75.( ・-・)√/何々?
カール達と別れて出発したマック隊は順調に歩みを進め、目的地である"神域攻略前線基地・南部砦"に到着した。
そこはボロボロに破壊された木杭の柵上部から、堅固なコンクリートの壁が十数メートル上にはみ出た要塞だった。
「杭を撃ってから内側で改めて壁を作ったのか……にしても入り口はどこだ?」
「身軽な時はどこからでも入って大丈夫だ。シーマン! 手本を見せてやれ!」
「ハッ!」
命令を受けたシーマン隊員はマック隊内では一番大柄で朴訥な性格をしているが、腹の底から大声を出してこれに応え、機敏な動作で壁に向かって駆け出す。
そして壁に向かって大きく跳躍するも木柵にぶつかった反動で一回転、そのまま地面に墜落するかと思いきや着地の瞬間、彼自身を中心に地面が波打ったかと見えた直後、スーパーボールのような跳躍でコンクリートの壁の上へ飛び乗ってしまった。
「とまあ、このように全身のバネやらを利用して侵入する。登攀するのも良いが、これが手っ取り早いし、今のうちに練習しておく事をオススメする」
そう言ったマックは腕を組んで上機嫌だった。その間にシーマンが上から縄梯子を下ろした所で、マックの部下達が続々と登って行った。
「あぁ、一番重くて力の強い奴が先に行って踏ん張るのね。ビアンカ、お前も上行ってウチの者を引っ張ってやれ」
「だーれが一番重いって〜? 仕舞いに張り倒すぞー……」
ビアンカが文句を言いつつも壁の前に立って身体を低く、四つん這いの格好を取る。
「はっけよ〜い……」
ドンッ!!
ドガンッ!
「うおっ?!」ビクッ
「ふぅ〜、勢いあり過ぎたー」
ビアンカは跳ぶと空中で半回転してコンクリートの壁の縁に踵を引っ掛けて難なく壁を登った。それを目の当たりにしたシーマンは驚いて踏ん張り損ない、梯子にぶら下がる隊員達からは怒号が上がった。
そして同じくビアンカも長いロープを鞄から取り出してぶん投げた。CBB団の女性陣が挙って手を伸ばすも、ロープをキャッチしたのは猫獣人のオリヒコだった。
「にゃが!? えと、この紐持って登おおおおおおお!!?」
ズザザザザザザザザザザザザ!!!
オリヒコがロープを握った瞬間、一気に巻き取られて引き摺られて行った。
「ギニャアアアアアアアアア!!! ニャゴ!」ズダン!
地面を引き摺られる勢いのまま壁に衝突する際、直前で体勢を立て直して壁に着地した。
ビィーーーーーン……
「ニャハハハ、ネコの着地能力はハッタリじゃあニャイのォォォオオオ!!!」ギュン!!!
今度は張り詰めた状態から力任せに引っ張り上げられる。弾丸の如きスピードで飛んで行ったオリヒコは、バスケットボールのようにビアンカに両手で受け止められた。
「よーし、こんな感じで良いかー!?」
「にゃごごご……ケコッ、ケコッ!」ボエッ
気分の悪くなったオリヒコが毛玉を吐く。それを見た面々は青くなって垂らすだけにするようお願いしていた。
「たく、だらしねぇ。なら自力で登れる奴は勝手に、つうかもう全員好きにしろ。ここは俺が見ていてやるが時間は掛けるなよ」
そうしてアーサーが見守る前で各々が壁を登り始める。その中でドワーフの聖職者であるセイスは、下からみんなの様子を眺めていた。
「拙僧は下で万が一に備えましょう。それに登り降りは不得手ですので、オリヒコ君式で昇らせてもらいます」
「手脚のリーチが短いし、そっちの方が早いか」
「理解頂き感謝致します。それにしても不思議ですなぁ。杭と壁の惨状を見るに強力な怪物が居たのでしょうが、湖の赤熊以来まったく見当たりませぬ。
攻撃的な昆虫はあれから幾匹も現れましたがね。あそこの歯型なぞ、虫の顎とは到底思えません。この砦で待機して居られる騎士団の部隊が間引いていたとて、些か少な過ぎるように思います」
セイスが指し示したコンクリート壁の箇所には、確かに大人を丸呑みにしそうな程に大きく鋭い牙によって付けられたであろう歯型がクッキリと残されている。
「さあ? そこの所はマック殿の方が詳しいのではないですかい?」
「フム、しかし普段からこういう状況という訳では無い。だが検討はつく、アーサー。君だ」
「特別何かをしている訳ではないのですがねぇ」
「ハッ、トボけやがって。初めて見た時から思っていたが、君の気配は只事ではないぞ」
「拙僧もそう思います」
「あー、グレイシャードもそんな事言ってたっけなー」
かつてアーサーとカールが初めてグレイシャードと遭遇した時の事だ。その際グレイシャードも同じ言葉で評していた。
「神域に元から棲む怪物は総じて外敵に臆することは無い。虫に恐怖心だとかがあるのか分からんが他の神域でもそうらしい。
だがこの森に限って言えば虫以外の獣は外部から持ち込まれた動物達で、基本的に草食だが虫も食う雑食性で、肉付きが良く、生き残れる程度に戦闘力が有り、そして実践訓練に適当な凶暴性のある種が選ばれている」
「先程の赤パンダは確かに特徴に当て嵌まりそうですが……食用になるのですか? 中々都合の良いのが居るもんだなー」
「品種改良のされた種もいて、それらが我々の貴重なタンパク源になるからな。だとしても、こうも影も見当たらないのは流石に不自然だ。やはり君の存在により遠ざけられていると考えるのが妥当だ」
「ただ単に数が少ないだけだと思いますがねー」
会話がひと段落した頃になると壁登りをしていた隊員達も全員が上に到着した所だった。壁に登っていない者はアーサー・セイス・マック、そして巨大ヤゴ殲滅に一時離脱したカールとレオンを残すのみとなった。
「それでは拙僧も上に参ります」トコトコ
「一時離脱していたCBB団員もそろそろ合流して来ると思われます」
「そうか。では先に登らせてもらう」ジャリ
アーサーが振り返ってUIに意識を向ける。仲間の方向を示す2つのピンがジワリジワリと左右に揺れながら動いているのがわかる。長距離を跳躍しながら接近しているのだろう。
もう一度振り返って壁を見上げると、既にマックは壁に乗っていて、セイスはキャッチミスで遥か上空へと飛んで行っていた。
「あちゃ〜」
ズザザザーー……!!
「あの壁か?」
「んん? アレってセイスさんではないか?」
そこへタイミング良くカールとレオンが合流する。2人とも無傷でレオンだけ肩で大きく息をしているようだ。
「あとは俺達だけだ、レオン先に行け」
「了解」
タッタッ、ガリ……ズドォォン!!!
レオンは2歩の助走で木杭に飛び付き、その杭をバラバラに破壊する勢いで跳躍、難なく壁を登り切った。
「………何だこりゃぁ?」
「ただの壁だ。行くぞカール、みんなを待たせるな」
「壁じゃなく……まあいいや、行けばわかるか」
カールの懸念は目の前の壁ではなく状況、近付いた時点から一帯を支配する只事ではない気配が、目に見える壁よりも強大な障壁のように感じさせた。
しかしそれ以上の警戒や敵意は感じられなかった。何故ならこの気配が自分に向けられているからではないと判断したからだ。
その気配の矛先はただ1人、アーサーに向けられている。
カールでさえ至近距離まで行かなくてはそうと気付かないくらいに洗練された何者かによる興味。殺気や敵意と言った悪感情ではないのでチラッとアーサーを見て鼻で笑ってやって、軽く身を屈めた状態から一気に壁を飛び越えた。
「何鼻で笑ってやがんだ。俺の人気に嫉妬はダセェだ…ろッ」ダン!!!
続けてアーサーも壁を軽々と飛び越える。眼下には壁上でこちらを見上げる部隊の仲間達、壁際に所狭しと集積された資材、草木一本として何も無い広場、その中央では10人程度の小隊が待ち構えている。
アーサーが小隊の正面に着地すると、小隊から3人が歩み寄ってくる。屈強な身体と強者のオーラを纏った戦士達、そして先頭を歩いているのはこの世界でも珍しい、全身板金鎧を身にまとい、その上、顔にはどこかで見た覚えのある防毒面を装着していた。
「待ちかねたよ。君が"アーサー・リッパースター"だね?」
防毒面の内側から発せられた声は、こもっていて分かり難いが女性の声だった。
人
/( ̄- ̄)\ >………一人?
(-_-)?
(;´Д`A〜〜〜
( ˘ω˘ )………
( ´Д`)y━・~~もう忘れよう




