第49話 強大な敵を前に
「忍法!折り紙凧の術!」
ブレイズの衣類の内側から大量の折り紙が出てきた。重なり合わさった折り紙は巨大な凧となり、それを操るブレイズが私とカジヤンをキャッチした。
「このまま降下するぞ!」
地上に近付くほど、突然現れたあの魔物の大きさが思い知らされる。オーガやキュクロープス族とは比べ物にならない。
ブレイズは魔物から少し離れた場所に降り立った。
「あいつ…とんでもないやつを召喚してくれたわね」
「見たこともない魔物ですけど、あの大きさからしてユニークなんでしょうか…?」
「…嫌ああああああああああああ!」
鼓膜が破れそうだ!あの魔物、いきなり大声で叫んだ!
「なんなのよこれ~!?」
「あいつは…俺達が倒し損ねたマユだ!」
「なんですって!?」
あれがさっきまで魔法使いだった女の姿!?さっきの呪文で変身したの!?
「も、戻れない!強化でも呪いでもない!何なのよこれ!?」
「もしかしたら…」
「何、カジヤン?」
カジヤンは言葉を詰まらせたが、すぐに考えたことを口にした。
「潜在呪文じゃないでしょうか」
「潜在呪文?あいつが!?でもどうしてよ!?」
「私がヂカラセフィラを発現させた時と同じで、絶体絶命に陥ってあいつにも潜在呪文が発現したんじゃないでしょうか?」
わ、私はいくら頑張っても発現しなかったって言うのに…なんであんな最低なやつが!
「滅茶苦茶強そうですよ…っていうかあの巨体を前にしちゃってもう戦意が失せてるっていうか…」
マユは液状化した下半身で街にいた人達を吸収している。そして背中から生えるデビルのような禍々しい翼から、私達と同じくらいのサイズの個体が続々と排出された。
「凄い…凄いわこの力!私にこんな力があっただなんて!」
「シエル!ケンソォドソーダーだ!俺が下半身を破壊する!お前は上半身を狙え!」
「……で、出来ない…力が入らなくて……」
無理が祟った…!もう纏意すら出来ない!
「クワァーバル様!どうか私達にお力添えを!」
「もうこうなってしまっては街の人間は…」
カジヤンがハンマーを振り下ろすと、大地が隆起して歪んだ形の火山が発生。まるで大砲による射撃のように、マユに向けて火山弾が放たれた。
「小型のやつらが向かって来ているぞ!」
「地割れを起こします!皆さん集まってください!」
三人が一か所に集まると、カジヤンが再びハンマーを振り下ろした。そこを起点にして正面の大地は崩壊を起こしたが、小型のマユは飛翔することで難を逃れていた。
「はぁ…はぁ…」
カジヤンが呼吸を荒げている。大地を操る能力はクワァーバルの物だけど、実際に発動させるためにはカジヤンの魔力を使っている。二度も大地を操ってしまってもう力が残ってないんだ!
「一掃する!ケンソォドソーダー!」
ブレイズが魔力を放出し、小型のやつらを残さず消滅させる。しかし巨体のマユは小型の排出を続けていた。
「あと撃てるのは1発か…クワァーバル、今度は俺に力を貸せ。シエルとフラリアはここから逃げろ。俺とクワァーバルが殿を務める」
「いきなり何言ってんのよ!」
「全滅は避けなければな…行け!」
クワァーバルはカジヤンからブレイズへ飛び移りそう言ったが、レイアストを見殺しにした私が逃げることなど出来なかった。
「何をやっている!早く逃げろ!」
「あいつだけは…あいつだけは!」
残った力を振り絞ってケンソォドソーダーを撃つ。あいつは何が何でも殺す!レイアストの仇を討つ!
「もう絶対に逃がさない!この力であんた達を殺した後は魔王カーナ!その後はこの世界に存在する全ての魔族よ!」
巨大なマユの一つ目にエネルギーが収束する。顔そのものと同等の目は地上にいる私達に向けられた。
「死ねえええええええええ!」
そして瞳が強く発光し、溜められていたエネルギーが放たれた。