第31話 セレンの木
小国コルクに着いた次の日、ケンソォドソーダーを習得するための修行が開始した。
「それで、何でやって来た場所が伐採場なのよ」
しかし私達が訪れたのは誰でも500ナロで30分間、すぐに再生するセレンの木を切り倒し放題の公共伐採場だった。
レイアストは徹夜して稼いだ大金を店員の前に叩きつけると、伐採用の斧と木を1本レンタルした。さらに問い詰める様に質問した。
「24時間営業ってことは追加料金さえ払い続ければずっとここ使ってても大丈夫ですよね?」
「えっまぁルールを守っていただければ」
それってつまり私ってば、ここに1日以上も閉じ込められるってこと?こんな植物臭い空間に?主人公兼ヒロインにしていい仕打ちじゃないでしょ。
レンタルした木の前に来ると最初にレイアストが手本を見せる事になった。
「いい?まずはこの斧が触れただけで木が倒せるようにしてもらうからね。こうして刃のように細く鋭い魔力を流して………」
私には魔法のセンスがないので、可視化されていない魔力を肉眼で捉える事が出来ない。しかし刃の部分では陽炎が発生した様にグニャグニャとしてるのは分かった。
「力は一切加えない。こうやって優しく………」
解説しながら斧を木に近付けると、接触してもいないのにバキバキと木が割れる音が聴こえた。そして触れた瞬間、切断というよりは爆発と呼べる現象が目の前で起こった!
「っていってえええええ!!!木片刺さったんですけど!?」
「あぁごめんごめん。とりあえず、これ出来るようになってもらうから」
「いや無理でしょ!斧で木を切るって言うから精々電ノコみたいなこと想像してたんだけど」
そうこう言っている間にセレンの木が元の状態に戻っていた。本来は木材を用意するための伐採場だけど、ここまで粉々だと燃料にもならないな。
グチグチ言っても仕方がない。渡された斧に魔力を送り、同じように刃で木の表面に触れた。しかしレイアストのように木が爆発することはなく、ほんの少し削れて木屑が舞い上がるだけだった。
「スパって斬れるイメージを強く持って。そうすれば自然と斬る力が増していくから」
「そ、そんな言われてすぐ出来るもんじゃ…」
それから繊細な作業を続けているとあっという間に体内の魔力が枯渇し、斧を手放して倒れ込んだ。
「む、無理…魔力回復のポーションは?」
「薬に頼らない!自然回復速度が上がるように余計な私語は慎んで身体を休めるんだ。慣れたら戦闘中に魔力を回復出来るようになるよ」
ヒェエエエエ!スパルタだ~!
こうして身体を酷使する厳しい修行が始まった。体感、これまでの無茶な修行と変わらないくらいつらい!