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シエルの闘病生活

こんなことなら研修医時代をもっと楽しんでおくべきだった。担当している可愛い患者達に手を出しておくべきだったと、俺は後悔している。


それは今朝の出来事だった。このタドルモワで最も大きなユースユース病院に、凍結病に掛かった患者が逆立ちで入って来た。




おいおい、こんなキチガイ患者の担当しなきゃいけないのかよ。




今までにも頭が狂った患者とは何度も戦ってきたが、こんなやつを相手にするのは初めてだった。第一印象は外面以外ブス。 




その隣には妙な髪型をした女が立っていた。美人だし常識がありそうで、チョット妙なヘアースタイルしているけど、担当するならこっちの方が良かった。




「あ~凍結病ですね」

「雪源泉歩いたらこうなりました」




馬鹿かこいつ。何を考えているのか全くと言っていい程わからない。 

視界の片隅に付き添いの美女の顔が見えた。やっぱり、担当するならこの子が良かった。


こんな可愛い子を担当出来るやつなんて、そいつは幸せ者だな。




俺は呆れて溜め息を吐いた。こんな外面以外ブスの担当をしなきゃいけないなんて…




「担当の先生変えてもらっていいですか?」




殺すぞと患者に言いたかった。しかし俺は医者だ。業務中、舌には封印のシールが貼ってあるのでそういう患者を不快にさせるワードは声に出せなかった。


「ごめんなさい、それはちょっと…」




すると次の瞬間、シエル・ラングリッターという患者は倒れた。遠くから逆立ちのままここまで来たという話だ。疲労で倒れるのも無理はない。

付き添いの美女は慌てることなく、俺の対応を観察していた。






凍結病を意識がない内に治療してやることも出来た。しかしもう二度と無茶をしないようにさせるため、意識がある間に脚への麻酔だけで手術をしてやることにした。




「この子の事、よろしくお願いします」

「予定などは二人で話し合って決めちゃいますね」

「適当に治しておいてください」

「分かりましたー」




病室での話を終えてレイアストという美女は出ていった。




「…他の患者も見て回らないとな」




廊下で共に働く医者とすれ違い、とりあえず会釈をする。それしかすることが思い浮かばなかったのだ。


先日、口外出来ないようなミスをしてしまった俺。それについて愚痴のひとつやふたつ言われるかと思ったが、すれ違った人物は咳払いをし、何事もなかったかのように再びすぐ近くの病室へ入っていった。


俺はほっとため息がこぼれた。




「早く歩けるようになりたーい」




意識が戻ったという連絡を受けてシエルの病室に戻ると、そんなことをほざいていた。




「あぁ、目覚めてくれてほんと助かったよ。でも欲を言うならもっと早く起きて欲しかった」

「手術お願いしまーす」

「まあ、そうだよな。でもまずは色々と準備が必要で」

「手術お願いしまーす」




院長に相談すると、全責任を俺が負うという条件付きで、手続きなどを色々とすっ飛ばして彼女の手術をやらせてもらえることになった。

とっとと治して、ここから出ていってもらおう。




「うわー足の感覚なーい」

「はぁーい、静かにしてくださいね、手元が狂ってしまいます~」




炎の魔法で脚の氷を溶かしていく。そして露出した皮膚に、炎のエンチャントを付与したメスを入れた。

氷結病が掛かった部位には膿が出来上がる。それをとりのぞかないと、後々大きな手術する必要が出てきてしまうのだ。




「はい、終わりましたよ~退院は~」

「今日がいいです!」

「それがいいならそれでいいですね。それじゃあ今日で退院で~」




今日入院したばかりの少女は今日退院していった。俺はまた、この仕事を嫌と思う理由が増えた。

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