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第27話 レイアストの出生

馬車を引っ張り海を渡り、6日ほどかけて魔物の島リュネヴィルまでやって来た私達。レイアストがタイヤの交換をしている間、私は休憩していた。


「あれ、ネジ抜けてる…予備使っちゃおうか」


数日間この人と一緒に過ごしてるけど、どこの国出身とかまだ知らない。話題もないし、少し彼女について尋ねてみよう。


「ねえレイアスト。あなたってどこの国出身なの?」

「あぁ私?私ねえ、この世界出身じゃないんだ」

「え?何?もしかして異世界から転移したってやつなの!?あんた!」


衝撃の真実なんですけど!?確かに物刺しが武器だったり、妙なところはあったけど…


「う~ん…順を追って説明した方がいいかな」


レイアストは作業の手を止めてこちらにやって来た。そして布の上に置いてある食糧を手に取り、自分について語ってくれた。


「私、元々は別の世界で生きていた人間だったけど今はメアリスっていう存在なんだ」

「メアリス…?聞いたことない種族ね」

「なんて言い表したらいいか…メアリスっていうのはあくまでも私達を言い表す記号に過ぎないの」


おっ?長い話になりそうだな…これで休憩する時間を延ばせるぞ~…


「私を含めてメアリスは元々どこかの世界の住民だった人だったの。私みたいに先輩の人からスカウトを受けたり、あるいは死んだ後に生涯の経歴を見込まれてメアリスとして転生させられたり…」

「それって普通に転移転生した人達と何が違うの?」

「メアリスになる際に必ず使命が与えられるんだ。世界の為に戦えとか、人々を守れとか…そんな感じの。それで色んな世界を渡り歩くの」


世界の為に戦え…あれ?それって…?


「じゃあレイアストは勇者の味方に付かなくて良かったの?歴史上勇者の方が正しい事をしてるって印象の方が強いけど」

「魔族に強い差別意識持って滅ぼそうとしている人が正しいって思う?…それに私がこの世界にやって来たのはそういう戦争を終わらせる為じゃない。勿論、平和の為に被害を最小限に抑える必要はあるけど…勇者が魔族をここまで強く憎むのにはきっと何か原因がある。今の事態を引き起こした黒幕こそが私の叩くべき敵なんだ」


黒幕…セスタ様を倒して終わりってわけではないのね。


「ねえ、メアリスの事もっと教えてよ」

「メアリスについてか…今話したのがほとんど……いや、まだアレがあるや」


そう言うとレイアストは手に武器を召喚した。初めて会った時に向けられた、直径2メートル折り畳み式物刺しだ。


「メアリスになる時、必ずウェポンとスキルが与えられるんだ」

「それじゃあその物刺しがウェポン?」

「うん。そして私に与えられたスキルがこれ」


レイアストは食べ終えたルビーリンゴの芯を手に持った。すると指で挟まれた芯は真っ直ぐに飛んで行き、命中した木をへし折ってしまった。


「うええ!?何が起きたの!」

「私のスキルは手に持った物体を正面へ射出するっていうのでね。最大威力は対象の物体を能力無しで全力で投げた際に出せる時と同等。つまり身体が鍛え上がっていればノーモーションノーコストで飛び道具を撃てるってわけ」


やっば!それもうチートじゃん!初めて会った時にスキルを使われてたら絶対勝てなかった!


「私の髪型に違和感ない?」

「う~ん…あっ右目の上の毛の量が他よりも多くてジグザグだ。獣の牙みたい」


「そう、これこそがメアリスである証の牙髪(きばがみ)。もしかしたら私以外のメアリスに会った事があるかもね」


中心が特に長い三つの逆三角形、それが牙髪。今までにこんな妙なヘアーの人とは出会った事がない。


「…そしてメアリスは不老。辞めるか死ぬまで色んな世界を渡り歩いて戦い続けるの」

「えぇ、最後に急に怖いこと言うじゃん…」

「まだシエルはメアリスにはなれないかな…」

「いいえなりたくないから!スカウトお断り!」

「え~そう?残念…」



老いることなく世界を渡り歩いてきたというレイアストにはもう少し敬意を持って接するべきだと心の中で思った。

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