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秘されし赤林檎  作者: 敬重感泣
74/80

赤きリナリア2

 止まった台からは通路が続いており、その先には光に照らされる長い卓が置かれていた。横並びに人が並んで座っていてその後ろに数人立っている。

「遅い!」

 空席に挟まれた赤髪の少年が声を上げた。他の者も声を上げはしないが、皆渋い顔をしていた。

「今回はただの外れだろう。さっさと終わらせよう。こっちはやることが溜まってるんだ。」

 苛立ち気に膝を揺らす男が顎を突き出している。顔の整った若い男だ。

「いやあ。すまないね。こちらはそろっているのかい。」

 ピリついた空気を意にも介さずそのまま空席の一つに腰を掛けた。通路に突っ立っている青年に手招きの仕草をしている。青年はできるだけ非礼にならぬよう少し腰を屈めて目を合わせないよう早々にそちらに向かう。皆が一様に注目していることを肌で感じる。

 明るい所に足を踏み出すと、温かみを背で感じた。同時に今しがたとは比べ物にならないほどに空気が緊張感を孕んだ。

「。。。極めて赤いな。」

 誰かがこぼした言葉が真っすぐに耳に伝わってきた。

「っと。」

 床の起伏に足を躓かせ片手を地についてしまった。顔を上げると皆が立ち上がっていた。腰に手をかける者、衣嚢に手を入れる者。少しでも動けば殺すと言わんばかりに険しい顔を向けてきている。

「待て待て。その子は私が連れてきたんだ。当然生まれから何まで知っている。」

 ただ一人座ったまま、卓の茶碗に指をかけケラケラ笑っている。

 ゆっくりと皆が緊張を緩める。周りをそそくさと見渡して合わせて座ろうとする隣の少年に、領主は茶碗を掲げて見せた。

「君も飲むと良い。多少は落ち着くだろう。」

「お前らの出すものなんか誰が飲むか。何を入れられてるかわかったもんじゃない。」

 ぴしゃりとはねつけられ、苦笑を青年に向けた。青年も立ち上がりながら思わず苦笑を返すと、それが気に食わなかったようで少年はムッとした表情を青年に向けた。

「そういえば、一人まだ来ていないようだが。」

 青年を手招きし後ろに来るよう指示を出しながら他の参列者に顔を向けた。青年はそのうちにそそくさと後ろに回る。

「聞いていないのか。あいつは欠席だ。いつもの通りにな。」

 ニヤつきながら編み込んだ長髪の女が答えた。

「そうかい。」

 えらく素っ気なく返事をすると、立ち上がり両手を広げた。座る皆に首を曲げ顔を向けながら声を張った。

「それでは人数は足りませんが、我々の定めた規定通りに叙任式を始めましょう。」

 パラパラと拍手がされた。それをしばらく満足そうに笑顔で眺めると、パンと手を叩いた。

「参列者の紹介は。。。今回は必要ないか。ただまだ斎していない者もいるようだ。彼らには我々のためにも軽く挨拶でもしてもらおうか。」

 うっすらと笑いながら隣の少年と、もう一人の赤髪の娘に笑顔を送った。少年は何やら勘案しているようだ。険しい顔をしている。女児の方は真顔のまま正面を見続けている。

「えっと。。。」

 意を決した少年が立ち上がったとき、後ろからダンと大きな音がした。皆が振り返ると、そこにはマスクで顔を覆った白髪の女と、短髪の男が立っていた。そしてすぐ後ろでジェミと呼ばれていた娘が肩をしていた。


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