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第33話 モーセのように

「ちょっと買い物してる間に随分成長したねえ」


私は買い物から戻って来たレイアストに木を倒す様を見せていた。刃の魔力を電動ノコギリの刃のように高速で動かして木に触れる。するとバキッと音を立てて木が簡単に倒せてしまうのだ。


「どお!?凄いでしょ!」

「これなら次の段階に移っても良さそう。うん、第一段階クリアだ!」

「やったー!」

「早速次の修行に移ろう」


次はどんなことをやるんだろう。修行を始めた初日とは打って変わって自信に満ちた私は伐採場を後にした。




個体によって柄が全く違う芸術性の高い一角獣、ココノエユニコーンに跨り次の修行場所へ向かう道中、レイアストが別の世界での体験談をしてくれた。


「モーセさんっていうイスラエル民族の指導者と、吐いた墨が黒い雷雲に変わって襲い掛かってくる墨雷(ぼくらい)怪獣オクガドンと一緒に戦ったんだ」

「そのモーセサンって人、どれくらい強かったの?」

「凄く強かった。磁力を操ったり雷を起こしたりとにかくハチャメチャなおじさんだった。あの人のやったことで特に印象に残ったのはやっぱり、海を割った時の事かな」

「う、海を割った!?その人、魔法使いだったの?」

「さぁ…ただ特別な力を持った人ではあったね。それで、海底に隠れてたオクガドンを操る黒幕のアジトに乗り込んで連れ去られた人を救出した」


世界は広いなぁ…別の世界の話だけど。


ユニコーンは荒野を駆けて、緑色のパセリサンドが広がる砂浜で足を止めた。もう話の流れで何をやらされるか分かったわ。


「無理だから」

「まだ何もいってないよ!…それじゃあ海割りしようか」

「馬鹿言ってんじゃないわよ!そんなスイカ割り感覚で海が割れるわけないでしょうが!」

「まずはお手本を見せてあげるね」




そして1分も経たない内に有言実行。レイアストが向いた先の海が割れて底が露わになっていた。ピチピチと跳ねる魚達が少し可哀想。


「割れてるわ…」

「頑張ればシエルちゃんにも出来るようになるよ。それでね、この割れた距離がケンソォドソーダーの射程距離になるわけで───」


そうしてレイアストが説明を続けるが、その言葉は私の頭を通り過ぎていく。

射程距離?地平線まで割れてるけど…



「───そういうわけだから、今度は斧ではなく素手で!目標としては5メートルぐらいかな。目指して頑張ろう!」

「無理やて!私魔法のセンスないのよ?」

「じゃあ前にやってた影で攻撃するやつ!あれって何?」

「あれは…剣技よ!」

「嘘こけ!」


言われてみればあれって何なんだ…面白そうな技だからって資料買って練習したけど。


「挑戦する前から無理無理言うのやめようよ。とりあえず手に魔力を集中させてみて」

「うわぁそういう自己啓発本みたいな台詞!嫌いだわぁ…まあやるけど」


言われた通りに魔力を両手に集めた。少し手に力を感じるくらいで、海が割れるとは思えない。


「そのまま両手を前へ向ける」

「こんな感じ?」

「そう。それで第一段階でやった魔力の操作。あれを応用して、魔力を前方に延ばしてみて」


魔力を延ばす…それなら木を切る時みたいに激しく動かすよりも簡単に出来ると思うけど…


「おっ…おおお!?」


海がへこんだ!まるで円柱の物体を倒して押し付けたみたいに


「今は魔力で海水を押し退けている状態なんだ。その状態で木を切った時みたいに魔力を動かせる?」

「えっ…ま、まだ無理かも…」


一応やってみたものの、水滴がパシャパシャと僅かに跳ねるだけだった。


「それじゃあまずは魔力をもっと遠くに伸ばせるように頑張ろうか」

「今度もまた地味で難しい修行になりそうね…」


素手となって纏わせる物がなくなった分、魔力の操作が難しくなった。今度は前みたいにヒントが貰えるわけでもないし、8日以上掛かりそうだなぁ。


「両手に魔力を集中させて…延ばす!」


そうして再び魔力を放つと、先程と比べて海面がへこむ距離と幅が縮まっていた。

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