ハッピーエンドが思いつかない
この感情を何といえば伝わるだろうか。
終わりの見えないトンネル?
暗くて深い穴の底?
そんなありふれた言葉じゃない。
もっと もっと。 もっと!
いつまでこうして過ごすのだろうか
食事は栄養の摂取。浅い眠りを繰り返しまともに
眠れたことはない。
感情を亡くし気配を消し、生きている痕跡を
残さないように生きる。
一人になるとひたすら思考した。考えたところで
行動も環境も変わらない。
嫌なことがなくても、毎晩涙が止まらない。
毎夜死にたいと、このまま目が覚めなければいいのにと
願い、毎朝また一日が始まることに絶望した。
今日は怒られないといいな
7年が経っていた。まだ私は死んでいない。
しかしいつ死んでもおかしくない状況だった。
布団から出ることもままならない日もあった。
布団の中でお金がかからず、苦しまずに死ぬ方法だけを
考えた。学校は楽しいと思えた。
家のことを忘れられたから。
その環境を壊したくなくて明るい子を演じた
“私“ちゃんって悩み無さそうでいいなー
部屋には監視カメラ、携帯はチェック。
悪いことをしたら罰を受けなければならない。
このころが一番正気じゃなかった。
妹にされて嫌だったことを毎日報告した。
暗い部屋で扉を閉められ、白目が真っ赤になるまで
叩かれる。でも妹が怒られた日は自分がひどい目に
あわない。
守るべき小さな存在を自分の身代わりにしていた。
何回も。泣き叫ぶ声を今も忘れない。
きっと一生、忘れられない。
守ってあげられなくてごめんね。
生きていても死んでも迷惑だ。
他人の子の癖に。
顔も合わせたくないし声も聴きたくない
気分を害した
もっと誠意を持って謝れよ。
土下座って知らない?
お前のせいで
全部私のせいって分かったからもう言わないでよ
こんな私にも仲のいい人ができた
物腰の柔らかい優しそうな人
でも毎日が少し楽しくなった。
しかし学校や放課後が楽しければ楽しいほど
帰るのがつらくなる
いつの間にか楽しいときに心から楽しめなくなった
むしろ楽しいほど心はしんどくなる。
嬉しいことがあっても、嫌なことがあっても
気持ちは沈んでいく。
この感情を何と言えば伝わるだろうか
ずっと夢だった。普通の女の子になりたかった。
毎日朝が来るのが当たり前で、
親や周りの人に甘えたり頼ったりできる。
友達とくだらないことを本気で楽しんだり、
誰かを好きになったりできる。
そんな普通が欲しかった。やっと、近づけた。
浮かれていたんだ。
一緒にいる時間が増えて、気を許してしまった。
話してしまった。一部分だが自分の過去や思いを。
普通の女の子になるために絶対に人に
言わなかったことを。
きっと、誰かに聞いてほしかったのだろう。
自分がどういう人間で、何を感じて、
何を考えているのか。
この人ならそんな自分も受け入れてくれると
無意識のうちに
期待してしまっていたのかもしれない。
その場ではもちろん、相手はいつものように
優しい言葉をかけてくれた。
でもそれ以降会話が減り、いつしか話さなくなった。
自分のことを話したからなのか、それとも私自身に
問題があったからなのかは分からない。
私の普通はみんなの普通じゃない。
普通の幸せなんて、私が望んじゃいけなかったんだ。
人に期待してはいけない。
簡単に心を開いてはいけない。
自分以外は家族だろうが何だろうが他人。
赤の他人かただの他人かの違いしかない。
分かっていたじゃないか。
じゃあなんで、この人は違うと思ってしまったんだ。
優しい言葉にほだされてしまったのか。
相手の放つ言葉のすべてが、私を甘やかしているように
感じて素直に受け止められない自分がいた。
その反面、嬉しくも思っていたのだろう。
やっぱり人を信じてはいけない。
一般論をぶつけてくる恵まれた人たちが嫌いだ。
親はひどいことをしても何やかや子供を
大事に思っているだとか、
信じないでいるよりも、信じて裏切られるほうが
いいだとか、一つも納得できない。
そういう考えの人がいるのはわかる。
でも私はそうじゃない。あなたたちがそう思うのは
自由だけど、そう考えられない私に意見を
押し付けてこないでほしい。
「あなたのために」とか、「ほんとは大事に思っている」
とか。後付けの理由なんていらない。
全部自分のためなの知ってる。
同じことでも機嫌がよければ注意で済むのに、
機嫌が悪ければ激怒するのは、ただの八つ当たり。
つまりあなたのストレス発散じゃないか
何を言われようとも今更傷は治らない。
心はとうに死んでいる。
枯れた花に水をやっても無駄なように、
人間も「その時ほしい言葉」を言ってもらわないと
意味がないし、思ったことはその場で言えないと
その思考はあとから振り返っても意味がない。
「結局こうなったからいいじゃん」「結局謝ったじゃん」
結果論で話さないで
早く大人になる必要があった。
なんでもできるようにならないといけなかった。
一人で生きられるようにならないといけなかった
でも今は、もっとゆっくり大人になりたかった
って思ってる。
早く大人になりたいってずっと思っていた。
でもそれは不幸でもあると分かってしまった。
人に迷惑をかけない程度ならわがままであってもいいし、
ゆっくり大人になればいいよ
と、みんなに言いたい。
ああ、結局私は幸せになれない。
誰でも自分の人生の主人公だなんて誰が言ったんだ。
私のストーリーは面白くも楽しくもなく、
ハッピーエンドが思いつきもしないのに。
読者もつかず、なんの生産性もない。
読後感もすっきりしないんだ。
幸せは束の間だと知っている。
人を信じて傷つくのは怖い。
ただ、息をして今を耐えている。
きっと死ぬまで。
これからいろんな経験をするだろう。
嬉しいことも、悲しいことも。
でもハッピーエンドが思いつかない私は、きっと
何十年後も今のまんまで現状に絶望しているのだろう。
ただ死へ向かって鼓動を消費する。
この感情を何といえばいいのだろうか。
終わりの見えないトンネル?
暗くて深い穴の底?
そんなありふれた言葉じゃない。
――地獄行きの列車で美味しいディナーを食べるような――