2.1.2.1みどりのアスター1
いつも通りの朝。少女は小さくあくびをして、イガイガする喉を摩りながら階段を下りていく。そのまま井戸に水を汲みに行こうと考えるも、いつもと違う空気を感じて少し固まっってしまった。呼吸を整え親に声をかけようと声を出そうとした瞬間、後ろから口を押えられる。ギョッとして何事かとそのままの体勢で後ろを見るとムルメニだった。
「お姉ちゃんしーっ」
小声で妹に制され姉としての威厳を少し侵され不機嫌になるも、大人しくしたがうことにした。
「。。。そんな急に。。。。。。。そもそも黒。。。はっ」
「あいつら。。。。今回は。。。。とにかくうつ。。。。。そうだろう」
「。。。。。が私は思います」
ところどころしか聞こえない会話ではあるものの、少女たちに危機感を煽るには十分だった。
少女たちは顔を見合わせるとそっと音を立てないように階段を上りなおす。二人ともサージャの部屋に入りベッドに腰を下ろした。お互いにただ事ではないことを確認するように言葉は交わさず顔を見合わせる。
サージャがグッと唾をのむとムルメニは心配を取り除こうとしてか、姉の頭をなでようと腕を伸ばす。サージャはその腕を鬱陶しそうに払いのける。
「あれってやっぱりマルジウム。。。のことだよね」
「うん。前も来ていたやつがいる」
少女たち、二人ともの頭にはカンラプクスの記憶が浮かんでいた。
「どうするんだろう。。。どこかに移るのかな。。。」
「でもあの時もあいつら場所分かってるようだし。。。」
カンラプクスの時もピンポイントで村を狙い撃ちしてきた。逃げようとも逃げ切れないのではないか、そういった考えがこの村にも充満していた。だからこそ場所を気取られないよう万全を尽くしてきた。それなのにこの村の場所もバレたのではないか。
大人たちが考えてくれるはず。きっと今まで通り選択をしてうまい具合にことを運んでくれるはず。自分たちがどうするとかそういう問題ではない。そう二人とも思っていた。だが、不安を拭うこともできずどうしようどうしようと互いに不安をぶつけ合う。
「。。。二人とも起きてたのね。」
突然扉を開かれて二人とも飛び上がる。サージャは、自分とは違い感覚が敏感な妹も自分とそろって驚いていることに気が付いた。そう。この少女は体の成長は早くとも自分より年下なのだ。何が何でも妹を守ろう。自分が守らねばならない。そう静かに心の中で自分に誓った。
「お姉ちゃんは顔を洗ってきなさい。ムルメニは昨日の続きをするからあっちへ行きましょう。。。。そのあと二人とも話があるわ。」
「わかった」「うん」
少女たちは返事をすると姉は部屋を出ていく。
「。。。あの子は行ったわね。」
サージャが出て行ったことを確認して母親は話し始めた。
「昨日の続きって。。。」
「その前に大事な話があるのよ。」
母親は少女の言葉を遮って話を続ける。
「あの子は特別なのよ。それはウルダーから聞いてるわよね。」
「。。。特殊な先祖返りだって。」
「そう。あの子はだから絶対に守らなければならないの。そのためにあの子を遠ざける。けれど、あの子は聡い。だから貴方があの子を誘導して守るの。いいわね。」
いつもとは違い何か恐怖すら感じる母親の眼差しに、少女は頷くことしかできなかった。