赤きネリネ14
小一時間互いに最低限以上の口を開くことなく歩みを続けると、次第に大きな壁とそれを突き抜ける城が見えてきた。
エアリオンの館も大変立派ではあったが、比にならない大きさだ。
「すごいですね。」
その見事さもそうであるが、何よりその形に呆気に取られてしまう。大きな柱を重ねたような形をした外見だ。城というにはやや趣に欠けるが、それ以上に洗練された何かがあった。
「あれがガプロマス家の居城です。ご覧になるのは初めてですか。」
「はい。。。」
名ばかりの家系で地区からまともに出たこともない。
「なんとも奇妙な城ですよね。」
そう言ってクスクス笑っている。そんなに笑われるほどにみっともない様子であっただろうかと、顔が熱を帯びてきたのを感じる。
「中に入ればさらに驚くと思いますよ。機関といったかな。それはもうすごいですよ。」
そう笑顔を向けてくる。既に十分驚いていた青年は、はぁと気の抜けた返事しかできなかった。
目の前の風景にぼんやりとしていると、子どもたちの元気な声が聞こえてきた。
「なんで俺らがこんな面倒なことをしなきゃいけねーんだよ!」
「うんー。」
「やることいっぱいあるのに!」
「そうだなー。。。でも姉さんたちにシバかれるしなー。」
「どいつもこいつもほんとにもうっ!」
いかにも苛立たしいといった風に頭を掻きむしる、悪童といった風体の子と、適当な相槌を返すいかにも無気力といった子だ。年端もいかない子等は兵士たちの中で浮いていた。
「そう言わずに。重要な行事ですから。」
青年は二人の会話に自然と入っていく。二人は一瞬コンスピの方を睨むも、すぐに体の力を抜いて、今度は二人そろって渋い顔をした。
「やっときたか!」
「おそいー。」
そう言いながら無気力な方が手を振って近くの兵士を呼び出す。もう一人の悪童は、トカゲの背を下りたコンスピに詰め寄っていた。
「連絡も遅い上に来るのも遅い!お前如きの時間と俺らの時間が釣り合うとでも思ってんのか。舐めてんだろ。でもお前は舐めてるんじゃねえ、舐めさせてもらってるんだ。そこんとこ。。。」
コンスピは因縁を付けられ詰め寄られていながらも、全くそれを気にするそぶりも見せずに顔を青年に向けて笑っている。青年に手を出して降りるのを手伝った。
「じゃあちゃっちゃと行きますー。」
不愛想な子はそう言うと開いた門へと歩き出してしまった。コンスピはトカゲを引いていく兵士に後から別の人間が来るから待機するよう指示を出すと、青年に付き添って歩き出した。
「お前は来なくていいぞ。お前らが”丁重に”なんて言うからわざわざ二人も出てきてんだ。ほら、飼い主のとこに帰れ帰れ。」
コンスピに迫っていた少女は片目を広げ、逆の口端を引き上げて歯を見せながらそう言って、払うように手を振った。不愛想な方も振り返って少し笑っている。同じ感想のようだ。
しかし少女たちの方を見ることもなく歩行を続ける。困惑し立ち止まる青年に笑いかけ、腰を押して半ば無理やり歩かせる。
「私も行きますのでさっさと案内してください。」
貌も向けずに淡々と答える男に、少女たちは二人してため息をつくと何やら兵士に指示を出して先導しだした。
「ほんといけ好かない奴らだわ。」
「鼻につくー。」
居心地の悪い空間で、今まで見てきた中で一番大きく重い門に対峙する。静かに深呼吸をすると青年は中心地へと歩き出した。




