第101話 4年間の想い
パトカーに連れ込まれる直前にシエルは抵抗をしてみせた。すると警官達の警戒心はシエルの方に集中し、進太郎は現場で巻き込まれた学生の一人として認識された。
透は膝を曲げると、座り込んでいた進太郎に抱き着いた。
「今までどこにいたの?ずっと心配してたんだよ!」
「透…」
「戻って来てくれてありがとう…おかえりなさい」
「ただいま」
透と抱き合う進太郎の元に、彼の知り合いと思わしき生徒達が近付いて来た。
「おいお前、進太郎か?4年前に行方不明になった山桐進太郎だよな!?」
「朝鮮に拉致されたんじゃなかったのか?脱北したのかよ!」
「また会えるなんて思わなかった!」
「勝也!新城!保福!…放課後会おう。場所はメールする」
進太郎は親友達との再会を喜んだ。しかし彼らに授業が残っている事を思い出すと、一礼してグラウンドから去って行った。
放課後、進太郎からのメールを受けた透は友人達と共に走ってその場所へ向かった。そこは彼らが休みの日によく通っていたショッピングモール、サッカクヒタルの前で合流した。
「進太郎君!」
時間があった進太郎は今の体格に合った服に着替えていた。
「久しぶりだな~進太郎!いやさっき会ったけど」
「これからどうする?ゲーセン?映画?」
「それよりも!進太郎君が今までどうしてたか聞くんでしょ?」
透は進太郎の手を取って建物の中へ引っ張った。それからどこか特定の店によるわけでもなく、ブラブラと歩き回りながら4年間どこで何をしていたか聞いた。進太郎は
しかし生真面目な進太郎は誤魔化すという事を知らなかった。下手に誤魔化すよりも正直に話した方がてっとり早いという考えもあり、アノレカディアの事を話して困惑されてしまった。
「い、異世界…?」
「実は4年間引き籠ってラノベ読みふけってましったってオチじゃないよな?」
「無理して信じろとは言わない。しかし俺をこの世界へ戻したやつらがここへ攻めて来るという事だけは覚えていてくれ」
「覚えとけって…具体的にどう対策すりゃいいんだよ」
透達も進太郎が嘘を言っているようには覚えなかったので、きっと学校を襲って来たような危ない怪物がまた来るのだろうと覚悟した。
しばらくすると、透に気を遣った男子達が先に帰っていった。二人きりなった透は自然と店の外に出て、人のいない道を進んでいた。
「あのさあ進太郎。これからどうするの?」
「なんとしてもアノレカディアへ帰還する。そして俺の使命を果たす」
「帰っちゃうの?もういいじゃん。無理して戦わなくたって、向こうには強い人がいるんでしょ。無理矢理連れて来られたのに、戦わないといけないなんておかしいよ」
「はじめの頃は俺もそう思った。だけど今は違う。レイアストに支えられて生きてきた俺は、あいつの使命を継いで果たさなければならない。それに向こうには俺を待ってくれてる人もいる」
「その人って…」
「俺の大切な人だ」
異世界での経験で洞察力が鍛えられていた進太郎は、透の想いに気付いていた。フラリアを待たせている彼はその想いに応える事はできないと、遠回しに返事をしたのである。
「そっか…運がなかったなぁ…」
想いを告げる前に失恋した透とは先に帰っていった。
再び帰って来られるかは分からない。進太郎はゆっくりと家へ帰り、東京の景色を目に焼き付けた。




