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第14話 決着

「覚悟ォ!」


長い間続いた戦いの末、セスタ様の聖剣が魔王の胸を貫いた。


「まだだ…まだ死ねん!」


それでも魔王は身体を後ろへ引いて、刺さった刃を抜いたのだ。敵ながらあっぱれと言いたくなる胆力だ。



「かつての戦いでサイミアが現れるまでの間、二人は不眠不休のまま戦いを続けていたと聞いています。それが本当なら1時間、2時間で終わる戦いじゃありませんよこれ…」



地面が割れて溶岩が噴き出しかと思ったら、その溶岩が一瞬にして固まり、いつの間にか氷河期が訪れていた。もしも加護がなかったら私達はとっくに死んでいる…


ふと、魔王が展開した結界の外に視線が行った。そういえばこの結果は何の為にあるのだろう?発動者本人が言っていた通り、あいつに何か恩恵がある気配はなさそうだけど。




おかしいぞ。ここまで激しい戦いなのに結界の外には何一つ被害が出ていない!


まさかこの結界は戦いの余波を封じるための物…?でもどうして魔王がそんな技を…


「ヴォルイニ・クロームーン!」

「また魔法で延命か!見苦しいぞ!」



これ以上この2人を戦わせるべきじゃない。根拠はないけどそう感じた私は声を出した。


「セスタ様!その魔王にはおそらく戦う意思がありません!一度剣を収めてみてはいかがでしょうか!」


真剣な戦いの最中に水を差すようだけど…




「ウオオオオオオ!」

「ンべリマ・ククルカ!」


駄目だ!聞こえてない!もっと大きな声で叫ばないと!


「セスタ様!聞いてください!」

「無駄ですよシエルさん。あの人、聞こえているうえで戦いを続けてるんですよ。無視してるんですよ!」

「そんなわけないでしょ!魔王との戦いに集中しているから聞こえてないだけよ!」

「現状魔王から一撃も喰らわず一方的に攻撃しています。それも私達を守りながら戦っているんですよ。気を遣う余裕があるのならあなたの声を聞くぐらいわけないでしょ!」

「もしも聞こえてるとして…無視する理由はなんなのよ!」

「今ここで魔王を殺すつもりなんですよ…サイミア相手に共闘した功績で見逃すと決定したはずなのに!」


こわッ!?…え、なんでこの子キレてんの?




「この一撃で終わらせる!」


そう宣言したセスタ様が聖剣ユーデクスを掲げた。すると刃が金色に変わる程の聖属性の魔力が集まった。聖属性の特徴は桁外れの威力。そして闇、悪、邪など負の属性を持つ者ほど受けるダメージが大きくなる!これほどまで魔王に有効な属性はない!


「シエル!剣を抜け!」

「どうしたのクワァーバル!急に大きな声で叫んで!」

「魔王が死んだ瞬間にこの結界は消滅する!そうすればあの勇者の放った一撃の影響はアイクラウンド全体に及び、この国は崩壊を起こす!あの勇者め、魔王を倒すためなら大陸一つ消し飛ばすことに躊躇しないんだ!」

「それマジなの!?だったら本当に止めないとじゃん!」

「幸いにも勇者と魔王が滅茶苦茶な戦いをしてくれたおかげで、ここには俺の操れる数多くの自然が集まっている。勇者の一撃に合わせてこちらも剣を振れ!相殺する!」


クワァーバルの持つ大地のエンチャントを受けることで、私は自然を操れるようになった。チャンスは一度きり。もしも魔王が死んでしまったらこの国は終わりだ!



「聖剣ユーテクスの主として、悪しき者を裁く者の名はセスタ・サーティン!」


攻撃の詠唱を始めた。今の内に攻撃すれば…!


「まだ駄目だ!詠唱を邪魔したところでまたやり直してしまう!魔力を消費させつつ攻撃を無力化出来る相殺のタイミングを見計らうんだ!」

「わ、分かった!」


「裁かれる者カーナ・デモノス!これからお前に与える罰は…消滅だ!」

「剣に集まっている聖属性の魔力が変化した!あれは運命や因果に干渉する力だ!人間や魔族が使っていい技ではない!」

(クローク)執行(グラリス)!」


セスタ様が攻撃を撃った!今だ!


「ウォリァァァァァァ!!!!!」



セスタ様が剣を振り降ろすと同時に、普段より重く感じた剣を振り上げた!そして地上から発生したあらゆる自然現象が彼女の攻撃を阻んだ!


「邪魔をするな!」

「魔王が死んでこの結界がなくなった瞬間、あなたの攻撃の余波で国が滅茶苦茶になってしまいます!どうか武器を収めてください!」


恐ろしい表情だ。おそらく次に狙われるのは…私だ!




「魔族に加担するなら…お前も敵だ!」


この一撃では魔王を倒しきれない。そう判断した直後、セスタ様は私の方へ迫って来た。



防御してはいけない。自分の罪を認めてこのまま素直に斬られなければ。


「し、思考に干渉してきた!?か、身体が動かせない!」


これから死ぬ。そう悟ると走馬灯が流れ…始めなかった!思考が元に戻った!


「ってかあんた誰!?」


斬られる寸前、突如として現れた謎の剣士がセスタ様の攻撃を…受け止めた!?あの人の攻撃を受け止めるなんて何者こいつ!?



「お前か…魔族に味方する勇者というのは」


「迷いを感じない一撃だ。お前は人間にまで手を出すのか!」


こいつは…サンマルーキで見た名前の長~いあの勇者!名前は確か…なんだったっけ?




「ブレイズ!転移する!そいつらを連れてこっちへ来い!」

「少しお待ちを!お前達、俺達と来るかこのまま勇者セスタに斬られるか、どちらか好きな方を選べ!」


俺達って…魔王についていくってこと!?


「私は行きますよ!死んだらどうしようもないですからね!」

「ちょっとカジヤン!セスタ様を裏切るつもり!?」

「一目見た時から思ってたんですよ!この人の目つきは差別主義者と同じだって!」


差別主義者?人々の為に戦ったセスタ様が?そんなはずは…


「これ以上は止められないぞ!お前はどうする!」

「私は…」



彼が止めているセスタ様の表情は修羅と呼べるものだった。きっとこの人は私を斬った後、カジヤンを狙っていただろう。



憧れという程ではないが尊敬していた。だからこの人に恐怖を覚えた今、一緒にいようとは思えなかった。



「私死にたくない!死ぬぐらいだったらあんた達の仲間になるわ!」

「忍法、刃閃光!」


私の意思を聞いた途端、ブレイズは剣を発光させて目眩ましをすると、セスタ様を蹴り飛ばした。そして私達を抱えて魔王の元へ。


「魔族の肩を持つんだな!シエル・ラングリッター!その顔とこの名前を私は絶対に忘れない!」



「飛ぶぞ!ガヤキ・クレスクー!」


魔王カーナは転移魔法が発動。次の瞬間、私達は全く別の場所に立っていた。



勇者に恩を売って仲間になったと思ったら、その人を敵にして魔王について行くなんて…私はこれからどうなってしまうのだろうか。

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