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第19話 もっと強く

イゴフムル討伐の成功により発生した報酬は全額カジヤンの治療費に回された。




クエストクリアから3日経った今でもカジヤンは目を覚まさない。その間、私はブレイズと一緒に強敵を相手にするクエストをいくつもクリアしていた。


「ふぅ…黒角のヒイラギ拘束完了。町に戻ろうか」

「あぁ。それにしても動きが良くなったな」

「カジヤンが目覚める前には呪文を習得しておきたいからね」



そう、私はまだ潜在呪文を習得出来ていない。頑張って強敵と戦って、致命傷を負いながら戦ってもそのまま逆転勝利するだけ。呪文は得られない。


「ブレイズが呪文を習得したのっていつなの?」

「魔王が勇者と戦っていた頃だ。俺はダンジョンの中でレイアストに修行を付けてもらっていた」

「えっ!?あの人ってあんたの師匠だったの?」

「師匠と思えるほど親しみは感じないがな」


ってことはあの人、ブレイズより強いんだ…そんな風には見えなかったけど。


「ある日、俺達のダンジョンに敵が現れた。ダンジョンで発生する魔物ではなく外部からの侵入者だ………」



え?いきなり黙り込んじゃった。


「もしも~し?その侵入者って人間?魔族?何だったの?」


「あれは…おそらくこの世界の存在ではない」

「じゃあそれ、異世界からの転移者ってやつ?」

「異世界からの存在ではあったが…」


ブレイズが顎に手を当てる。たまに難しい事を考える時に必ずやるポーズだ。


「あんな物が生息する異世界が本当に存在したのか、今でも疑問に思う」

「人じゃなかったの?」

「あぁ、人間や魔族が当てはまる知的生命体ではなかった。そのダンジョンにいた俺とレイアストだけで戦いを挑んだが、今まで経験したことがない程の強さだった。そして窮地に追い詰められた時、俺の頭の中にある単語が浮かび上がった」

「それが第一潜在呪文のビオガだったってわけね」

「そうだ。俺はレイアストと共に障壁を駆使してダンジョンから脱出し、そこを破壊した」


ダンジョンは特定の条件を満たして破壊されると内部の次元が歪んで消滅する。話に出てきたその怪物はダンジョンごと消滅したのだろう。



「フラリア・ミスクドは致命傷を負った時、俺と同じような感覚で呪文を習得したに違いない」

「え…じゃあ私、死ぬギリギリまで追い詰められろってこと?いやいや怖すぎるんですけど」

「あくまでこれは例だ。呪文を習得出来るタイミングは人それぞれだから、お前が焦る必要がない。その時になればきっと掴める」



ブレイズは私を励ましてくれた。でも超格上の人に励まされるのって屈辱でしかないんだよな…


「ところでその変形した剣は戻らないのか」

「うん。イゴフムルを倒した時みたいな超パワーは発揮されないし、どうなってるんだろうね」


変形してしまった剣は鞘に収まらず、今は魔物の皮を貼り合わせた特製のロングバッグで持ち歩いている。しかし既に穴が開いていて、帰ったら補強する必要がありそうだ。




ケジンの町へ戻る頃には日が暮れていた。今日は4人もの猛者と戦ったんだ。早く宿に戻って休みたい…けど、まずはカジヤンの様子を見ておかないと。


「カジヤ~ン…」


病室のベッドで彼女は眠ったままだった。いない間に目を覚ました形跡もない。


「ダメージで肉体に、呪文の発現で精神に大きな負荷が掛かったんだろうな」


精神はともかく、背中は私を庇って負った怪我だ。勝利したと油断していた私と違って、彼女は警戒を怠らなかった。だから攻撃に反応できたのだ


避けることが出来た。それなのに動けなかった私を庇う選択をしてしまった。




「私のせいだ…」

「ようやく気付けたようだな。自分の甘さに」

「もっと強くならないと」


命懸けで助けられて、更に自分の傲りに気付かされた。きっと返しきれない程の恩だろう。


もうあんなヘマは二度としない。強くなってやる。

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