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第111話 最後の一撃

 ツツジに掴まれたシエルはクロウから引き離され、今も更に高い位置まで上昇していた。


「どうするつもりよ!こんな場所まで連れて来て!」

「進太郎や慶斗がいた世界には宇宙という物がある。しかし無限に広がるこのアノレカディアには空が永遠に続いて宇宙がないそうだ。それが本当かどうか飽きるまで確かめる…その後は地獄のスカイダイビングだ!着陸まで映画級の走馬灯を楽しませてやるぜ!」


 シエルも黙って掴まれている事はなく、必死に暴れて等剣を持っていた左腕の拘束を解いた。


「あんたの好奇心に付き合う気なんてないから!」


 そして逆手に切り替えた剣の刃を突き刺した瞬間、刃の半分が砕けてその分のダメージがシエルに反射された。能力を無効化していたクルミが離れた今、どんな攻撃も全て跳ね返ってしまうのだ。


「きゃあぁぁぁぁぁ!?」

「忘れたのか?俺の反射の能力を!」


 痛む箇所を押さえる事もさせず、ツツジは更に高くへ上がっていく。これでは離れる事が出来たとしても、そのまま地面に落ちて呆気ない死を迎えるだろう。


「くっ…それでも諦めない!」


 詰みでしかないこの状況。それでもシエルの闘志は絶えることなく、逆転の策を想像した。


 そしてそのヒントは過去の記憶から掘り起こされた。




生命(いのち)は剣なんだ。打たれて強くなる剣のように、試練に打ちのめされて、それから立ち上がる度に生命は強くなる」




 その言葉は、師であるレイアストからかつて授かった言葉。彼女から受けた最後のアドバイスでもあった。


「そうか…生命(いのち)は…生きる者()は剣なんだ!」

「今から逆転してやろうっていう表情だが無駄だ!俺とお前の間にはどう足掻いても埋められないパワーの差が…なにっ!?」


 ツツジの言葉に反し、シエルは強引に自身を掴む腕を払い退けた。

 3年前にも似たような事があった。実力差のあるクルミに対して強い意思を持って挑み、そして打ち勝った。

 偽りのない強い意思を力に変換する。それこそがシエルの才能(スキル)なのだ。


「それでどうするっていうんだ。俺は反射するんだぜ。それにな…」


 ツツジはシエルの元から離れた。万が一の可能性を考慮しての戦略と言えるだろうが、しかし彼女は折れた等剣を投げ捨てると、空を蹴って接近した。そして渾身の右ストレートを打ち込み、反射されたダメージで腕が折れた。


「だから俺は──」

「知ったこっちゃないわよ!」


 さらに左拳、右足、左足と次々に全力の一撃を打ち込み、その反射ダメージを喰らってあっという間にボロボロになってしまった。


「おいおい!窮地に追い込まれておかしくなっちまったのか!?」

「どれだけ傷付いたって構わない!それでも諦めずに立ち上がる度、私は強くなる!」



 傷付いた身体が剣の刃のような銀色の光を放射する。シエルの想いに応えようと細胞の一つ一つが強化されると、銀色の光はさらに虹色へと変わった。そしてシエルの頭から虹色の刃が発生。何度反射されても諦めない彼女は今、剣となったのだ。


「ウルァアアア!」

「なにっ!?」


 全身を使って振り下ろした刃で上昇していくツツジを叩き落した。当然、ダメージは反射された上に刃も消えてしまったが、それでもシエルの輝きは消えていなかった。


「ケンソォドソーダー!」


 シエルは必殺技を推力にして急下降。地面を向いて落ちていくツツジの背面に取り付き、四肢を拘束した。


「捕った!」

「地面との衝突は攻撃じゃないから反射できない!そう考えたか!しかしこんな緩いホールドじゃ簡単に抜け出せちまうぜ!」


 このままではツツジの言う通りだった。しかしシエルはここへ来て、遂に眠っていた力を呼び覚ました。


第一潜在呪文(ファーストスペル)!ローグロック!」


 シエルが発現した呪文を唱えた直後、ツツジは拘束から抜け出そうと暴れて抵抗する。しかしシエルの身体は異常なまでに固く、抜け出す事は出来なかった。


 第一潜在呪文ローグロックは身体を硬化させるというシンプルな能力だった。しかしそれがツツジを倒すための最後の一手となったのだ。


「ダァァァァァァ!」


 シエルは残った魔力を爆発させる勢いで、全身から上に向かってケンソォドソーダーを放出。それにより落下速度は更に増していった。


「こ、この勢い!逃げられない!?」


 無事を祈る仲間が待つ大地が近付く。この時シエルは、ここまで強くなれたのはフラリアをはじめとした仲間との出会いがあったからだと感謝していた。


 誰でも出来るような低難易度の技や、レイアストから教わったケンソォドソーダー。それらの技しかなかったシエルがこの土壇場で編み出したのは、これまでの全てを融合させた必殺技だった。


「ロックソォドプレッシャアァァァ!」


 そしてシエルはツツジと共にクロウへ飛び降りる。着地点には大きなクレーターが出来上がり、大地が震えるほどの勢いだった。




「どんなもんよ…」

「こ、こんな馬鹿みたいな逆転負けが…あっていい…もんか…」


 死を迎えたツツジの身体は光となって消えていく。立ち上がったシエルはその消滅を見届けると、クレーターを上がっていった。

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