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第40話 完成まであと少し!

レイアストとの纏意組手に加え、纏意を発動した状態でのトレーニングを始めてから四ヶ月が経った。



「つ、遂に…!」

「強くなったね~シエルちゃん」


そして今、レイアストとの纏意組手で彼女の纏意を崩した上で地面に倒した。ようやく一本取ることに成功したのだ。


「やっっったあああああ!」


何回負けたか分からないけどようやく一勝。私は凄く嬉しかった。




既に日は沈んでいた。私達は夕食を取ってそのままベッドで横になった。そして暗い部屋でボーッとしている時、私は気付いてしまった。



海割りの修行、あれから一度もやってないじゃん!


やっぱり私に才能ないからって、纏意を重点的に鍛える方針に変わっちゃったわけ!?



「スー……スー……」



レイアストはもう眠っている。私は起こさないように静かに移動して外に出た。


灯りは手元のカンテラだけ。月や星は雲に隠れていた。




ゾピロンでレイアストと出会って、馬鹿みたいにキツイ修行を始めて随分と経った。そして一度逃げ出したあの時から、どれだけ海割りが出来るようになったのか試したい。

私はその思いで砂浜を歩いて海の方へ。そして海水の届かないギリギリのところで纏意を発動した。


「スゥゥ…」


戦うわけじゃないから、纏うのは手だけで充分だろう。



そしてここから魔力を前へ押し出す…のだが、ここで一つ思い付いた事がある。

まず、このまま魔力を前へ出した場合、初めて挑戦した時のようにただ海がへこむだけだ。レイアストはここからさらに、魔力に斬る動きをさせるように指示してきた。


もしも15メートル割れた場合、それから魔力全体をコントロールするのでは時間が掛かる。だったら魔力を延ばす前から、両手の纏意で予め斬る動きを起こしておけばいい。そうすれば本来無動作のまま放出される魔力に斬る動きをさせた状態で延ばすことが出来る。




「両手の纏意に斬る力を…」


もしも砂浜を歩いているグンドウガニにこの手で触れたらバラバラに出来る。この手には今、それだけの攻撃力が宿っている。

この手を前へ出して、魔力を延ばす…いくぞ!


「ハアアアアア…」




そして目の前の海が割れた。それも一瞬で5メートルぐらい!削る幅も私の首くらいだったのが両手を広げても足らない程に!それに海水どころか泥も削っている!距離だけでなく範囲も広がってるんだ!


「おおお!…おおおおお!?」


まだまだ延びる!一体どこまで延びるんだ!?


「おおおおおお!…あっ!?」


な、何!?急に全身に傷が…


身体の前面に傷が現われ、周りの砂が削られている。もしかしたらあまりのパワーに斬る魔力がこちらに跳ね返ってきているのかもしれない!全身に纏意を発動しないと!


「か、身体が!?」


痛い!特に背中なんてこのまま折れてしまいそうだ!出力が上がり過ぎて反動に身体が耐えられなくなってきてる!



そうか、ケンソォドソーダーは強力だけどそれだけ使用者に負担が掛かるんだ。そして纏意はこれらの反動から身を守るために必要だったんだ!


………結構重要な事じゃない!?どうしてあの人、そんな大切な修行をすっ飛ばして海割りさせようなんて考えたのよ!馬鹿でしょ!



このままだと身体が折れる。そう思った私は腕を真っすぐに伸ばした状態で仰向けに倒れたのだが…


「潰れるううううう!」


技がコントロール出来ない!このままだとどんどん威力が上がって、その反動で身体が潰れてしまう!


「ま………ま………まだだあああああ!」



自分の技で死んでたまるか。その思いで私は纏意を発動し、あらゆる反動から身体を保護した。




そして魔力が尽きると魔力の放出が止まり、自然に纏意も消えていった。


「や…とんでもない技だわ…」




「その魔力を完璧に調整して反動対策の纏意無しで扱えるようにする。それが最後の修行になるよ」


どうやらカッコ悪いところをレイアストは見ていたらしい。月明りに照らされる彼女は微笑んでいた。


「本当は明日やらせてビックリさせるつもりだったけど、我慢できなかったか~」

「な、なんかごめん…でも、やるなって言わないレイアストも悪いんだからね!」

「へへっそうだったね、ごめんごめん」



割れた海はまだ元に戻っていない。レイアストはそのまま進んで、海水の壁に挟まれた泥の通路に足を踏み入れた。


「…深く…広い………そしてここからでは果てが見えない…」




今気付いたけど、雲も真っ二つに千切れて月が姿を見せていた。流石に月までは届かなかったか…どれくらい距離があるか知らないけど、ウッカリ切っちゃわなくて良かった…



「うん、上出来。まだ完成ではないけど…よくここまで頑張ったね」

「!………」




な、泣きそう…!



レイアストが教えてくれたから、付きっ切りで修行をしてくれたからここまで出来たんだ。一度は逃げ出した私でもケンソォドソーダーを完成させられると信じ続けてくれたから…


本当に…本当に…




「…あ、ありがとう。ここまで一緒に修行してくれて」

「まだ完成じゃないよ。それにゴールは技を完成させることじゃない。勇者セスタを止めないと」

「…そうだったわね」




そうだ、本当の戦いはこれからだ。だけど強くなった今の私なら…!

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