第1話 Aランクを目指す少女
冒険者というのは人それぞれだ。ダンジョンクリアのプロフェッショナル、レアアイテムのコレクター、魔物退治の専門家。色々あってどれも素晴らしいと思う。
その中でも私、シエル・ラングリッターの目標はAランクの冒険者になることだ。
今日はクエストを達成するため、リーウィン雪山にあるダンジョン、オルソラの氷城へと足を踏み入れた。
「ここまで無駄な消耗なし…今度のクエストはきっとクリア出来る…はず」
今回受諾しているクエストは3つ。まずはここまでの道中で自生していたブリザードリアン10個の収集は既に達成している。2つ目は氷城に出てくる魔物、アイスビートルの角を3本の収集。
そして最後は、復活したオルソラのダンジョンボス、ブルル姫の討伐。ダンジョンボスは倒してから月日が経つと復活するので、別に驚くことじゃない。
いや、むしろチャンスと言うべきだ。復活してくれて良かった。ここでブルル姫を倒せれば私の名前も上がる。これを達成すれば目標のAランクに…!
冷たく大きな扉を開けて、まず目に入ったのは大きな階段だった。昇った先には通路を跨いで再び階段。それを繰り返して5階に当たる場所には、ボス部屋と思わしき派手な扉が見えた。
近付いてみると、扉には大きな鍵穴がある。ここを開けるには専用の鍵を使うか、扉を破壊する程の超パワーをぶつけるかだ。
私には扉を破壊する程の筋力がない。よって鍵を探すことになる。
「こういう時には…東来雲で!」
ガラス瓶を開くと、オレンジ色の小さな雲が出てくる。これは東来雲と言って、今必要としているアイテムを持ってきてくれる優れ物だ。ただし一度きり。アイテムを持ってくると消滅してしまう。
「よろしくね~」
鍵を探しに行った東来雲が戻ってくるまでに、アイスビートルの角を収集したのだけれど…
「って鍵を頼んだのにどうしてポーションを取ってくるの!?あぁちょっと!消えないでよ!」
届いたのは回復のポーションだった。東来雲は貴重なアイテムで、そう何度も使う物をじゃない。仕方ないから鍵は自分で探すとしよう。
「あの~…」
あれ?他にも冒険者がいたんだ…それも4人パーティーの。
「先にボス挑戦しても良いですか?」
その内の1人はこの鍵穴に合いそうな大きな鍵を持っていた。そりゃあ東来雲だってポーション持ってくるよ。だって人が持ってる物は奪えないもん。
「ど、どうぞどうぞ~」
冒険者達は解錠して扉を開き、ボス部屋へ入って行く。まあ焦らなくても、噂だとブルル姫は凄い強いらしい。だからあの4人にはなるべく弱らせてから脱出してもらって、私が美味しいところを持っていく。
「その首、獲った!…な~んて、アッハッハッハッハ…」
良いなぁ、パーティー…私も強い人と組めたらなぁ…
「やったー!ブルル姫を倒したぞ!」
「だんだん連携にも慣れてきたな」
なんと現実は残酷か…ブルル姫を倒したさっきの冒険者達が城のエントランスへとテレポートした。つまりこの扉の向こう側には…
「ノォォァン!?誰もいないじゃん!」
ボス討伐されちゃったよ!あの人達、クエストとかじゃなくて力試しでここに来たよね!?何してくれちゃってんの!!
「ハァッ…帰ろっ」
私っていつもこんな感じ。肝心なところで上手くいかないんだ…