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第21話 命懸け…?の修行

転送屋。それは望んだ場所に転移させてくれる便利なお店。危険過ぎる場所に行くには冒険者ランクがS以上にである必要があったり、商会が契約を結んでない国へは転送させてもらえないと制限があったりするが、それが原因で困った事はない。




「ゾピロンのスティンク高地までお願いします。これ、冒険者カードです」

「拝見させてもらいます………フムフム」


受付の魔族にカードを渡した。

狼の特徴を持つウルファー族が私のカードを見るために頭を下に向ける。モフモフとした頭に手が伸びそうになるが、触れたらセクハラだ。修行どころじゃなくなる。


「問題ありませんね。奥の部屋へお進みください」



案内された部屋には大型の転移装置と大きなモニターが用意されている。モニターには私がこれから飛ばされるスティンク高地の現在の景色が映し出されていた。


霧が出ている。レイアストらしき影も見えず、少々飛ぶのが不安になった。


「転移を開始します」


アナウンスが流れて5秒後、画面で見ていた霧の中に私は立っていた。



「レイアスト?…レイアストー」


近くにはいないのだろうか?返事はない。彼女を探して霧の中を進んだ。



魔物の気配は感じない。事前に調べた情報では集落はないそうで、修行するにはピッタリの場所だ。


「レーイアーストー!」


どこにいるんだろう。ブルーフレイムトーチとか霧の中でも目印になる物を置いてくれてたら良かったのになあ。



「キャッ!?」


いったーい!?何かに足を引っ掻けて転んじゃった!これは…ワイヤー?


罠だと気付いた瞬間、私は前方へ飛んでいた。そして背後を無数の礫が通過した。もしも動けていなかったら、散弾を喰らったような状態になっていただろう。



「…あれ?喰らっちゃった?」



「シエルちゃ~ん?…死んじゃった?」



なるほどね、ここに着いた瞬間からレイアストの修行は始まってたわけね。ひとまず背後を取って、私の力を証明してやろうじゃない。

私は武器屋で買ったギョボクという聖水の川を流れた木で造られた剣を抜いた。


「ダメージ1固定の風来坊の木の実で人が死ぬはずないんだけどな…力を入れすぎちゃったかな」


声は礫が飛んで来た方角からだ。私は足音を立てないよう、回り込むように進む。そして人影を視界に捉えた。


首元ギリギリまで刃を接近させ、動くなと警告した。


「…あれ」


しかし私が警告をしたのはレイアストではなく、人の形をした案山子草だった。


「動くな」


間に私の首を挟むように、背後から2本の刃が現われた。声は聴こえたし武器は視えている。それなのに背後に誰かいるのか、気配を感じられない。

そして刃に宿るこの殺気…このままだと本当に首が跳ねられる。そんな気がして、私は地面を蹴って前方へ飛び出した。


「よし、悪くない判断だ。これから私の背後を取れるまでずっとこれやるから、頑張ってね」

「こ、殺さないの?」

「貴重な戦力を潰すような真似はしない…だけど達成するまで、君は一生狙われ、そして殺気に挟まれ続ける事になる」


そんなのが続いたら気が狂ってしまう。さっきと同じやり方で背後を取ってやる!


「それじゃあ再開するよ」


薄っすらと見えていたレイアストの姿が消える。音を立てずに後ろへ下がったんだ。私もここを離れて状況を整理しないと。


「はいっ2回目」


首元に殺気が触れた!消えたばかりなのにもう背後を取られた!


「ところで私が使ってる武器、なんだか分かる?」

「…双剣、それか戦鋏(せんきょう)


双剣を交差させて刃を構えているか、戦鋏という戦いに用いられる鋏のどちらかだ。


「はっずれ~。シエルちゃん、よく見てごらん」


ハズレって、それ以外に何があるって言うのよ…



「え?これって…」

「どう?一応これでも武器だけど、初めて見ると拍子抜けしちゃうよね」


刃すら付いてない!そもそも、これを武器と呼ぶべきなのか!?


「直径2メートル折り畳み式物刺し。相手に接触した部分に書かれている数字の分だけ威力が倍増する。このまま閉じたら大体150倍と50倍の威力だね。女の子のか細い首なんて簡単に跳ねられるよ」


武器の説明を受けると、改めて武器の恐ろしさを実感した。


「油断…しちゃダメだよ。初めて会った時は抑えてたけど、私はブレイズ君よりも強いんだから」



警告が目的だったのか、彼女はそう言い残してまた霧に隠れた。


見つけるまでどれくらい掛かる?あと何回今みたいに死に直面しなければいけない?そんな不安を覚えつつも、レイアストを探しに霧の中を進んだ。

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