4.2赤のヒガンバナ
部屋を出てからしばらく経ってから気が付いた。チェスに夢中で、進捗をカメピスから聞き忘れていた。。。
「なあ、そういえばカメちゃんの方は順調なのかな。。。なんだっけあのほら」
空中に指を振るも、なにも引っかかるものは無い。
指を振り回しながらオーリに顔を向けると、ため息をつきつつも答えてくれた。
「アーカ商合のことですね。あちらはかなり順調なはずです。当然、急いで展開しているのでかなり穴もあるようですが。」
そうだ。アーカ商合だ。聞くたびに背筋がぞくぞくする。とんでもないネーミングセンスだ。
「そういえば、あの子の地区にもそろそろ到達するって言ってたかも。」
なんだこいつら。めちゃめちゃ有能じゃん。
「じゃあ、まああの子を取り込めなくてもなんとかその辺はカバーできそうだな。」
俺がオーリの顔をほっとした顔で見つめると、静かに息を吐きながら首を横に振った。
「いろいろ迂回して、みんな苦労して苦労してようやくあそこまで大規模にしたんですよ。手一杯です。もしこの状態でこちら側との繋がりがはっきりとすれば、非常に煩雑なことになります。」
なんか面倒くさいな。もういっそのこと、一気に行動を起こしてもなんとかなりそうなものだけれども。こいつらめちゃめちゃ強いじゃん。
そんな俺の考えが透けて見えたのか、ハルは半目でチクチクと言ってきた。
「流石に今すぐには不確定要素が多すぎるかも。どう行動するかわからない人が多すぎるかも。もちろん貴方自身も。」
そういわれてしまうと何も言えない。はいはいと渋い顔をして返事をすると、優しく俺の頭を撫でてきた。俺はその鬱陶しい腕を払う。腕と腕の白熱した戦いをしていると、息を切らしながら男が走ってきた。
身構える二人を制して、男に顎を振って話を促す。こいつらには珍しく俺に礼もせずに早速話を始めた。まあいちいち腕を上げて挨拶されるのは面倒だし構わないが。。。なんかこいつ若干笑っているような。。。俺は別に構わないがハルは許してくれないだろうな。。。
「緊急で連絡が入りました。東の、野人の里跡にて襲撃を確認したとのことです。状況の確認、制圧をお願いしたいとのことです。」
ほらな。とドヤ顔を二人に向けるも、二人ともしらっとした顔であたかもわかっていましたよってな顔を向けてくる。面白くない。
「それで、いつの話なんだ。お前らはいつ向かっていつ戻ってきた?制圧といったがいつその指令が出たんだ?そうそう簡単に出せる指令の類ではないだろう?うーん。お前はイニデックスの所属か。お前らの騎士団はどうした。そもそもそんな話は全くこちらで把握していないぞ。」
ハルがすごい勢いで男との距離を詰めていく。すると男は薄ら笑いをすっかり引っ込めて、急にたじたじとして、いえ、とかいや、とか言ってろくに喋れなくなってしまった。完全に下を向いてビビってる男に、ハルは首をかしげて変わらずグイグイ間合いを詰めている。
本当にもう勘弁してくれよ。こいつの場合マジでこのまま殺しかねない。急いで二人の間に体をねじ込む。今度は俺と至近距離になった伝令の顔が若干赤く染まっていく。。。それも勘弁してくれ。
俺はそのままハルの肩を掴んで男から距離を取った。
「お前、こいつを殺す気か?」
「。。。そんな簡単に殺さないかも」
「今の間はなんだ。」
「なんでもないかも。」
「はぁ。」
本当に危なかった。俺はそう確信している。色々と気をつけろと、助言しようと振り向くも、もう彼はいなくなっていた。
「貴方たちが馬鹿みたいに言い合っている間に走って逃げてしまいましたよ。」
オーリは呆れ顔でそう言うと、小さくため息をついた。なんか苦労が絶えないって感じだな。よく休んでほしいものだ。
「んんっ」
取り乱してちょっと恥ずかしかったので、咳払いで誤魔化して空気を引き締める。
「とにかく想定通りだな。ひとまず俺らはお願い通りやってやろう。今夜出発で。」
二人は俺の言葉に頷いた。
「よし。それじゃあひとまず解散。」
二人とも自分たちの用意をしに戻っていく。二人の後姿を見送りながら、何やらモヤモヤとしていた。なんかまだ忘れているような。。。そうだった。急いで、歩き出したオーリに声をかける。
「オーリ!。小鳥ちゃん達をよろしくっ!」
そう言うと、オーリはガクッと頭を落とすと、また歩き出した。なんかいつもいつもごめんね。。。
気を取り直して俺も身支度を整えに向かった。




