3.2.3橙色のガーベラ3
グロ注意
「あああああああああ」
風に乗って飛ばされる刃物が何度も何度も身を削る。血が飛び散り、体中に毛のように柄が生えている。新たに刺さるたびに体が震えるような声でもがき苦しんでいた。
「おおおおおりぃ!」
しかしそのたびに野人が体を治し、何事もなかったかのように歩き出す。辺りに血をばらまきながら歩く姿は神話の悪魔そのものだった。息を切らしながらウィテカートを使い続ける男たちも、微かに足を震わせていた。
「クソいてえじゃねーか。」
歩みを止めて女がそう問いかけるも、男たちは構わず放ち続けている。
「うおおおおおおおおお」
腕が外衣ごと切りおとされボトッと落ちた。傷口を押さえながら屈むとその腕を震える手で拾い、そのまま押し付け始めた。
押し当てられた血だらけの腕には、地の肌がわからないほどに傷跡で埋まっていた。
「クソっ」
震えながら振り返る顔は、涙でぐちゃぐちゃになっていた。目元にできた酷い隈も相まって、痛ましさよりも恐ろしさの方が勝っていた。
「おおおおおりいいい」
情けない姿でこちらを見つめていると、野人が回復させているようだ。腕の表面に脈がボコボコと浮き出てきて切れ目を覆うと、次第にその脈は薄く広がり、元の状態に戻っていた。
切断された腕が戻ったのを確認すると、先ほどではないものの多数の刃が向かってくる中で歩みを進める。
「くそがあっ」
切られても、貫かれても、止まりながらも歩みは進む。男たちも恐怖か苛立ちか、狙いをこちらに定めるようになってきた。女に向かっていた襲撃の風は、少しずつこちらに向けられる。
しかし、全て何かに弾かれた。
次第に腰が引けていくのか、男たちは後ろに一歩ずつ下がっていく。
「ってーな。風ってことはエアリオンか。。。いや、タスピコロナムか。」
男たちの肩が一瞬少しだけ跳ねた。
「まあまあ使えるってことは騎士。。。いや、そこまでではないか。。。騎士候補といったところか。」
男たちは手を止めてじっと女を見つめている。
「。。。そういう貴方たちは。騎士のようでいらっしゃいますが、なぜ我々に敵対する。それに野人を引き連れているなんて。」
「背信そのものじゃないですか。」
女はちらりとこちらを向くと、向き直り、首を左右に傾げて少し悩むようなしぐさを見せた。
「それよりさ、普通もっと前に聞くことがあるよね。」
少しの間一帯に無言の時が流れる。
沈黙にいたたまれなくなったのか、足をゆさゆさと揺すり始めた。
「いやだからさあ。なんで死なないの!とかまさか死人かっ!とかあるでしょ普通。めっちゃ頑張ってるのにそこ疑問なしなわけ?」
心なしか耳が赤くなっているように見える。
小さくため息をつくと、もういいやと言って体を脱力した。
「それで、君ら本当のところはどこの人たちなのよ。」
男たちは答えるそぶりも見せず、再び風を起こし始めた。女は小さくため息をつくと、さらに男たちに向かって歩き出した。
「フフフ。。。無駄だって言ってててててててて」
絶え間なく降り注ぐ刃にまたしても歩みを止めうずくまった。その時、一本の短剣が女の仮面の紐を切って外れた。慌てて手で押さえるも、男たちには見えていたようだ。一瞬驚いた顔をすると、震えながら膝をついた。
「。。。見えた?」
屈んだまま女が問いかけるも、男たちは下を向いたまま震えるばかりだった。小さくため息をつくと、女は片手で頭を掻きむしった。
「本当にあの馬鹿どもがっ」
女は地面をドンッと踏みつけると、ぶつぶつと頷きながら独り言を言うと、地面から軽やかな風が舞った。そして改めて男たちに向き直った。
「さて、事情が変わった。。。まあ少なからず君たちも信仰心はあるようだし、従ってくれるだろうけども。」
そしてまたぶつぶつと独り言を言い始めた。
何が何だかわからないが、村の皆を殺した奴らを生かしておくつもりのようだ。地面に転がった短剣を拾い上げて足で無理やり体を持ち上げる。とてつもない痛みが下半身を襲うも、不思議と今は気にならなかった。
上手く力が入らない足を無理やり動かして、傾いた体を押し込むように走り出す。奴らは膝をついてこちらも見ていない。殺す。
しかし、いとも簡単に女に腕を掴まれそのまま持ち上げられてしまった。
「ぅっ。。。放せっ」
悲鳴を上げる足をばたつかせるも、何の意味も為さない。
「君はあれを殺す資格があるのだろう。。。だが、すまないが事情が変わったんだよ。」
子供だからと恩でも着せたつもりか、憐れむような視線を向けてくる。だが結局こいつらも教団の人間だった。そういうことだろう。
掴まれた腕を無理やり藁のように捻ってなんとか逃れる。
こいつから殺すべきか。だめになっていない方の短剣を向けてタイミングを計っていると真横から体全体に衝撃があった。
「ここで何をしている。」
「。。。これはまた上等なのが出てきたな。」
体に響いたのは、遅すぎる救世主の登場であった。




