57. ( -д-)y-・~他の連中は何してるやら
アーサーは鬼鋸を慎重に鞘に納め、それから武鋸を地面から引き抜いて同じように仕舞った。
「悪かったな。とっておきのその剣、折っちまって」
「いや……」
ガッツは『折れていない』と言いかけたが念の為にツール(非公式)で確認すると、確かに数値上では折れるギリギリの数値を示していた。
「………コレは俺の戒めの為に取って置くっスよ。驕らないように、アンタを越えられるように、強くなる為に」
ガッツは暫く折れた愛剣を見つめ、そして愛剣を光の粒子に換えて吸収した。
「ふーん。まぁ、修理したくなったら声をかけてくれや。鍛冶仕事は一通り修得してるからよ」
「えぇ……」
「あー……ダメにした時は、俺の剣一本やるよ」
「えぇぇ……?」
「ああ゛? 一本じゃ満足しねぇのか? 二本……三本も欲しいのか? 賤しんぼめ」
「いや、一本で十分スよ」
少し茶化してみたが表情は晴れない。アーサーは先達として励ましてみる事にした。
「……負けたのが悔しいか?」
「そりゃそうスよ」
「俺に負けて悔しいと思えるなら、大丈夫だろう」
「あ? なんスか、どういう意味で?」
「どうもこうも悔しさをバネに強くなれるって事さ。"外様"が蔑称と思われるのは仕方がねえけど、お前らの自称"外様"と俺達が認めた"外様大名"は、似て非なるものだ」
「なん、大名?」
「"相互アクセス"が可能なだけの弱者達と、一握りとは言え"CBBに脅威を覚えさせる強者を育成可能な環境を持った優良ゲーム"の違い、とでも言うか。"ソードオフ"は俺の仲間内でも"外様大名"として認識されている。強くなれるさ」
「………慰めのつもりかよ。結局、上から目線の説教じゃないスか。そんなの、聞いたことない」
「オフレコだもん。あ、考えたのは俺じゃねーぞ。文句があったら松千夜に言ってくれ」
松千夜とはCBB総合ランキングの現トップに君臨するプレイヤーの名前である。一流のゲーマーで他のゲームの配信や大会等での活躍により、その知名度は世界的に認知されていた。
そしてその名前を聞いたガッツは、鳩が豆鉄砲を喰らったような顔をしていた。
「………かっ"格ゲー大名"スか……たかがCBBよか、よっぽど大物じゃないスか」
「たかがは余計だ」
「……でも………まあ、どこに居るのかも分からない大物に文句言える筈も無いし、うん……アンタの言葉はその…、アドバイスとして受け入れるよ」
どうやら激励は届いたようで、苦笑いながらも表情は幾分マシになった。
「おう、そうか」シュボッ
「え? 今から吸うんスか?」
「一服だけさせてくれ。向こうにゃ、うるせーのが居るんだよ」ホワホワ
「へぇ……じゃお先に失礼」ブンブン
「……アイツも嫌煙家かよ」
ガッツが煙を払いながら去った後、アーサーは神域と呼ばれる森の奥へ目を向けた。見える範囲だけでも巨大な樹木が何十本も立ち並んでいて、本当の奥地は物理的には見えていない。
しかし、アーサーの超人的な感覚は、その最奥にいるであろう何かの気配を感じ取っていた。
「〜ッ……ハァー……………空気美味え」
「『美味え』じゃなくて早く戻れってお達しスよ」ブンブン
「まだ居たのか?」
「一応と思って審判にこの事伝えたら、あからさま不機嫌に連れて来いって」
「よりによってうるせー奴に伝えやがったな」
「え〜……」
グラウンドに戻ると観客席の解体作業が既に始まっていた。観客も軍人が多いからか、規律正しくさっさと撤収している。
ダラダラ屯ろしている連中は、外部から呼んだ傭兵団の連中であった。
「興行的な側面が強いとは言え、たかが歓迎会で重軽傷者が半数以上。大事を取ってこのまま解散だが、後日、参加者にはアイズマン卿から褒賞が贈られるだろう」
「敢闘賞ってヤツッスね。俺が半年前に貰ったのは金一封だったっけな」
「ところでアーサー、どうやら貴様は五体満足な様子だし、後でアイズマン卿の執務室に来い。以上だが、質問が無ければ解散とする」
「一体何の用だ」
「覚えが無い訳でもないだろう。そうだ、後で人を遣ろう。忘れられては困るからな」
「……了ー解」
「ふぅ、じゃあな」
溜め息一つ吐いてから立ち去るグレイシャードを見送ると、残された二人は互いに向き合い、別れの挨拶を交わす。
「じゃあまた近い内に」グッ
「またな」ガッ
アーサーとガッツは拳をぶつけ合い別れた。
( @∀@)っ/ 今回も解説とかしようかな!
次回が気になる場合は飛ばしちゃうのをオススメするよ!
その2. CBBプレイヤー(松千夜)による他ゲーへの格付け
( @∀@)<この格付けを考案したのは"格ゲー大名"の異名を持ち、CBBの現役トップのプレイヤー、その名も"松千夜"という男だよ! その異名通り格闘ゲームを中心とした対戦型アクションゲームに精通する彼が、CBBに対する他ゲーの脅威度を独自に付けた目安だよ。
( @∀@)<以下は危険度の低い順に示した一覧だよ。
・保養地/争いの無い別ジャンルのゲーム。主にほのぼの育成ゲームやクイズゲーム等
・観光地/気を抜くと危ない別ジャンルのゲーム。主にレースゲームやリアルタイムストラテジーゲーム等
========危機意識の有↓無↑========
◇外様/対戦型アクションゲームであるが大した脅威にならないタイトル。世間ではコレが蔑称として広まってしまった。
========= 要 注 意 =========
○外様大名/ごく一握りだけであれどCBBを脅かす勢力。ジャンルとしてはCBBと同じが多い。
○譜代大名/主に実銃の登場するFPSが該当する。CBBの中堅下位ではそんなに太刀打ち出来ない。
========†生 存 戦 争†========
◎守護大名/派手で高威力の魔法やスキルが多数実装されていて、CBBと違い遠距離攻撃手段に制限が無い。ハイファンタジー系の他に明らかに調整をミスしたバグゲーも該当する。CBBの上位勢にとっての好敵手。
◎戦国大名/文明がCBBよりも遥か彼方に位置するゲーム。巨大ロボや巨大怪獣、宇宙世紀の戦争ものの他にカスタムマシンAIバトル等が該当する。
======== ☆ ネ タ ☆ ========
☆黒船/戦う以前の問題。キャラゲーの推しキャラに刃を向けるなんてとんでもない! 主にコラボする企業によるが、対戦型育成ゲームの可愛いキャラにとんでもないことが出来た際には、両社共に株価がとんでもない目に遭った。




