67.(; ´∀`)≡3フゥ
「フッフッフッ、やっぱり俺の目に狂いは無かったなー。カードを使って【 魔道具職人の守護球】に【風の親友】と来ればアレしかねぇ、"CBB"だな?」
アーサーとイェンは他の団員に聞かれないように専用回線を用いた通話が可能である。イェンは独り納得しているアーサーに訊ねてみた。
『俺、ビアンカと同じく遠征した事ないから知らないんだけど、どんなジャンル?』
『どんな? 強いて言えばRPGだな。さっき見た通りアイテムや魔法なんかをカード化して持ち運べて、戦闘時やイベントではああやって具現化して使ったり、ミニゲームのカードバトルやカードの売買はそのままでやり取りする感じか。オフラインがストーリーメインで、オンラインは専らトレーディングカードバトル大会ばかりしてる保養地系のCBBだ』
『カードねぇ……デッキから選んで使ったりが面倒臭そう』
遠征とはCBB社が提供するゲームエンジンを搭載した異なるゲーム同士が、共通サーバーを通じてジャンルを越えたコラボを可能にするシステムだ。画期的なのは遠征先のアイテムを地元のゲームに持ち帰り、可能であれば使用する事が出来るという点だった。
『向こうからカードをそのまま持って来ても紙切れにプリントしたカードでしかないが、具現化されたアイテムはいくつか持って来てるぞ。まあほとんど武器なんだけど』
『他ゲーのアイテムはこっちの称号や実績とは関係無いでしょ? 無駄じゃない?』
『ハイファンタジー系だから魔法武器が多いんだなコレが♪ 魔法武器の持ち帰りが出来るようになったのは最近だけどな』
『それは良いけど、会話に意識割いてると足元掬われちゃっても知らないよ?』
『心配ご無用、もう慣れた』
機関銃による砲撃と着弾で舞う砂煙が、人為的な竜巻に巻き上げられ空には大きな茶色い雲が発生している。
「ちと巻き上げ過ぎたな……とは言え、まとめて落とすにしろ、まだまだ終わりそうにないが」
「水分を含んでいないので雨は降らないでしょうが……雷が心配ですなぁ」
「稲はとうに収穫しているし、いっそ神域に投げ捨ててやろうか」
「グラウンドの復旧の為にも手前の広場に落とすのが無難かと……」
細かい砂粒同士がぶつかり合うと静電気が発生し、小さな静電気が大量に集まると雷になって落下する。マンネリ気味の戦闘に飽きた御仁達は、そんな雲行きに目を向けていた。
そんな事とは露知らず、アーサーは焼夷弾の暑さに悪態を吐きつつ剣を振り回す。
「アッチィ! あちい! アホンダラああああ!!!」
一方、機銃掃射組もデタラメな反動をねじ伏せて引き金を握り締め続けている。
「Yeahhhharrrrrrrrrrrrrrr!!!!!!!!!!!」ガガガガガガ
Burrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrrr!!!!!!!!!!!!!!
莫大な量の弾幕を吐き出し続ける"GAU-8"であるが、その時は唐突に訪れる。
バギョッ!!!!
「ンNooooooooo!!!!????」ガタガタガタ!!
バギャッ! バン! パババン!!!
長時間の連射に耐え切れず砲身の一つが花の様に裂かれると、連鎖的に次々と真っ赤な花が咲き乱れていった。
その様を見てすぐさまレオンが注意喚起する。
『イカン! 皆、根井殿の射線から離れよ!』
「ゲェ?! ナナラ、あっちのがぶっ壊れ始めたぞ!」
「見えてる! こっちも抑えながら撃ってるけど、そろそろヤバイかも!」
『ビアンカさんは大丈夫ッスか?!』
『まだ大丈ー夫!』
ガラララララ………ドスン! プシュ〜……
「流石に射撃はスマンが正味 So bad!」
根井の銃は4挺の全砲身が裂け、弾道が破茶滅茶だったのでここでリタイアした。
続けてガタが始まったのはマヌゥの撃っている機銃だった。
ガガガガガガガガガ!!!
「うわっ?! こっちも急に振動が激しく……!?」ガタガタガタ!
「もう魔力の供給は止めたけど、もう無理だ!」
「イケる所まで………あ!?」
「うああああ!!?」ビッ!
パン! ビシッ! ババババギョ!!!
先端に取り付けた冷却装置ごと砲身が弾ける。横で補助に着いていたナナラの顔を破片が掠めて飛び散った。
「ナナラ大丈夫か?! 悪い、血が……」
「デコを掠っただけ、大丈夫」ドクドク
「バカたれ無理すんな!」
残る機銃はビアンカの物だけ。
「あ〜〜〜クソッ! 何で当たらねーんだあー?!」
「頭使え頭ー。あれだけの弾幕が通用してねーんだから、俺に当てる以外の工夫もしてみろ」ギャギャギャン!
単純に7分の2にまで減った弾丸の質量では、最早アーサーには当たらない。他の団員も小銃を発砲しているが、造作もなく全弾叩き落とされている。
剣一本で弾いた焼夷弾は、アーサーから大きく外れた地点で爆ぜる。彼が立っている場所のグラグラと熱せられた空気が、ゆっくりとではあるが冷え始めていた。
「……………やーめた」ハ゛゛ッ! ズバ゛゛゛゛!!!
「い゛?!」
ブギャギン!! ボン!
アーサーの弾き返した弾丸がビアンカの機銃に直撃、機関部にまで貫通したが最後、銃が暴発する。同時に小銃を撃っていた団員にも、わざわざ撃ったのと同じ弾丸をお返しした。
「ギニャー!?」ズザー!
「フン!」パパパシッ
「アッブねぇ……、あざっス! レオンさん」
「……この距離でなんて精度なノ、当たってたら重傷ヨ」
「それに返って来る弾の方が発砲時のよりも強力だ。私でなければ、身体欠損を覚悟する程だ」ギュウ…
「盾越しに構えとったから良えものの、一発で盾、ベコォーなってもうたがな……これは拙僧の不徳の致すところでございますなぁ……。お嬢さん達、怪我は有りませんか?」
「にゃ〜ん」
「…………………」ぶすっ
『おや……? 終わったのでしょうか?』
唐突に消えた射撃音にグィリルが窓からひょっこり顔を出す。CBB団に割り当てられた部屋からでも戦闘の様子は見えたのだが、流れ弾が偶に飛んで来るので隠れていたのだった。
「辞めだやめだ、グィリル、救急箱の準備しとけ」
『ええ?!』
「待てよ! こんだけやって何言いやがるんだ!?」ビュッ!
突然の宣言に激昂したカールがアーサーに向かって槍を突き刺す。だが簡単に手で掴み取られる。
「チィッ!」
「これ以上やっても無駄だから辞めんだよ。準備時間も与えてコレだ、あくびするほどじゃなかったからソコは褒めてやる」
「舐めやがって………!」ググググ
「頭の中でメモする余裕すらあったからな。今後の訓練方針とか考えるには有意義な時間だったぜ」
暇を持て余すような言い草に腕に覚えのある者達は憤りを覚え、そうでない者は貶されたように感じた。しかし純然たる事実としてアーサーに疲れた様子は一切無く、決定打と呼べる攻撃を与える事は出来なかった。
「まあ俺の当初の目的の"誰が一番強いかをわからせる"には十分かなーと思えたからってのもあるな」
「ふざけんじゃねえ! テメェが始めた事は最後までやりやがれ!!」
「うるせえ!!! テメーらじゃまだまだ俺には届かねーってのがよーーーくわかったんだよ!!」ザリリリ!
アーサーが足下の円陣を足で払い退ける。
「直で来な! お前らの今後の課題を"愛の一撃"と共に授けてやる! 来なきゃ俺から届けてやるがな!」クイクイクイクイクイ!
「んだこのボケエエェェ!!!」ズアッ!
アーサーの高速手招きに呼応してカールが襲い掛かる。
「カール! テメーはッ!」スハ°°°°ッ!
「なぁ?!」
カールの槍はアーサーに擦りもせずに一瞬でいくつもの輪切りにされる。
「武器とテメー自身を守る魔力制御を特訓しやがれェェ!!!」ビュッッッ
「だわばっっ!!!?」ゴギィ!!!!
「はい次ィ!!!」キョロキョロ
「……やべッ、こっち見た!」
目が合ったのはマヌゥだ。ナナラに肩を貸して移動中だった。
「ちょっとタンマ! ナナラが怪我して……」
「問答無用! それしきどうもねーよ! てことで」ハァ〜
「うわぁ?!」
「ちょちょちょ! 拳骨温めないで!?」
「鍛錬を積め!」コ゛゛!!
「ブッ?!!」
「ギャ!?!」
「以上! 次ィ!!」ダダダッ!
そうしてアーサーは団員達に"愛の一撃"と課題を伝授していく。ちゃんと聞いたのか確認する間も無く、次々に張り倒される団員達であった。
「ビアンカも! 魔力制御の基礎から学べ!!!」ズガン!!
「ぎゃー!!!」バタン
「くそっ、書類仕事がたんまり有るのを思い出したんだ、許せ……そこの3人!」
「!?」
「セィスとセーナとマナミか、まあ頑張れや。怪我人を一箇所にまとめて置いてくれ、えーと後は……」
そこへ上空から絨毯に乗ったお偉いさん方がやって来る。
「一体どうしたのかな? 日暮れにはまだ早いが?」
「これはアイズマン卿、実はですね……」
アーサーが正直に事情を説明すると、アイズマン卿以下の全員がガッカリした様子で頷いた。
「そうか……まぁ、書類仕事はキッチリしなければな、大事な事だ。うむ。だが、あのように私も協力した手前、労力を無駄にするのはどうかと思うんだが如何かね?」
「? 仰る意味がよく解りません」
アイズマン卿の視線の先には、魔法で上空に巻き上げられた砂の雲が浮いている。やがて雲は徐々にその形が変化し、木星のような球体となった。
「根井君のように、協力すれば参加する権利があるだろう? 私が上に君臨する者として君に"一撃"を与えてやろう」
「何を仰っているのですか閣下?!」
アイズマン卿の提案に彼の部下が止めに入る。他の同乗者もハラハラした面持ちで見守っていた。
「金も資材も人材も投入してここで終わってどうする。無念に終わった者どもの思いを無駄には出来ぬ」
「いや、誰も死んでおりませんし、それならば閣下がやらなくても我々が……」
「ふむ、説得する気持ちも判らんではないが、もう舞台は整えさせてもらったぞ」
「あ?!」
アイズマン卿は自分達が乗っている絨毯を操作して安全圏へ待避していた。
そしてアーサーの頭上高くには、砂の木星がその影を地上に落とし込んでいる。
「あれ程の密度と大きさになれば地上は月夜の暗さになるなぁ」
「閣下……お戯れは程々にして頂きたく存じます」
「許せ。ところでユウ君」
「はいぃ?!」ビクゥ!
「君はどちらに軍配が上がると思うかね? 私か、彼か」
「僕は……」
ユウはアーサーの方を見る。頭上の木星は、神域の大木よりも大きい。
「アーサーを信じています」
「宜しい、部下を信じるのは上の務めだ。では始めよう」
木星の下部から蛇口を捻った水の様な塊が直下へ落下する。遠目に見ても凄まじいスピードである故に、地上で見ているイェンやセィス達、根井、ラーナとルルーラ、そして屋内のグィリルは同じ表情で戦慄してしまった。
「"ダウンバースト"」
瞬き一つにも満たない内に地面に到達した砂の柱は、アーサーを一瞬で飲み込んでその周囲を吹き飛ばした。
(;@_@)>……どーしよ?
(;@∀@)>……過ぎた事はヨシッ!
(;@-@)>なので初心に帰って高評価、イイネをよろしく!




