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第90話 建国記念日

 島に住民が移り住み、国と名乗れるぐらいには整備がある程度完了した頃、リーダー格の子供達がクロウ建国を祝してのお祭りをしたいと言い出した。毎日働き詰めだった子供達はガス抜きを望んでいたようで、反対の声はなかった。



 そしてお祭り当日。あくまでも外部の人間であるシエルとその仲間達は海から不審な船が来ないか、いつも頑張ってくれている子供達に代わって監視を行っていた。


「街の方は賑やかねえ…」


 子供達のはしゃぐ声と波の音に挟まれたシエルは自動で首を振るサーチライトに合わせて目を動かしていた。



 そろそろこの島から自分は必要とされなくなるだろうとシエルは考え出した。

 子供であるフラリア、ブレイズ、クルミ、さらに産まれたばかりのマユはこれまでの恩もあるため追い出される事はない。セスタも教官という欠かせない立場に付いているため、むしろクロウから離れようとするものなら必死になって止められるだろう。

 しかしシエルは特技を持たない大人である。今後さらに発展して肉体労働の必要が減って来るとなると、彼女をどう扱えばいいのかフラリアも困るだろう。


「何がしたいんだろうな…私は」


 レイアストの言葉を思い出してから必死に励んできたシエルだが、もうここでやるべき事は全てやったと考えている。




 なら次にやるべき事。そう考えて真っ先に浮かび上がったのはツツジの討伐だった。


「あいつのせいでセスタは利用されて、彼女の弟子達もおかしくなって、そしてレイアストは死んだ…ツツジだけはなんとしても…」




「憎しみで動けばそれこそ昔までの私と何も変わらないぞ」


 その声を聴いてシエルは震え上がる。ゆっくりと振り返ると、そこには苦手としているセスタが立っていた。


「あ、ど、どうも…」

「怯えなくていい…そういう顔で見られるとこちらも傷付く」

「あはは…セスタも冗談言うのね」


 シエルは怯えたままだが、セスタは過去の事は水に流していた。そもそも、弟子にすら愛着を持たなかった自分がどうして彼女の裏切り一つであそこまで激情したのだろうかと考えるぐらいだ。それも全て自分に寄生していたツツジによる影響なのだろうと答えも出していた。


「…きっとツツジとの戦いは避けて通れない運命だろう。その時になったらお前達の誰かがあいつに勝たなければならないんだ」

「お前達って…あなたは?」

「3年前の戦いで私は多くの力を失った。師匠とは呼ばれているが実力はクルミの方が上。私の事は戦力として考えない方がいい」

「ちょっとちょっと、勇者様がそんなに弱気で大丈夫なの?」

「私は既に勇者ではない。いや元から、あいつに利用されていた玩具に過ぎないただの馬鹿女だ」


 自嘲するセスタ。その姿を見たシエルは何のフォローも掛けてやれなかった。


「…自分勝手な頼みだ。だが頼む。私の人生を狂わせたあいつを地獄へ堕としてくれ」


「頼む相手が違うわね。私だってあなたと同じ馬鹿女よ。それよりも慕ってくれてるクルミやブレイズ達の方が上手くやってくれるわよ」


 そうしてシエルも自身を卑下する。しかしツツジを倒せる可能性は残されているのだと、諦めてはいなかった。

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