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童話

リボンと少女

作者: 青い時計

 ドラゴンが渡る途中にある町に、仲良しの子供が住んでいました。


「今日のリボンも綺麗だね」


 男の子は女の子の髪とそれを彩るリボンが好きでよく褒めていました。


「ありがとう。でもドラゴンはもっと綺麗」


 少しはにかんだ女の子が空を見上げると日の光を浴びてキラリと輝くドラゴンが見えました。


「もっと近くでドラゴンを見てみたいな~」

「キラキラした物が好きみたいだよ。宝石の山を作ったらドラゴンがきてくれるかも」

「そうなったら素敵! ドラゴンを見ながら結婚したら幸せになれるんだよね?」

「・・・・・・見られなくても結婚しようよ。約束だ」


 男の子は顔を赤くしながら言いました。


「うんいいよ。約束ね!」


 無邪気な子供の約束です。


 でもそれを聞いた大人達は怖い顔をして言うのです。


「あなた達は結婚できない」


 2人は言い返したりどんなに相手と仲良しなのかを説明しましたが、ついには一緒に遊ぶことすらできなくなってしまいました。


 男の子は大きなお屋敷の令息でした。

 女の子は大きなお屋敷に出入りする仕立屋の娘でした。


 2人が会えるのは年に一度のお祭りだけになりました。


 女の子は男の子に会うのが待ち遠しくて、いつも色とりどりの端切れを使ってリボンを作っていました。そのリボンを見た男の子は綺麗だねといつも褒めるのです。


 2人はずっと仲良しで、お祭りではたくさんのことを話しました。1年分のお話なので、気づけばいつもあっという間に一日が終わってしまいます。


 ある年のことです。青年になった男の子が哀しそうに言いました。


「婚約することになったんだ」


 娘になった女の子が驚きで目をみはります。


「・・・・・・お願い。1年だけ、来年のお祭りまで待って」


 声を震わせながら告げた娘に青年は小さくうなづきました。



 それから娘は今まで以上にリボン作りに精を出しました。仕事も手伝いもこなし、ついには次のお祭りの準備を任されることになりました。


 娘が丹精込めて準備したお祭りの日。

 いつもと違い色とりどりのリボンが大通りに飾られました。それはまるでリボンでできた海のようで、金糸や銀糸を縫いこんだリボンもあるのか、風を受けるとキラリと光を反射します。

 綺麗と誰かがつぶやいたときでした。急に空が暗くなり巻き上げるような強い風が吹きつけました。


「ドラゴンだ!」


 誰かの叫びに上を見ると、ドラゴンが空から降りてくるのが見えます。

 広場がしんと静まりました。ドラゴンの風切り音がどんどん大きくなります。

 ゆっくりと羽ばたきながらリボンの海に着地したドラゴンは、嬉しそうに顔をうずめました。

 そのまま布団の中に潜る子供のようにリボンの中で遊んでいます。

 しばらくして満足したのかドラゴンは飛び上がり、あっという間に遠く小さくなってしまいました。

 人々が一斉にわあっと声をあげます。大歓声の中、今回の飾りつけをした娘が胴上げをされています。


 昔々この町の大通りにドラゴンが降り立ち、土地が豊かになったことを祝う祭りの日に再びドラゴンが舞い降りました。

 誰も彼もが大喜びです。

 王様も大層喜んで、娘は領主の息子と結婚することになり幸せに暮らしました。


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