第113話 国を守る者と育む者
かつて別の国で勇者として名が通っていたセスタ・サーティン。そんな彼女も今ではクロウ防衛隊の教官として若い隊員達の育成を務めていた。隊員達からはツノなし鬼教官と恐れられているが、本人はそのあだ名を聞く度に傷付いているようだ。
そしてその勇者の弟子であったクルミと、それに近い関係者のマユは国内で初めて創られた学校の校長、副校長になっていた。
「教える事が偏らないようにしないといけませんね…」
「ブレイズのいた世界から教育論の資料を取り寄せたんだけど…これってちょっと遅れてるわね。参考になりそうにないわ」
まだ建物が完成しただけで開校しているわけではない。現段階では他にも教員を志望した者達と一緒に、どういった風に勉強を教えるかなどの議論をしているところだ。
「コミュニケーション能力?も育めるように生徒同士でのディスカッション?を多く設けるようにしましょうか」
「無理にカタカナ使わなくていいわよ…一度他の国の学校を見てどんな風に授業をやってるか見に行く必要があるわね」
「ならまずは…ブレイズさんに相談ですね」
クロウは出来上がってまだ日が浅い。こうして何かやろうとする度に問題に突き当たる事が多かった。開校はまだ先になりそうで、それからもまだ見ぬ問題が浮上しそうだ。
学校が出来上がれば、未成年の学業は義務となる予定だ。しかしマユは時間さえあれば勉学を望む者達を完成した校舎に集めて、抱えている知識を少しでも多く教示しようと授業を実施していた。
「それじゃあ問題!相手が炎で攻撃してきた時、どの属性の魔法で防御するのが効果的でしょうか?」
「はい!水属性の魔法です!」
「正解!」
クルミはその様子を廊下で見て安心していた。優しい表情で授業するマユの姿を見て、子供達の事を任せても大丈夫だと納得すると、静かにその場を去って行った。
次に様子を見に来たのはクロウの中心に位置する防衛隊の基地である。グラウンドには若い隊員達にトレーニングをさせているセスタがいた。
「そこ!まだ休めとは命令してないぞ!鍛錬を続けろ!」
「お~怖い…いいなぁ」
弟子であるクルミもセスタの元で鍛えられたが、今のように怒鳴られる事はなかった。
かつてセスタは弟子であるクルミを魔族を殺すための兵士としか認識していなかったが今は違う。これからこの国を守っていく者達には強くなってもらわなければならないと、心を持って接しているのだ。
クルミはしばらく見学してから、基地を離れていった。
クロウはまだ出来上がったばかりの国だ。これからも多くの困難に直面するに違いない。しかしこうして国を守る者、支える者がいる限り、どんな困難も乗り越えられるだろう。




