第103話 戦士達はアノレカディアへ
シエル達が進太郎の世界へやって来てから数日が経過した。
東京都に3つの巨大な頭が現れた。突如出現した3つの頭は目、口、から光線を放って攻撃を開始。東京都を混乱に陥れた。
「シュラ・コウベ!…行くわよブレイズ!」
「進太郎でいられるのはここまでか…」
二人は窓から外へと飛び出した。そしてこの瞬間、進太郎はブレイズへと戻った。己の使命を成し遂げるために平穏に背を向けたのである。
シエルとブレイズはシュラ・コウベが出現した東京タワー近辺へやって来た。街や逃げ惑う人々を襲っていたコウベは彼女達を見つけると攻撃対象を切り替えた。
「どうだった山桐進太郎。ひと時の平穏は楽しかったか?」
「あぁ!ここに生きる人達の平穏をこれ以上奪わせやしない!」
「それは無理な話だよ」
シュラ・コウベは卑怯にも地上へ降りず、二人がどうやっても攻撃の届かない空中から光線を落とした。
「ブレイズ!忍法でなんとかしなさいよ!」
「前の戦いを忘れたか。下手に術を使えば動けなくなってしまうだろ」
「じゃあどうすんのよ!」
シエルは街灯を手頃なサイズに切り分けると、投擲武器の代わりとしてコウベに投げ飛ばした。
「野蛮だな」
しかし避けるまでもないのか、コウベは直撃を喰らいながら光線を照射し続けた。
「ちょっと!降りてきなさいよ!卑怯者!」
「正々堂々とした戦いがしたければ我が務めるとしよう」
前触れもなく現れたシュラ・キャクは正々堂々とは程遠い奇襲でシエルを蹴り飛ばした。
「シエル!くっ!お前も来るか!」
「そうだ我だ」
シエルを心配している余裕はない。ブレイズはシュラ・シュムの触手と頭上からの光線を避ける事で手一杯となった。
「残る二人はどうした?別の世界へ逃げたのか?」
「遅刻してるだけよ!」
光線を照射していたシュラ・コウベが一直線に重なった。その瞬間、雲の中から隕石のように現れたアクトナイトが、3つの頭を貫く砕いた。
「アクト!」
「すまん遅れた!次は足だ!」
ブレイズは触手を全て避けながら、キャクの方へ走って行った。そして三人同時の攻撃でキャクは輪切りとなった。
「残るは──」
2体のシュラを倒している間に、シュムはケイトによって地面に伏せられていた。
「やれや!ケイトさん!」
3体のシュラを囲うように、力抑の魔法陣が出現した。バラバラになったシュラの肉体は元に戻ろうとするも輪の中では動く事ができず、力を取り戻す事はできなかった。
激しい戦いによって大勢の見物人が集まっていた。その中にはブレイズの両親と他に幼馴染の透や友達がいた。
「さぁ!アノレカディアへ帰ろうか!」
「無理だな。我らですら習得に時間が掛かった転移魔法をお前達が──」
「俺は使える!お前達が頑張って記憶したやり方は全部吸収させてもらった!」
シュラ達はアノレカディアで発動した転移魔法の原理が思い出せなかった。三体揃ってその知識をケイトに奪われたようだ。
「なんと卑怯な…」
「お前らが言うかい…それじゃあ行くぞ!」
ケイトは転移の準備を始めた。自分達は勿論、3体のシュラも同行させるとなると前よりも時間が掛かるようだ。
「待ってよ進太郎君!」
「透…」
「本当に行っちゃうの!?残ってよ!行かないでよ!」
「…すまない、お前の気持ちに応える事はできない。それでも平穏を求める人達の願いには応えてみせる!」
「「進太郎!」」
戻って欲しくないという気持ちは両親も同じだった。彼は分かってくれると言っていたが、そんな事があるはずなかった。せっかく帰って来た我が子がまたいなくなろうとしているのだ。
「御両親!進太郎君の事は私が絶対に守ります!絶対にまたこの世界に顔を出させます!だからもう一度だけ待ってあげてください!」
シエルはブレイズの両親に頭を下げた。見知らぬ女の言葉など普通なら信じられるはずもなかったが、両親は何故だが信じる事ができた。そして進太郎を止める事をやめた。
「…さようなら。父さん、母さん」
「飛ぶぞぉぉぉぉぉ!」
準備の完了したケイトが大声をあげる。そしてここにいるべきではない7つの存在はその場所から消失した。




