1.6赤のアジサイ4
そんなこんなで授業が白熱している間に外は少し暗くなっていた。腕を上げて軽く伸びをしていると隣でサージャも起きたようだ。何もしてないのに体を伸ばしてやり切ったぜみたいな顔をしてババアに拳骨を食らっている。
そして涙目でこちらを見つめてくる。俺を見つめたところでどうにもならないのだが。しょうがないので頭をなでてやると体を俺に擦り付けてくる。かわいい。かわいいが4歳児だ。俺は年下が好きだが決してロリコンではない。性癖がゆがみそうだからやめてほしい。やめてほしくないがやめてほしい。矛盾した感情に悩まされる。
俺が苦悶しているとババアがパンッと手を叩いた。
「ボウズは帰る時間だよ。」
そうだ。帰らなければならない。夜は死の支配する時間だ。村の外に出てはいけないといわれているのだ。急いで今日のノートを紐でまとめる。
「お兄ちゃんもう帰っちゃうの?」
まただ。目を手の甲でゴシゴシとぬぐうと、眉を八の字に、口をきゅっと結んで上目でキラキラした目を向けてくる。眠いようで目が閉じそうになって無理やり開いてと葛藤している。にしてもこいつマジで俺に色目使ってんじゃないのか。いやいやいや、こいつは4歳児だぞ。しかもこいつもいろいろあってここにいるようだし、同年代もいない中で寂しいんだろうな。俺は何を考えているんだ。軽く深呼吸をして自分の中の邪な感情を丸ごと追い出す。
「明日またくるさ。寝て起きたらまたいるよ。早く寝てな。」
そういって頭を軽くなでてやると体を俺に傾けてくる。こうしてると元の世界を思い出す。元の世界というか元カノだが。年下でこいつみたいによく甘えてきたものだ。元の世界で唯一の楽しかった思い出だ。
いかんいかん。俺は異世界に来たんだ。過去じゃなく未来を見ていくんだ。
隣で本格的に寝始めたサージャの温かくなった脇に手を入れて持ち上げて部屋の座布団に頭を置いて寝かせる。
外に出るとエルフのお姉さんが俺の山羊を家の外に連れてきてくれていた。
「すみません。ありがとうございます!」
礼を言うとエルフのお姉さんは整った顔ににこやかな笑顔をたたえて会釈してくれた。眼福だ。
「それじゃあまた明日。おやすみなさい。」
エルフのお姉さんに挨拶すると手を前に重ねて丁寧にお辞儀してくれた。なんかお偉いさんになったようでむずがゆい。いつもしてくれるわけだがなかなか慣れないものだ。
空の光量が減った淡く暗い空のもと、山羊は俺の寝床に向かって全力疾走する。




