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第92話 強敵、3人の魔術師

「な、なんなんですかあなた達!?」

「どうして私達に銃を向けるんですか!」

「友好条約を結びに来たんじゃないですか!?」



 島の中心に案内されたアメーカ人達は、隠し持っていた武器を子供相手に構えていた。訪問者達を信頼しきっていた少年達は、自分達を警護する防衛隊員を付けていなかったために抵抗すら出来なかった。


「子供ってのは純粋(ばか)だなぁ!」

「レット君。私は以前君達に助けてもらって帰国した後、首相にこの島の事をお話したんだ。すると首相は大変お喜びになってね。この島の子供達を全員奴隷にしてしまおうと素晴らしい提案をなさったのだ」

「ひ、酷いです!僕達はあなた達を助けたじゃないですか!」

「ならいいじゃないか。君達はアメーカの財産となって私達の生活を助けてくれたまえよ。あっはっはっは!」


 レットにライフルの銃口を突き付けたゴッヅは真実を暴露する。こうして友好条約を結ぶ気がないどころか、敵意を超えた悪意がある事が確信に変わった瞬間、密かに見張っていたシエル達が動き出した。


「な、なんだお前達は!?」


 戦いと呼べる経験は少なく、奴隷にする弱者しか襲ってこなかったアメーカの大人達は、シエル達の急襲に対応出来ず全滅させられた。


「殺しちゃったの!?」

「叩いて気絶させただけよ。自分達が襲われないなんて勘違いして、物凄い()かね」

「こいつらをどうするかはお前達に任せる」


 ブレイズ達はアメーカ人を縄で縛り付けた。その場にいた子供達は集まるとまず、大人達をどうするか話し合いを始めてしまった。


「呑気ねえ…」


 シエル達がその光景を眺めていると、奴隷船が停泊している方向から大きな音が届いた。


「なんなの!?」

「マユが何かやったな…行くぞ!」




 ブレイズ達は砂浜へ向かった。そこでは3人の魔術師が傷付いたマユを包囲していた。


「弱いさね」

「所詮は子供さね」

「見るさね。この島の精鋭らしいさね」


 魔術師はマユをトゲの生えた光の輪で拘束すると、向かい来るシエル達の前に立ち塞がった。


「敵は3人か!こっちの方が有利ね!」

「大した事ないさね。ポイズンウォール!」


 魔術師が呪文を唱えると、地面から猛毒の壁が発生。マユを助けようにもこれには足を止めてしまった。しかしクルミとフラリアはそれよりも高く跳び上がる。


「馬鹿!空中じゃ──」

「魔法使いでなきゃ回避できないさね」


 壁を越えようとして誘導された二人は魔法の弾を喰らった。その間に回り込んだシエル、ブレイズ、セスタは各々魔術師に斬りかかった。


「まあ無粋!全員剣士かさね!?」

「地元最強の剣術じゃアメーカ精鋭の魔術師たる私達には勝てないさね」

「訛ちゃってさ!そっちの方が地元(田舎)くさいわよ!」


 魔術師達はバリアを張って迫る刃を弾くと、隙を見せた相手に弾を撃ち込んだ。


「こんなバリアを破れないなんてどうしようもないさね」

「でも良かったさね。これなら殺す事もなくこいつらも奴隷として持ち帰れそうさね」


「みんな!この船の中には拘束された人達が沢山乗ってた!」

「防衛達、住民と共に退(さが)れ!こいつらは私達が倒す!」


 セスタは周辺の子供達を島の中心へ避難するように指示すると、再び魔術師に挑んでいった。


「力の差が分からないさね。なら疲れて動けなくなるまでず~っと相手してあげるさね」

「でりゃあぁぁぁ!」


 3年前の彼女なら余裕で倒せたであろう魔術師はバリアを張らず、加速魔法で剣撃を避けて翻弄した。セスタも同様の魔法を使うが、それでも刃は当たらなかった。


「それがお前の加速さね。私が虎ならお前はナマケモノさね」

「がっ!?」


 再び吹き飛ばされたセスタの背後には毒の壁がそびえ立っていた。その間に入ったクルミは炎を背負って毒から身を守りつつ、師を受け止めた。


「助かった!」

「2対1の状況を作る!シエルさんとブレイズさんは他2人を止めてください!」

「合点々!」

「分かった!」


 シエル達はそれぞれ左右に立つ魔術師へ仕掛ける。命中させる事よりも気を引く事を目的として、反撃を喰らわないように徹底した攻撃を行った。その間にクルミとセスタはマユのそばに立っている魔術師に向かっていった。


「発展途上国特有の無茶な戦術さね」

「それはそうか!」


 次の瞬間、クルミはシエルが相手していた魔術師の背後にワープした。そして剣を振るうが、それすらもバリアで弾かれてしまったのだ。


「そんな!?」

「素人は飛ぶ瞬間、転移元から先まで意識の線を伸ばすさね」


 クルミは電撃を喰らった。さらにセスタが相手していた魔術師はシエルを引き寄せて、二人を衝突させた。


「飛んで来るにも場所を考えろ!」

「無茶言わないで!」




「スノーボール・アーティファクト!」

「ビオガ!」


 ブレイズは敵の大技を誘い出すと、それを自身のバリアで防いで強硬突破。魔術師の真正面に飛び込んで剣を突き出した。


「潜在呪文なんて聞こえはいいけど言ってしまえば才能頼りの能力さね。そんな呪文が魔法の呪文に敵うと思ったら、大間違いさね!」


 魔術師は攻撃のみならずブレイズをその場に固定した。トゲの付いた手袋を付けると、魔術師は超高速の往復ビンタを繰り出した。


「やっぱり男は叩くに限るさね!」

「ブレイズ!」


 大きなハンマーを構えたフラリアが飛び出した。それでもこの中で最も戦闘力が低い彼女では、助けるのは難しかった。


「お前は船長の肉便器になるさね」

「そういえば船長達はどうなったさね?子供達の捕獲には成功したさね?」

「ヂカラセフィラ・グランケン!」


 しかしフラリアは機転を効かせた。固定されていたブレイズを潜在呪文で武器に変えて、掴んで奪い返したのだ。


「面白い術さね!ポイズンキャノン!」

「俺を構えろ!」


 毒液が噴射されるが、フラリアはブレイジングリフレクトソードの能力で魔術師の攻撃を吸収。噴射が収まると即座に接近し、エネルギーが蓄積された剣を振るった。


「「ブレイジングスラッシュ!」」

「バリアが!?」


 フラリアの一太刀によって魔術師のバリアが砕ける。さらにワープして来たクルミの突きも合わさって、強烈な合体攻撃が敵の頭部に炸裂した。


「まず一人!」


 頭部を失った魔術師は停泊していた船体に叩きつけられた。


「やられちゃったさね」

「もったいないさね」


 しかし、これまで圧倒していた仲間が急にやられてしまったのにも関わらず、残った二人は落ち着いていた。




「い、嫌だァ!やめろォ!」


 すると突然、船の上から包帯で拘束されている男が浮いて出てきた。マユが船内で見た奴隷の内の一人である。


「いけない!そいつを止めて!」


 マユがそう呼び掛けてシエルとセスタが動くが、二人の魔術師が立ち塞がった。


「嫌だ!やめてくれ!」


 次の瞬間、男の身体は頭を残して弾け飛んだ。残った頭はそばにある首なしの上に移り、癒着して魔術師の頭部となってしまった。


「か~っ!不細工な顔さね!」

「帰ったらいい顔のやつととっかえるさね!」

「くぅぅぅ!お前らよくもやってくれたさね!前の頭はフォノノノンの姫から奪った高級品だったさね!」


 どうやら奪った身体のパーツは彼らにとってはファッションと同じらしい。気に入っていた頭部を失った事で怒り狂った魔術師は、フラリア達に怒涛の攻撃魔法を浴びせた。



「いやあああああ!?」


 弾けた男の血が頬に付着する。その光景を間近で見てしまったマユは悲鳴をあげた。


「うるさいさね」

「泣くのが仕事なのは赤ん坊だけさね」


 マユを黙らせようと魔術師達が攻撃を放つ。それを受け止めたシエルとセスタは重傷を負って動けなくなった。



「死ねさね!死ねさね!死ねさねえぇぇぇぇぇ!」


 フォールディングアームで自身を動かし、フラリアとクルミを庇っていたブレイズ。しかし吸収できる攻撃にも限りがあり、間もなくその限界を迎えようとしていた。


「ブレイズ!もうやめて!」

「くっ…うおおおおお!」


 そして限界を迎えたブレイジングリフレクトソードは爆発し、守っていた二人もそれに飲み込まれた。


「はぁ…はぁ…はぁ…」




「嫌だ…フラリア!クルミ!おばさん!皆!」


 その場に残っていたのはマユ唯一人だった。彼女も魔法で拘束されており、この戦いを制したのは魔術師と言ってもいい。

 かつての記憶を遡っても、ここまで絶望的な状況はなかった。


「生きてるやつだけは奴隷にしてやるさね…ん?」


 重傷を負っていたシエルが剣で身体を支えて立ち上がった。勝敗が決しても尚、彼女は戦う意思を保っていた。


「死にぞこないさね…」

「私を一撃で殺せないなんて…大した事ない魔法」

「負け犬の遠吠えさね。不快だから早く殺してしまえさね」

「私も最期まで戦ってみせる…レイアスト!」


 シエルは子供達の逃げる時間を稼ぐつもりだった。自分が負けると分かっていても、全て失われるわけではない。彼女は諦めていなかったのだ。




「…くっ!あああああああああ!」


 その姿に感化され、マユは輪を砕こうと力を振り絞る。その間にシエルは何度も攻撃を喰らったが、片脚を失っても立ち続けていた。


 そして次の瞬間、マユの実力では破れるはずのない、魔術師達による拘束魔法が解かれたのであった。






 真っ白な空間の中でマユは立ち上がる。状況が理解できない彼女の正面には、自分とそっくりな少女が立っていた。驚いて声を出そうにも、どういうわけか一言として発する事は叶わない。

 少女はマユに向かって光を送った。そして申し訳なさそうに頭を下げると、背を向けてマユから離れていった。




「待って!」


 声を出した瞬間、マユは砂浜に戻っていた。今、自分はどういう体験をしたのか。気にはなったがそれよりもやるべき事があった。


「見事さね」

「拘束を解いたさね」

「だけどこれまでさね」



「元々のマユは自分が満足したいがために好きな事をやってた…それなら私も、自分が好きな事のために戦う!この島を助けるためにこの力を使う!」

「何をブツブツと…死ねさね!」

「ガレイボルダ!」


 魔術師の攻撃と同時である。


 マユは発現した潜在呪文を叫んだ。

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