81.(#°〼°)/〒≧炎炎炎炎炎炎炎炎炎炎炎炎炎炎
アーサーが気を失ってから壁の上に避難させた後、ほどなくして目を覚ました。
パチッ ムクッ ゴオンッ!
「ぶばぁ!!?」ビュゥー
「Σ(゜д゜lll)! うわ起きたー?!!」ビクゥッ!
安全な場所へ運ぶまでに内出血で全身が青紫に変色してピクリとも動かなかったので油断していたが故に、突然起き上がったアーサーにマヌゥは顔面に頭突きをされ、驚いたナナラは尻餅をついた。
「痛ててて……全身痛ぇーや」ゴキゴキ
「グフッ、スンマセン団長。コレから手当てする所だったんです」ダラダラ
そう言うマヌゥの手には包帯とプラスチック製のCBBコラボ限定デザイン容器に入った軟膏を握っている。
「あーそうか、じゃあそれ程長時間気ィ失ってたんじゃねーんだな」
「まだここに運んですぐっスよ」フキフキ
「(いいよナナラ、自分でやる)とりあえず手当てしたいので服脱いで、それから状況を言いましょうか?」
「おう。つーかお前そんな口調だったか?」
「いやぁ、あんなの見せられたら流石に……砦に来た夜は暗くてよく分からなかったっスし、AとかBだかの試験とかも砂煙でぶっちゃけ何にも見えてなかったんで…スよ。あっ」
アーサーがマヌゥの手から軟膏を奪って大量に薬を手に抉り取ると、残りを容器ごとナナラに放り渡した。
「お前は自分の手当てしろ、ナナラは背中を塗ってくれ」
「あいあい」
「あざっス。ズビッ、でえーと話しますね」グシグシ
極小生物の集合体である"S・G"との戦い後、戦場となったエリアの地盤が30m程沈み、地中に埋もれていた古代の遺跡が顔を覗かせていた。
この遺跡は大樹の異常な太さの根の更に枝分かれした根っこに絡みつかれた有り様で、ダンジョンの入口と推測される大樹の洞の前にある祭壇らしき人工物以外の建築物は雑巾を絞ったかのような姿だ。
「この遺跡群に現在、騎士団長の部隊が簡単な調査をしているそうです。調査と言ってもビアンカの姐さんが渡した殺虫剤の散布が主目的だそうっス、ですね」
カーマイン騎士団長は部下を呼んで一帯の調査を始めていた。遺跡の状態から碌なものは見つかりそうにない為、S・Gの生き残りを可能な限り駆除することの方に重点を置いている。
「マック隊の人達も調査の協力で同行してるっスね。騎士団長の部隊が分散して調査する一人ごとに3人ずつ付いて補助してます」
調査隊は慎重且つ手早く作業をする必要から分散して実行されている。マック隊は騎士団長の部下一人につき数人が付いて瓦礫の撤去や指示された箇所に殺虫剤を噴いていた。
「んで我らがCBB団は上と下で警戒中、ただ騎士団長様の許可を貰ってカールさんと数人で団長が倒した怪物の死体を回収しに行きました。難航してるみたいっスけど」
そしてCBB団員達はアーサーの手当てをする者と見張り以外は怪物の回収作業をしていた。
「う〜ん………カールが後始末を? 殊勝に聞こえるが何でだ? あ゛〜〜〜ま、見に行きゃ良いか」ゴキゴキ
「あ、そうだコレ……」スッ
気まずそうにマヌゥが差し出したのは、ボロボロになって短くなったアーサーの二本の剣。剣身が元の3分の1以下にまで短くなった姿にアーサーは思わず噴き出した。
「ぶははははは!! 短けー!? 痛てて……、ん? 何お前ら暗い顔してんだ?」
「え、だって大事な剣がこんなんになっちゃったんスよ?」
「はあ? お前ら今まで何見てたんだ? 剣なんて他にいっぱい持ってるぞ。コレだって自分で作っているし、予備も100本から用意している」
「「ええぇ!?」」
「まーお前ら貧乏人だしなぁ。武器一つだって大事な物か、でもその気持ちは大事にしろよ? その気持ちで手入れを怠らない限り、それは精神的支柱になる。が、それはそれとして予備の準備もしとけ、大黒柱と、それを補助する柱が揃って丈夫な骨組みになる。そこへ優れた防具や健康な身体を以て堅牢な壁とし、能力を育んで優れた調度品を誂えろ。優れた技はそれだけでも今後の…」
「あ、この壊れた武器、両方とも貰ってもイイっスか?」
話が長くなりそうな雰囲気にマヌゥは失礼を承知しつつ悪びれた様子も無く尋ねた。
「……俺の話、聞いてた?」
「難しい話はよくわからんです。そんな事より調度と言えば俺、丁度こんな護拳付きの短剣が欲しかったんス」
「"マン・ゴーシュ"か……ふむ、そのまま使うのはダメだな。まず剣身を研ぎ直して、柄や諸々の部品修理も必要だ。なんなら新しい物をカスタムした方が早いだろうな」
アーサーは善意の提案したが、マヌゥは手に武器を握ったまま興奮気味に断った。
「いや、新品なんかよりも"魔獣を倒した魔剣"の方がカッコイイじゃないスか! しかも雷属性も有るんスよ! 頂戴!」
「ん……まぁそこまで言うなら構わないが、実際、修理は必要だし、その剣の能力を十分に引き出すなら相応の訓練が必要になるぞ? ちょっとその刃を適当な所に押し当ててみな」
アーサーの指示に従ってマヌゥが足下の鋼鉄の床に剣を押し当てた。
「………?」グッグッ
「次は叩いてみろ」
「ふぅむ……」ガッガツン!
「思い切り」
「ええ? ……わかりまし…た!」ガッキィィィィィィン………
パチッ
何度も叩く中で一番強い力で振るって、ようやく小さな小さな電気が迸った。
「思い切りで静電気程度か……先に言っておくが、同じ形でこれ以外に常に帯電しているものも有る。こだわるのは結構だが、使うなら必要な訓練と念入りな手入れを心掛けろよ?」
「頑張ります!」ビシ
「良し………所でナナラはどうだ?」くるっ
張り切って答えるマヌゥに一先ず納得したアーサーは、ついでにと背中に薬を塗ってくれたナナラもどうだと思って振り返ると他人事と思って油断する姿があった。
「んぇ?」ほじほじ
「………………………」
「こんの馬鹿! 武器くれるかもって話だよ!」
「あ……え〜と、俺はその……銃が欲しいっス。片手で使える…」
「銃は専門外、他を当たってくれ」
「(´・Д・)がーん」




