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第30話 斬る必殺技

魔物の島から出発して5時間。ずっとクロールを続けていると、新たな大地が見えてきた。


「あそこに着いたら休憩にしよう!」


レイアストは少し遠くの方で水の上を走っていた。右足が沈む前に左足を付けて右足を上げる。とにかく高速で足を動かして出来る凄い芸当らしい。




漁港から陸へ上がった私達は注目を浴びた。魔物の島から泳いできたと話すとさらに驚かれた。

ここはコルク小国の港町アズレア。平和な感じの普通の町だった。



二人とも空腹だったので町の定食屋に入店。そうして食事をしながらこれからの事について話した。


「あの男と戦ってるシエルちゃんの動きを見て、肉体は出来上がったと思った。だからこの島に留まる事にしたよ。明日からはケンソォドソーダーの習得に取り掛かろう」

「それじゃあもうマラソンしなくて良いのね!やったー!」

「そう喜んでいられないよ。あの技は凄く難しいんだ」


「御注文のグラムタートルの丸焼きでーす」


話をしている途中、レイアストが注文した亀の魔物の丸焼きがテーブルに置かれた。そしてその隣に身を削り取って食べる為の専用器具が置かれたが、レイアストは肉を切るナイフを取った。


「シエルちゃん、刃に魔力を纏わせた事はある?」

「勿論よ。相手の防御力が高かった時に火力を上げたり、あと一撃で倒せるって時には保険としてね」


今使っている物も素材が特殊で頑丈というだけの木の剣だ。魔力を纏わせないとそこら辺の雑草すら斬るの事も困難になる。


「それじゃあはい、このナイフをグラムタートルの甲羅に入れてみて」

「無理でしょ、グラムタートルって学名はこいつの甲羅とSレアの鉱石グラムタイトが同等の硬度だったことから名付けられたのよ」

「まあまあ、魔力を纏わせて降ろしてみてってばさ」


右手に持ったナイフに魔力を送る。そして切断力が増すよう、常に刃を研ぐように魔力を走らせた。

そうやって食器から武器へと変わったナイフを甲羅に降ろしたが、精々触れた分の傷が付いただけだった。


「無理だよ…所詮ナイフだもん」

「そっかぁ」


あぁこの流れ。このナイフを返したらレイアストが同じやり方で甲羅を斬って、私の短所を指摘して修行の内容を解説する流れだな。



「はい、ナイフ」

「そんな物いらないよ」


そう言ってレイアストが右手の人差し指を立てたけどまさか…


「これは魔術なんかじゃない。あくまで指先のエネルギーを動作させて物体を斬っているだけなんだ」


降ろした指が甲羅を削っている!削りカスが溢れ出て…テーブル汚れてるじゃない!


「ケンソォドソーダーの威力はこれ以上。さらに力の限りエネルギーを伸ばし、不可視の刃で敵を切り裂くんだ」


レイアストはタートルをバラバラにしてしまい、切り分けたスイカのように食べ始めた。簡単そうに説明するけど、素手で魔力を放出させるなんて魔術師の中でも上級者がやる芸当じゃないの!しかも私の職業は剣士よ!?


「無理だと思います!」

「シエルちゃんなら出来るよ。ブレイズ君の修行も頑張って、私の出した無理難題だってやり遂げてみせたんだから」


そうして励まされたけど、全く自信は湧かなかった。

これまでの修行と言えば、まあなんとかやり遂げられるでしょ、やってれば終わるでしょって軽い気持ちだったけどしかし…今回ばっかりはちょっと………



食事を終えた後、私は宿へ行き次の日まで休むことになった。



ケンソォドソーダーを完成させられるのか。その不安を抱えたまま…

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