2.7赤のアスター7
部屋には当然アマルフィがいた。誠に愛情深い愛い奴じゃ。そしてもう一人愛情深い、いや愛情がゆがんでいる奴が一人。こいつ時々山羊の毛をつけてるときあるけどアマルフィのものだったのか。。。相性の悪そうな二人が並んで仲良く寝ている。まあ少し寂しいけどこいつら揃ったらなんかヤバそうだしそっとしとくか。。。部屋から引き返そうと扉を開くと猛烈な視線を感じた。まあそうですよね。想定内、想定内。。。そして残念ながら対処法はない。残念ながら。
一通りの愛のある一方的な抱擁などを交わした後、サージャと教室へ戻る。そう一緒にだ。ドキドキだねっ!
おかしいな。ババアに治療してもらったのに顔がめちゃめちゃ張ってるぞ~?おかしいなあ。どうしてだろう。。。。本当にどうしてだろう。
教室には既にババアが俺らのことを待っていた。あれれ~このババアなんかイラついてるぞぉ?足をトントンしている。お得意の足トントンだ。本当に良くないと思う。子どもにする態度じゃないよね。本当に。
そんな俺の考えを見て取ったのかすぐにトントンがドンドンになった。指の付け根で地面を叩いていたのが、この短い間に踵で地面をシバき始めた。怖い。パンパンになった頬を治療してもらおうと思ったのに、そんな雰囲気ではない。俺たちは大人しくババアの前に正座する。
大人しく座ったのがお気に召したのかトントンをやめてくれた。本当に良かった。
「私はしばらく河の族共のところへ行ってくるからね。」
河の族とな。確かあの本に結構な数の水に関する単語が載っていたし、十中八九あれ関連だろうな。
「河の族ってのは一体どんな?そいつらは邪教徒ですか?」
あん?とババアが半目でにらんでくる。なんか最近本当に怖いんですけど。俺が勝手にビビっていると、ああと合点がいったようだった。
「そうだそうだ。お前の記憶が戻る前だったか。お前もこちらの村に来る前に会ったことがあるんだがな。まあ私たちみたいに村を作って生活してるやつらだ。」
だから記憶が戻ったわけではないんだが。この村に来るようになる前。。。そういえば河童みたいなやつらもギー族の村に来ていたような。。。そいつらのところに行くのか。まあ水関連は水の化け物に聞くのが良いってことか。
ん?ってことは訓練も授業もなしのぐーたら生活に戻るってことか。。。!?ハイっと元気よく手を上げて質問してみる。
「じゃあ俺たちはその間自由時間ってことですか!?寂しいけど仕方がないですよね!」
俺の言葉を聞くなりババアは口角を上げてクククと喉を鳴らし始めた。嫌な予感がする。
「そうだよな。そうかそうか。せっかく本格的に始めた訓練だ。やめるのは嫌だよな。」
うんうんと一人で勝手に納得して勝手に頷いている。違うんですけど。全然違うんですけど。どうやって何もしない方に話を持っていくかを考え始めるも、ババアはそんな時間は与えてくれない。
「ウルダーと少し話をしてな。お前らのことはウルダーに任せることにしたよ。どうせならクソガキも一緒に学べばいいさ。通じるものはあるだろう。うん。」
またもや勝手に納得してやがる。要は先生がババアからウルダーに、俺をボコボコにするのが屈強な男からサージャになったってことか。救いはないのか。神よ。。。
「そろそろその邪神に祈る癖も治らないかね。。。」
もう考えを読まれたくらいじゃ驚かない。そうしてこの村での最後の授業が始まった。