1.3.2.1緑のアナベル1
今日も少女はいつも通り町へ遊びに行く。遊びにというよりは悪戯の類だ。エルフ達がいつもいろんなところに引率していく。サージャだけではなく妹のムルメニも一緒に。
「今日もよろしくお願いしますね。」
少女たちの母親がエルフ達に話しかけながら妹の方に変身の魔法をかけてやる。ムルメニは一族の血を濃く引いているため簡単なイーアなら使えるが、一日もつようなものまでは使えない。姉のサージャは先祖返りと言われ、かつて混じった人間の血が発現している。
サージャが妹にばかり魔法をかけてやる母親に顔をぷいっと背け腹を立てていると
「フフフフフ。。お姉ちゃんはそれがあるじゃん」
姉よりも大人びていると集落で評判な妹が姉の首元を指さし、そのままその手で頭をなでてきた。サージャはそれをうっとうしそうに払いのけ、自分より頭一つ分大きくなっている妹の頭頂部をクっとにらみつける。
その後胸元のペンダントを右手に取りじっくりと見る。相当古いものなはずなのに、何かの紋章が丁寧に刻まれ今もなお美しさを放っている。イーアとは違う力が込められているものらしく、先祖返りが起きるとその子がもつことになっているらしい。
妹に魔法をかけ終わった母親が今度はサージャの方を向いて頭をなでてやる。
「お姉ちゃんは擬態の必要ないでしょ。それにお姉ちゃんなんだから我慢しなくちゃ。」
「。。。うん」
甘えん坊で仕方がないなと母親が苦笑いしていると、少女は渋々と、しかし嬉しそうに返事をする。
「さあ、そろそろ行きましょうか。」
エルフのリーダーがそういうと取り巻きのエルフ二人がそれぞれ少女を抱き上げた。
「カンラプクスの件もありますし、十分注意してくださいね。。。」
少女たちの母親がそういうとエルフ達は深くお辞儀をして彼女たちは人間の町へと出発した。
少女たちの一族が変身の魔法を得意とするようにエルフ達は移動の魔法を得意としているらしく、すぐに移動は終わり、町中の彼女たちの拠点へと到着した。
彼女たちの使う魔法はサージャにとってなんとなく懐かしく心地よい。
町に来てからすることは決まっている。情報収集だ。少女二人はフンっと気合を入れる。ここに来たのはかつての仲間であるニクプロスたちを探すためである。かつては大人たちが行っていた仕事ではあるが、少女たちが志願して今はその仕事についている。早熟な一族であり、さらにエルフ達の勧めもあり就くことができた。当然少女たちにとっては面白そうという理由の他何もない。しかし、最初こそ遊びに来ているつもりとはいえカンラプクスの一件があってからは彼女たちも真剣に仕事を遂行するようになった。
真剣にとはいってもあくまで自分たちにとってということであるが。。。