を信じる!亡きレイアストの仇を討つためでなく、依頼を受けた冒険者としてあの怪物と戦う!

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