第11話 シエルは勇者の仲間に加わった!
移動型拠点ウィングキャットが私の前に停まった。そして降りてきたのは、絶世の美女であり完全無欠、アイクラウンドの勇者セスタ・サーティンだった。
「こんばんは。こんなところでキャンプかい?」
あぁなんておこがましい!?モノローグの中とはいえセスタ様に敬称を付けなかったなんて!私って外見以外ホントブス!
「は、はじめまして…勇者セスタ様ですか?」
「フフッ…はじめましてのはずなのに、どうして私が勇者だって分かるんだい?」
「当然ですよ!セスタ様はこの国を魔王から救った勇者様なんですから!超絶有名人を知らない人なんていやしませんよ!」
テレビの画面越しでしか視たことなかったけど…違うわぁ…
えっッッッッろ!
そうだ!興奮してる場合じゃない!早く命を狙われている事を伝えないと!
「そうだセスタ様!私、あなたを殺そうとするやつを見たんです!あいつ頭おかしいんですよ!自分を勇者だとか言って!」
「なんだって…その話、詳しく聞かせてもらえないか?」
ウィングキャットの中に案内された私は、バーで見たあの男の事を全て伝えた。
「タケル・ザカリー・リリア・アーシェ・ブレイズ…スネークのように長い名前だな。しかし聞いたことがない…人間だったのかい?魔族じゃなくて」
「えぇ。あれは人間です!国を救ってもらった恩を仇で返そうとする馬鹿な人間でした!」
私の実力が及べばあそこで捻り潰してたけど、多分勝てなかったからな…
「恨まれる理由は一体………そうだ、その人について教えてくれてありがとう。礼をさせてくれ。何か私に出来ることはあるか?」
「お、お礼…あの!実は困った事に巻き込まれちゃって…」
私はカジヤンと出会ってからここまでの冒険について話し、奴隷制度の撤廃について相談した。
「…君の話を聴いて改めて思ったよ。やっぱりこの国に奴隷制度は必要ないよね」
「ですよね!ですよね!」
「ただ、私一人の力では影響力が低い。君も協力してくれないか?」
「はい!もちろんです!」
勇者様の言葉なら誰だって耳を傾けると思うけど…確かに、私の証言があれば彼女の言葉に重みを加えられるかもしれない。
「ただ…絶戦場での用が済んでからで良いかな。放っておけないやつがいるんだ」
「大丈夫ですけど…」
放っておけない人…仲間かな?でもセスタ様はパーティーを組まない主義だし…実際、この大きな移動型拠点に彼女1人でしか暮らしてないみたいだし。
「客用の寝部屋がある。今日はそこで眠るといい。周囲の警戒はウィングキャットに任せてくれ」
シャワーを浴びた後、柔らかいベッドに横たわる。そのまま深い眠りにつき、私の長い一日はようやく終わった。