第108話 迫る最終決戦
シュラを撃破した今、残る敵は未だに姿を見せないツツジただ一人。ブレイズはこのクロウにて敵を迎え撃つ事と、国に残る者には戦いに協力を強制すると宣告した。
しかしクロウから出ていこうとする者は戦力にならない自覚がある者だけで、それ以外の住人は命を懸けても戦うと国に残った。
そして今、残った住人達は知識のあるマユの指示の元、超巨大な魔法陣を掘っていた。
「雨が降っても残るように深く掘って!ロビンチームはそこから紙に書かれた通りの模様を描いて!他のグループにぶつからないようにね」
魔法陣の効果は、円の範囲内に入った外敵を大幅に弱体化させるという至ってシンプルな物だ。こうして特定のポイントに敵を迎え撃つという戦術も、ブレイズ達が3年前に取ったものだ。違うのは規模である。今回はクロウという国1つに魔法陣を掘るのだ。その分弱体化の効果も期待ができる。
砂浜で作業をサボっていたシエルは、海の彼方に視線を向けていた。
「不老か…レイアスト達と同じだな」
先日のシュラとの戦いで再び命を落としたシエルは、生き返るために排除という少女と訳も分からないまま契約を交わしてしまった。まだ不老になったという自覚はないが、遠い未来で嫌でも分からされる事だろう。
「シエルさん、皆頑張ってるんだからサボっちゃダメですよ」
「カジヤン…」
「その変なあだ名もやめてくださいよ。私にはフラリアっていう立派な名前があるんですから」
「そう言われても私にとってはカジヤンだからなぁ」
兎のような耳をピクピクと揺らしてフラリアがやって来た。
「ツツジとの戦いが終わったらカジヤンはどうするの?」
「急な質問ですね…ブレイズを支えていきます。あの人、戦いが終わったら元いた世界のトウキョウって場所とコンタクトを取って、姉妹都市にするって言ってるんですよ
「へえ~壮大な計画ね」
「シエルさんはどうするんですか?」
「旅に出るわ。再会することもないでしょうね」
「今生の別れですか…寂しいですね」
「あんたねえ、他人のことよりも自分のこと考えたほうがいいわよ。前の世界でブレイズにラヴな幼馴染がいたんだから。油断してると盗られちゃうわよ」
「え…そんな話一切聞いてないんですけど」
幼馴染のいる世界とコンタクトを取りたがっている。そう考えたフラリアはこのままではマズいと感じ、話し合いをするためにブレイズを探しに行った。
「あ~あ、余計なこと言っちゃったかも…」
フラリアに注意されたシエルだったが、それでもやる気が起こらず砂浜に座り込んだ。
フラリア、ブレイズの将来ときて、次に考えるのはセスタ達だった。
セスタ、クルミ、マユの3人は今後もクロウに残ってこの国を支えていく事になる。セスタは防衛隊の一員としてこの国を守り続けるが、クルミとマユは学校を創って先生をやるそうだ。優しそうな二人が先生なのはともかくとして、防衛隊に入ったらツノなし鬼教官を異名を持つ彼女に鍛えられるのは、なんとも気の毒だ。
「見てくださいよ~あそこにサボってるやついますよ~」
「うわ~いけないんだ~」
「…どういうノリよ」
しばらくするとスコップを持ったアクトナイトとレイアストがやって来た。
「別に一人ぐらいサボっても魔法陣が完成するでしょ…私だって呆けたい時ぐらいあるの」
「でもお前、島に来たばっかの時燃え尽きて何もやってなかったよな」
「そうなの?!駄目だよシエル、やる時はちゃんとやらないと…」
「はいはい…あんた達はツツジとの戦いが終わったらどうするの?」
「あいつを倒したらここでの役割も終わりだ」
「別の世界に行くよ。またこの世界が助けを必要としたら戻って来るかもね」
「…メアリスって不老なんだよね?死ぬまで戦い続けるの?」
「まぁそうなるね。引退しようとすれば出来るけど、その頃にはシエル達もとっくに死んじゃってるよ」
「そうか~…」
シエルはCPUに関する事を誰にも打ち明けていない。これについてはレイアストにも話すつもりはなかった。署名した契約書に他言無用などと書かれていたかは覚えてないが、あまり人に話してよさそうな事ではなかったからだ。
レイアスト達はマユから貰った資料を参考に、その場に魔法陣の一部を掘り始めた。それを見たシエルは立ち上がるとようやく作業を再開した。長い休憩時間だった。
それから数日後、魔法陣は予定よりも質の高い物が完成した。これにより弱体化の効果にも更に期待が掛かる。
しかし同時に、今日まで姿を見せないツツジに危機感を感じた。シュラ達が前触れもなくブレイズ達の元へ現れたように、ツツジにもそういう事ができると考えるのが妥当だ。
「こんなやり方で勝てるのかしら…」
魔法陣完成の祝いとツツジ撃破の前祝いを兼ねての宴が行われていた。シエルはそれを遠くから見ていた。




