1.3.2.2緑のアナベル2
情報収集の方法はシンプルに人から話を聞いて回るというものだ。単純簡単シンプルイズザベスト。その他本や新聞などを集めたりするのはエルフの仕事だ。
「お嬢ちゃん達偉いねえ。お使いかい?」
露店が立ち並ぶ大通りで少女は横から声をかけられる。
「うん!そうなの。」
台から帽子頭を少しだけ覗かせて小さいほうの少女が返事をする。
「あら、妹ちゃんもいるのかい」
妹と呼ばれた少女は少し頬を膨らませて抗議の意を伝えるも、台に隠れて見られすらしない。そんな威厳のかけらもない姉に苦笑をこぼしつつ近頃の近辺の様子を聞き返す。
「そうねえ。最近は野人たちはほら、あの何ていうのだったかしら。。。」
「。。。カンラプクス。。。です」
少女が小さくつぶやくと露店の女はそうそうよと話を続ける。
「そのカンプラス?が」
「。。。カンラプクスです」
「。。。とにかくその犬人たちが捕まってからは大人しくしているらしいわね。でも野人が大人しくなったら次は死人よ。」
「死人ですか」
下を見ると小さな姉が物欲しそうに台に置いてある果物を見つめている。姉らしくない姉にまたも苦笑いが湧きつつも一つ台の果物を指さしてお金を渡す。
「そうよー。イニデックス領国で死人が出たらしいのよ。しかも町中らしいわよ。」
それはお前らが、と言いたくなるも言葉を飲み込んで適当にお礼を言って他の店にも話を聞きに行く。
ふと少女はしまったと姉の方を見ると、姉は何も聞いていなかったようで、おいしそうに果物を頬パンパンに頬張っていた。少女は小さくため息をつくと小さな姉の手を取って別の通りの店へと向かう。
いくつかの店で話を聞きまわった結果、似たような話ばかりだった。イニデックス領国とガプロマス領国で死人が出没しているらしい。にやにやが止まらない。ざまあみろと思いながら最後の一仕事へと移る。
「お姉ちゃんそろそろやるよ」
少女はそういって裏路地に移動し人がいないことを確認する。遠くに人影が見えるものの問題ないと判断し標的の店前に置かれている樽に火をつけた。サージャはペンダントを強く握りしめる。しばらくすると小さな竜巻のような風が起こり火の勢いがどんどん増していく。彼女たちはその行く末を見ることなく一心にエルフの拠点へと走った。