2.4赤のアスター4
それからはドキドキ地獄の魔法レッスンが始まった。悲しいかな、俺の予感は未だに的中率100パーセントを維持している。
ババアのやつめ、決まったら早くやろうじゃないかなどと言いやがってそっからは即地獄の特訓会が始まった。
特訓の内容は当然のごとく戦闘、戦闘、戦闘だ。ただひたすらの暴力。暴力はすべてを制す!素晴らしい!それが振るう側ならば。
筋肉ムッキムキで、でっかい棍棒を持ったおっさんたちとまともに渡り合えるわけがない。一方的にボコられて、ババアの魔法で治されて、一方的にボコられて、ババアの魔法で治されて、一方的に治されて。。。。延々と続く拷問に発狂したくなる。
このサイクルを数回する度に、ババアが笑顔で「そろそろわかったかい?」などと聞いてくる。俺も笑顔で答えてやる。笑顔で対話を試みてくる相手には、こちらも対話をするつもりがありますよって態度で示してこそ、コミュニケーションってもんだ。だから相手にも聞き取りやすいよう、笑顔でハキハキと
「死ねクソババア!てめえの寝首を掻くからな!飯と夜道に気をつけろよクソババア!」
両手の中指をぴんと立てて啖呵を切る。
そこからは治療の回数が減りなぜか男たちの攻撃に力が入るようになった。解せない。
エンドレス暴力。傍から見ればただのリンチだ。傍からじゃなくてもただのリンチだ。ほんわか転生生活がガチムチ戦役生活に。いや、元々ほんわかでもなかったか。
永遠と続いた暴虐の時は、外が少し暗がってくるまで続いた。体はババアの魔法で回復しているものの、精神的にはかなり疲弊している。そのアンバランスさがなおのこと疲れを加速させる。
昼飯はサクッと終わらせ、というか食欲がわかずほぼスキップしいつも通り授業に入る。俺とババアは教室に移動し、男たちは入口の方向へ戻っていった。
教室に戻るとサージャがちんまりと座っていた。服に毛がついている。山羊たちと遊んでいたのだろうか。山羊たちは彼女のすぐ暴力に頼るちょっとアレな部分を察してか、全然懐かなかったはずだが彼女たちも変化したのだろうか。まあどうでもいいか。仲良くするのはいいことだ。
今日の授業は魔法についてだ。邪術だなんだといいながらウィテカートについても解説している。あれか、敵を知り己を知れば百戦危うからずって奴だろうか。
横のプリプリ幼女はまだプリプリしている。そろそろ機嫌を直してほしい。こっちも精神的に結構キてるんだ。子どもであることを加味しても、少し我慢ってものを知ってほしいものだ。まあ言ってもわからないんだろうな、子どもだから。寝たらすぐ忘れるだろうな、子どもだから。
グチグチ考えても仕方がない。授業に集中だ。
「魔法は本来、体と世界の仕組みを精神的に理解しなければ使えない。」
ずいぶん哲学的なお話だ。もし元の世界でこんなこと言ってるババアがいたら完全にアレな人として地域でマークされるだろうな。地域で爪弾きにされしょんぼりするババア。。。なぜか妙にリアルに想像ができてしまう。少し面白いけど悲しくなってきた。このババアそんな悪い奴じゃないんだよ。ちょっと神に祈っただけでブチギレるし、気に食わないとすぐ殴るし、意味を説明せずマッチョ共をけしかけて集団リンチするし。。。あれ、よく考えたらこのババア良い奴じゃないんじゃ。。。。
思考が全然関係ない方向に進んでいく。宗教染みた内容はあまり好きではないのだから仕方がない。そんな俺の考えていることに気が付いているのか、ババアは俺に話しかける。
「おいクソガキ。邪術とイーアの違いはなんだ。」
知らんがな。習ってもないのに知るわけがない。そんなもの違うから違うんじゃないのか。俺は欧米人のさあって感じのジェスチャーをすると、ババアはため息をついて話をつづけた。
「本来魔法はギーの前から存在はしていた。。。はずだが、やはり資料によるとそれはギーである場合が多く、元々持っている人間が存在する。格式の違いってやつだ。ギーの娘のギーがギーの力を持っていて。。。」
なるほど全然わからん。なおのことわからなくなった。
「というわけだ。まあ、あくまで私の予測ではあるのだが。。。これが理解するためには発想の根本にあるからよく覚えておくように。いいな?」
いやいや。いいな?といわれてもわかるわけがない。俺はまた欧米式に返事をする。殴られた。