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第16話 潜在呪文(ポテンシャルスペル)と第一潜在呪文(ファーストスペル)

魔族に味方する勇者ブレイズの元で鍛えてもらう事になった私とカジヤン。


私達は魔王、レイアストと一度別れてブレイズと共にケジンという町へ走っていた。


「疲れた!いつになったら着くのよ!」

「あと30分と言ったところだ」


私とカジヤンは出発の際、魔王にそれはまた酷い魔法を掛けられた。

「ウオキ・リドン」という呪文で私達の脚に掛けられた魔法はなんと、一度走り出したら目的地に着くまで運動を続けさせる恐ろしいものだったのだ。



「お前達、潜在能力について知っているか?」


「なにッ走りながら座学やんの!?」

「内に秘められた力…生まれた時点で備わっている力で、だけど目覚めさせるにはキッカケとかが必要なあれですよね」


カジヤンってばチョー余裕そう!そりゃあ脚力自慢の魔族バニーラだものね!


「その通りだ。ではシエル・ラングリッター」

「はいっ!」

「お前は自分に潜在能力があると思うか?」


あるわけないでしょ!そんな物あったら今頃最強冒険者だわ!


「ないわ!」

「ある。このアノレカディアに生きる物全てに必ず備わっている潜在能力がある」

「何よそれ!」

潜在(ポテンシャル)呪文(スペル)。誰もが内に秘めている呪文だ」


潜在呪文。初めて耳にする単語だった。


「例えば炎を放つ呪文レア系。少学校で習うロキレアから順に、ガメレア、ガキレア、ラテレアと強くなっていくだろう。同じく炎を放つ潜在呪文を開化させた者は、その時点でガキ相当の威力を持つ炎を放てる」

「うっそ!それって凄いことじゃん!」


「当然、習得までには厳しい鍛練が必要になる。そして呪文がいつ判明するかはその者次第。物心ついた時に会得していた者がいれば、10歳の頃に潜在呪文について知った者が呪文を得た時には100歳だったなんて話もある」



そんな凄い力が私の中にあるって考えただけでもう興奮しちゃう!一気に最強!一騎当千!一攫千金!呪文を知ってから成り上がりの人生始まっちゃうかも~!



「これからその潜在呪文を習得するために修行をするんですね」

「そうだ。厳しい修行になるぞ」




潜在呪文についての説明を受けながら走っている内に私達はケジンへ到着した。


「あ、脚がもう動かない…」

「大丈夫ですかシエルさん。そこの自販機で水を…」


カジヤンが喋っていると地面が大きく揺れた。これは地震じゃない!地中から魔物が出てくる時の揺れだ!




「な、何か来る!」


村の外で大きな魚が飛び上がった!あれは地中を移動するサイデントフィッシュだ!


「大きすぎる…もしかしてユニークモンスター!?」

「著しく体勢が変わりましたよ!何か技を撃つつもりです!」


普通のサイデントフィッシュでも村1つを壊滅させてしまう程の強さを持っている。それなのにあの大きな個体が何かすれば、この町はおろか周囲の環境にも影響が出てしまう!


「ちょうど良い。シエル、フラリア。これから俺の一つ目の潜在呪文、第一潜在(ファースト)呪文(スペル)をあいつにぶつける」

「第一潜在呪文?」

「潜在呪文は一つじゃない。覚えた物から順番付けていけば分かりやすいだろう」



ブレイズは剣を抜いてサイデントフィッシュのいる高い位置まで跳ね上がった。なんて跳躍力だ!


「ビオガ!」


彼は地上の私達に届く程の大きな声で叫んだ。すると落下していたサイデントフィッシュが空中で潰れた!いや、見えない床に落ちたって言う表現の方が正しいかも!


「ただの障壁魔法じゃないですか!」

「長い詠唱は必要なく、たった三文字の呪文を唱えただけ。それだけであの巨体を止めたのよ!」

「魔法を極めればそれぐらい誰だって出来るでしょう!」

「ブレイズは魔法を一度も使ってない!セスタ様との戦いで忍法を使っていた辺り、彼には魔法の才能がないのよ。そんなやつが障壁出してあれを止められると思う?!」

「それじゃあ本当に…」

「あれが彼の潜在呪文。魔法が使えずとも超頑丈な障壁を展開させることが出来るのよ!」 



「忍法!衣刃!」


ブレイズが剣を抜いた。さらにその刃からエネルギーで巨大な刃を造り出し、サイデントフィッシュを一刀両断!一撃で倒してしまった!




町の兵士達が死骸の処理を始めた。ブレイズは謝礼などはキッパリと断って、私達に潜在呪文の解説を再開した。


「俺の第一潜在呪文ビオガは障壁を発生させる。俺は障壁の上に立つことも、反対に干渉しない事も出来る。強度をちゃんと確かめた事はないが破られたことは一度もない。そして気付いていると思うが俺には魔法のセンスがない。だから忍法で戦闘力を補っているが、それがどういうことが分かるか」

「魔法の鍛錬なしで魔導士レベルの障壁を発動出来る…それも唱えるだけ。道具は必要ない…」


す、凄い力だ…こんな力が私の中にあるんだ!


「当然、それだけ習得は困難だ。厳しい修行になるが覚悟はいいな」


「強くなれんなら望むところよ!」

「私も強くなりたいです!」




こうして私は潜在呪文について教わった。明日からは本格的な修行の始まりだ。

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