第12話 絶対的強者
目覚ましの音を聴いて私は目を覚ました。このフカフカのベッド…そうだ、セスタ様のウィングキャットで寝させてもらったんだ。
外の空気を吸いに拠点の外に出ると、テントを片付け終えたカジヤンが不貞腐れた様子で体育座りをしていた。
「おはようございます…や~、寝袋で寝たせいで寝違えちゃいましたよぉ。だけど長時間眠れてサイコーの気分です」
「そ、そうね…それは良かったわ」
「そろそろ出発する。シエルと…バニーラの君、ウィングキャットに乗ってくれ」
セスタ様に言われて私達は搭乗。ここで初めてカジヤンとシエル様は対面を果たした。
トールの絶戦場までウィングキャットは自動で進む。その間、なんとセスタ様に剣術の稽古を付けてもらうことなった。
普通の建物で3階に位置する屋外訓練場。私は自家製の剣、セスタ様は刃が楕円体の剣を構えて向かい合っている。カジヤンは私の動きを観察したいと、少し離れた場所でメモを取っていた。
「まずは力を測りたい。君の好きなように私に打ち込んで来たまえ」
「分かりました…いきます!」
剣を構えているつもりだけど隙だらけだ!
そうして剣を打ち込んだ横っ腹の前には、彼女の刃が添えられていた。
速すぎる。腕を動かす予備動作も捉えられなかった。だったら少し本気を出そう。技を放っても問題ないよね。
「カラメソード・オサレガン!」
「ほう、剣で発生させた風を鎌を死角から当てる術か。それも一見すると、君の攻撃が空振りした様にしか見えないな」
そんな!?初めて出した技なのに読まれるなんて!
放った私でも視認出来ない風の鎌。背後を狙った鎌をセスタ様は振り返らずに剣で防いだ。
「…カラメソード・ウカタミユ!」
今度は正面と死角からの同時攻撃だ。セスタ様の斜め後ろに伸びる私の影。その上半身は実体である私とは全く別の動きを始める。より大きな剣を構えている間に、私はひたすら攻撃を打ち込んだ。
そしてこちらからは更なる技を打ち込む!実体と影からの挟撃だ!
「カラメソード・ドラニカ!…えっ!?」
いつの間にか空いていた左手に剣が収まっており、セスタ様は影の一撃を防いでいた。抜刀どころか鞘がない。剣は最初は1本だけだったのに。
「攻撃を通さないレベルのスピードで右手と左手の交互に剣を連続ワープさせている。名付けてワープソードだ」
影が胸を斬られて元の状態へ戻る。本来なら影が受けたダメージは私に反映されるはずなのだが、それを分かっていたのかセスタ様は手加減してくれたようだ。
「技の動きがどれも精錬されている。もっと見てみたい。打って来てくれ」
褒められている…はずなのに屈辱だ。いくら相手が勇者だからって、ここまで通用しないことなんてあるの!?
「カラメソード・フユレ!」
刃の残像に質量を持たせて射出する連続攻撃技である。しかしそれら残像も全て防御されてしまった。
「カラメソード・グヒミレ」
「ほう、剣の形状を変化させて敵の武器を砕く術か」
それからも私は何度も技を放った。
「カラメソード・アコネマネ!」
しかしどれだけ技を変えてもこの人は即座に反応し、対応してしまうのだ。
「カラメソード・トロロ!」
当然、避けて防御するだけの彼女より私の消耗の方が早く…
「カラメソード…キサラ…」
最後の技を放った直後、そのまま地面に倒れてしまった。
「はぁ…はぁ…」
「ここまでに君の繰り出した技はどれも必殺技ではなく、敵を翻弄して削る為のコンボパーツのようだったが…」
「はぁ…御察しの通り、私に技と呼べる技はありません」
一太刀も与えられなかった…これが勇者の実力か。
「まずは一つ、大ダメージの技を習得するんだ。それから更に動きを磨き上げれば、君はもっと強くなれる………そろそろ絶戦場だ。着くまでに息を整えておくといい」
セスタ様は階段を降りて拠点の中へ戻っていく。それを見てから、カジヤンは私に飲み物を持って来てくれた。
「正直…あなたを過小評価してました。強かったんですね」
「だけど…全部防御されちゃった」
「相手が悪かっただけです。動きは良かった。私がこのフェニックスアルテマスターブレイドをあなたに合わせて強化してみせます。そしたらもっと強くなれますよ」
きっとここから、どれだけ私と剣が強くなってもあの人には敵わないだろう。あれはチートと呼ぶべき強さ。あの人は絶対的強者。揺るがない最強なんだ…




