表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
秘されし赤林檎  作者: 敬重感泣
10/78

1.9赤のアジサイ7

 少し寂しさを感じながらも俺も俺のやるべきことをやっていく。むしってきた竹の枝でアマルフィの毛を挟みそれをさらにアマルフィの毛で結んで簡易ブラシを作る。そのブラシを少し川で濡らして歯磨きを行う。アマルフィはすごい顔をして必死に魚を追っている。こいつ草食っぽいけど肉も食うのかな。山羊の顔で血まみれの魚を貪る絵面はキツそうだ。

「おーい。こっちにおいでー!」

 アマルフィは結構満足したようで、全力疾走で俺の方に向かってきた。そう、全力疾走で、だ。興奮していることは完全に計算外だった。どうしようかとあたふたしている間にドカーンと俺の首に衝撃が走る。危ない。歯ブラシを咥えたままだったらマジで死んでいた。

 これは流石に言ってやらなきゃいけないなと思ってアマルフィの方を見るも、クンクン小さな声をして俺の胸に頭を擦り付けている姿を見ると毒気も抜かれてしまう。頭をなでながら

「よしよし。。。でも今のは痛かったぞ。」

 軽く注意するにとどまってしまう自分の決意の弱さに少しげんなりする。アマルフィは全く気にするそぶりもなく俺に体を擦り付けている。

 だが落ち込んでいても仕方がない。気持ちを切り替えなければ。

「今日はお前も体を洗うぞ」

 そういって体を少し離し、俺は桶に水を入れてぶっかけてやる。アマルフィは最初はびっくりしたようでびくっとしたものの、すぐに気持ちよくなったようで俺の方に体を傾けている。十回も水をかけてやったら次は俺の番だ。俺が水をかけるのをやめたらアマルフィは不満げな目を向けながら川に入っていった。

 びしょびしょになった服を水を溜めた桶に突っ込んで、俺も櫛を持ってアマルフィを追いかける。頭を川に付けながら櫛で頭をとかす。一通りとかし終わったら次はアマルフィの番だ。気持ちよさそうに水につかっているところに近づいていくと、さっきの水浴びを切り上げたことに腹を立てているのか、体を震わせて水気を飛ばしてくる。愛情表現でやっている頭突きはこういう時にすべきものだと思うのだが。。。

 激しいアマルフィシャワーを全身に受けながらなんとかたどり着くと、満足したようでまた体を擦り付けてくる。左手で撫でてやりながら程よく湿った体毛を櫛でとかしてやる。気持ちが良いのか痛いのか、時々グイグイと頭を押し付ける力が強くなる。

 胴をとかし終わったので尻をポンポンと叩いてやると、ガバッと俺に乗りかかってきた。マウントボジションからのペロペロ攻撃だ。

 餌もやってない、毎日乗り回すだけで世話はエルフ任せなのにこいつはマジでなんで俺にこんなになついているんだ?まあ好かれる分には構わないのだが。

 アマルフィとのじゃれあいもひと段落つけば、すべきことは終わったので適当なところで切り上げて帰ることにする。そろそろ肌寒くなってきた。俺が水から上がろうとするとアマルフィもついてくる。さすが賢い子だ。空気も読める。まあ実際のところはこいつもさすがに飽きたんだろうな。

 体にまとわりついた水を振りまきながら川辺へと歩く。その時、俺たちとは少し離れた場所に人影、いや山羊に乗った人のような影が見えた。ギー族が朝飯の準備でもしているのだろう。そう思うと俄然腹が減ってきた。

 漬けていた服の絞りの程度もそこそこに、びしょびしょの服を身にまとって急いで来た道を戻る。アマルフィは乗れとばかりに伏せしてこちらを見てくるが、手綱なしにこの暴れん坊の背中に乗る勇気は持ち合わせていない。

 ンメンメ言いながら覗き込んでくる賢い子を連れて村へ、いや朝食へと走って帰ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ