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秘されし赤林檎  作者: 敬重感泣
80/80

5.1赤のアザミ1

「そう。クイーンすらも犠牲にして、しかも取ったのはポーンだけ。ポーンだけだぞ。わかるだろこのロマンが。」

 対面に座る少女はむむむと口を結んで悩むそぶりを見せる。

「もっとたくさんとる方がかっこいいかも。」

 はあ。本当にわかっていない。やはり女に男のロマンってのは難しいのかもな。いや、こいつが馬鹿なだけか。オーリならきっとわかるはず。期待を込めてせっせと準備をしているオーリに顔を向ける。

「なあ。賢いお前ならこのスマートさがわかるよな!」

「え。。。いやその。。。」

 話は聞いていたようだが、急に話を振られて驚いているのか言い淀んでいる。違うな。それにしては辺に躊躇しているようにも見える。さては魅力あふれる俺に見つめられてドギマギしてしまったか。まったく困った奴らだ。

「わたしも仲間の犠牲は極力抑えた方が美しいのではないかと。」

 苦笑いのような何とも言えない表情で答えた。まったくこいつらは本当に、本当に何もわかっていない。それにいつもヨイショしてくれるのにこういう時はちゃっかり否定してくるんだよな。

 頭を振ってお前らは本当にわかってないぞと意思表示した。

「大きな犠牲を許容した大胆な攻撃。そしてこのトリッキーで美しい局面がわからないとはなんと悲しいことかな。いやあ本当に。」

 ふーん、と興味なさそうにキングを持ち上げてプラプラさせている。

「これは君が考え出したの。。。かも。」

 「まさか。どこでこれを知ったんだったかなぁ。。。だがこれを初めて知ったときは心の底から感動したのは間違いなく確かだ。」

 どこで知ったんだろうか。こういった類のはエピソード込みで記憶に残るものだと思うがその肝心な部分が思い出せない。喉に引っかかりを覚えるようなモヤモヤにイラつく。

「それじゃあ誰が作ったの。その人がチェスを教えてくれたの。」

 今度は真っすぐに目を見つめてくる。なんだこいつ意外とチェスに興味があるのか。でも確かに駒の動かし方は知っていたしな。クソ弱いけど。

「誰が作ったのかは俺も知らん。。。マジで俺はどこでこれを知ったんだ。」

 チェスの本もウェブサイトも見るほどの興味はない。そもそもチェス自体そこまで興味があったわけじゃない。娯楽が限られたあの場所であいつと簡単にできるからやってただけで。

「俺はチェスを誰とやってたんだ。誰に習った。。。」

 だんだんと頭の中の靄が鮮明となってくる。

「なあお前ら何か知っているか。。。いやあり得ないか。」

 二人ともキョトンとした顔をしている。

「そんな興味ないから別に誰に習ったのでもいいかも。」

 何か馬鹿を見るような、憐れむような眼を向けてくる。やめろ俺は大事なことは忘れるような男じゃない。完璧超人として崇拝されている俺の能力に疑問を持たせるわけにはいかない。。。

「いやここまで出かかってるんだ。少し待ってくれ。」

 ジトっとした目を向けてくる美少女の前でこめかみを押さえてひねり出そうとしていると非難めいた声をかけられる。

「誰でもいいでしょう。ジョンでもマイケルでも。何ならこの世にいない人なのでしょう。そんなことよりこっち手伝ってくれませんかね。こっちの発案者は貴方でしょう。」

「そうだ。そうだそうだそうだ。マイケルマイケルだよ。マイケル。俺にチェスを駒の動かし方から教えてくれた大恩人だよ。マイケルからこの棋譜も教えてもらったんだよ。めちゃめちゃ賢くてしかも面白いんだよ。何で忘れてたんだろう。大事な人なのに。」

 自分の頭を叩くも興奮は収まるどころかさらに沸き立つ。思わず前の不愛想頭弱美少女の肩をつかんでしまう。いきなりイケメンにつかまれて驚いたようで目を見開いて固まっている。罪な男で申し訳ない。

「それで何をすればいいんだ。」

 イケメンの圧を食らって固まってしまったのは放っておいてそろそろ俺も作業に戻ろう。なぜならできる男は部下に任せっきりにしないからだ。

「はぁ。。。やっとですか。では適度に木材や油を盛っていくのをお願いしてもよろしいですか。私は発火装置の設置を行っていきます。」

 全くよくできた部下だ。嫌味どころか溜息も嫌な顔一つせず笑顔で準備をしてくれている。本当にいい部下だ。

「さてどれくらいで来るのかなっと。」

 オーリの口から流れるかなり離れた位置にいても聞こえてきそうな、呪文なような小言を聞こえないフリをして肉体労働に励む。結構な労働量だ。下手に目立つのも悪いからすべて手作業だ。本当に誰だよいい案が思いついたとか言っていたやつ。過去の自分をぶん殴りたい。ひたすら自分への恨みを原動力に働いていると声がかけられた。

「そろそろ出たはずかも。」

 唯一悠々自適お昼寝少女が声をかけてきた。どうやって連絡を取ったのか、かもってなんだかもって、といった疑問は全て投げ捨てる。こういう無駄な興味は持たない方がうまくいくものだ。

「さあもうひと踏ん張りだ。」

 ゴロゴロしている娘を引きずり起して作業に励む。


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