55.(-∀-)ハァーーー
ミリミリミリ……スゥーーー………
「……ブハアアァァ〜……」
グラウンドから整備班が撤収して暫くしてから、アーサーが煙草を燻らせながら帰って来た。
「戻って早々、めちゃくちゃ深呼吸キメてんなヤニカスこの野郎ー。なーに言われたんだー?」
「大した事じゃねーよ。………お前の気にする事じゃねぇ……」
アーサーはアイズマン卿を除く上層部からの呼び出しを受けて出向いたところ、イェンが壊した強化外骨格について説明を求められていた。要するに損害賠償を請求されそうになったのだ。
結局、当事者のブラックによる取り成しと後から来たアイズマン卿の鶴の一声で不問となったが、誠意として代わりの戦闘服の提供を約束したのだった。
イェンの勝利にケチをつけられた様なものである。アーサーは非常に不機嫌だった。
「ハア、良しッ! 血祭一丁上げて来らぁ」
「アタシが言えたもんじゃないけどさー、その格好で出るの?」
「気合い入ってるだろ?」ポイッ
吸い殻を自分の鞄に直接捨てて、両肩を回しながらグラウンドに向かうアーサーにカールが声を掛ける。
「おい、じじい。言う通り、共有枠にスーツ突っ込んでやったぞ」
「スマンな。後で金、振り込んでおくよ」
「ケッ、負けたらぶっ殺してやる」
「ʅ(◞‿◟)ʃやれやれ」
アーサーがグラウンドに足を踏み入れるのに合わせて相手側もやって来る。
身長こそアーサーには及ばないが、よく引き締まった身体つきをしている。
膝下まである編み上げブーツ風の黒い地下足袋に黒い短パン、ピッチリサイズの黒いTシャツには正面に『勝つんだぁ。』と白字でプリントがされており、肩には金属製のショルダーパッドがサスペンダーと一体になって付いている。わざとだろうが両腕は黒光りする日本式の小手を嵌めて際立たせていた。
「……締まらねえなー」
「いや、その顔でその格好の方がウケ狙いでしょ?」
「闘いの装束つったらコレに決まってんだろうが」
そう言うアーサーの格好は逆に白で統一していた。
ズボンの裾を地下足袋にインした上に白帯でグルグル巻きにしており、上半身は腹にもサラシを巻いて肩に特攻服を羽織っただけだ。背中から見ると、黒い刺繍で大きく縦に『死(C) 毘(B) 火(B)』と書いてある。
更に額には白いハチマキに『夜露死苦』などと書いてあった。
そして腰の得物とそれを保持する為の革ベルトはピカピカの漆黒だ。
「ほれ、靴はお前に合わせてやったぜ」トントン
「いやいや、合わせたのはこちらの方ッスよ。"アーサー・リッパースター"さん。それと、俺の名前は"アルバレスト・ガッツ"だ。よろしく」
「ほう、外様のプレイヤーに名前を知られるとは、俺も有名になったもんだ」
「"外様"ね……て事は、俺があんたらとは違うっつーのを知っているんだな」
「そりゃ、そんなダサいTシャツ着てんだから察しはつくだろうよ」
「アンタ程じゃないさ」
「………貴様ら同郷なのか? 随分と平坦な発音だ」
遅れてグレイシャードが歩いて来ていた。定位置で立ち止まるが、アーサーとは一歩遠い。
「同郷かというとちょっと違うけど、言語圏は同じだな」
「ほう、そうか。ではお喋りは終わりだ。武器を構えろ」
「んだよ、お前が聞いてきたくせに」
「その臭い口を閉じろと言ったんだ。試合を始めるぞ」
「(#^ω^)あ? お前から張っ倒してやろうかグレイシャード?」
「ちょっとタンマ、俺を放って乳繰り合いを始めようとすんじゃねえよ」
「黙れ。貴様ら失格にするぞ」ジャキン
「おー怖。俺はいつでも始めて構わんぜー」
「……チッ、舐められたもんだぜ」
アーサーが腰の得物を抜こうともしない様子に気を悪くするガッツ。そんなガッツの目の前の何も無かった空間に四角形のウィンドウが表示され、その更に小さなものがいくつか開いて閉じてを繰り返すとガッツが右手を前に突き出す。
突き出した手の平から光の粒子が迸ると、突如その手に鉄塊のような大剣が現れて地面にめり込んだ。
「CBBの連中が他所の連中を"外様"とか言って下に見てんのは承知してるがよお」
ガッツの言葉の途中でグレイシャードが手を振り下ろす。試合が開始された。
「ここを遊びと同じだと思ってたら痛い目見るぜー!!」
ドォーン!!!
「………は、はぁ???」
大剣を人間に叩き付けたとは思えないような音と手応えにガッツは素っ頓狂な声を上げる。
なんとアーサーの腹に叩き付けたはずが、1mmも後退させずにピタリと止められていた。
仁王立ちで受け止めたアーサーは徐に大剣の刀身を掴み、引き寄せてその柄元に手を伸ばした。
「ふ〜、外様相手とはいえバフなしでは流石に受けねーよ。それに、お前だってまぁだ武器を抜いてねーに俺の宝は見せられねーよっと」ギュゥゥ
「何すんだ?! 離せよ!」グイッググ…
ガチン! ズー………ズラッ
仕掛けが外れる音で大剣の中から、少しだけ短い、大剣と比較するとかなり細い両手剣が抜き出てきた。その刀身にはルーン文字が神々しく光り輝いている。
「あっ!? クソッ、とっておきだったのに!」
「こういう仕掛け武器は腐る程見てきたし、構造もどこも似たり寄ったりなんだよな。さて、鞘からとっておきの武器を抜いたんなら、俺もとっておきの武器を御披露目しねーとなー」ビュンッ
ガランガランガラァーン!!!
「戦いの前にこんなにゆっくりしてられるのも久しいなぁ」スッ
アーサーが手に持っていた鞘モドキを投げ捨てて、腰の大小拵えの太刀に手を添える。慎重に鯉口を切り、右手に鬼鋸、左手に武鋸を握って一切無音のまま二本同時に抜刀。
鬼鋸と武鋸は、刀身の長さこそ違えど見た目は瓜二つ、付属品である拵えまで一緒、であるのに見る者の感じた印象は正反対だった。
鬼鋸を抜き放ち、ゆっくりと弧を描くように下ろし切るまでに、刃の軌道上の虚空がスッパリ斬り裂かれる様を皆が錯覚する。まさに妖刀と呼ぶに相応しい姿。
一方で武鋸はその陰に隠れて誰にも何とも感じさせない、寧ろ数秒経つまで抜いたことに気付かれなかった。
「この大太刀、趣味は闘争。好物は新鮮な血肉。彼女の銘は"鬼鋸"ちゃん、鞘内で走らせても傷付く俺の箱入り秘蔵っ子娘だ。そしてこの小太刀、忍耐力で並び立つ物他に無し。不朽武器の祖として生まれたその銘は"武鋸"。俺の持つ、最上大業物だ。宜しく」
「………あー、何ていうか、たかが武器に"ちゃん"付けして娘とか正直キモいっスね」
「ふふーん、よく言った。ブチ殺してやる」ジャリ…
「く……!?」ザッ!
アーサーが爪先の向きを微調整した音に反応して大袈裟に飛び退くガッツ。しかし距離を置いたつもりでも、まだ安全圏ではないと理解していた。
「不安なら今の内にバフ掛けとけよ? 流れ的に短期決戦は寂しいからな」
「チッチッ! あー確かにソッチは準備万端で、コッチは有名人に会える喜びに浮かれるばっかりっしたっスね。イヤ、悪い悪い」
そう言うとまたガッツの目の前に四角いウィンドウが表示された。それを見たアーサーは我慢出来なくなって飛び出した。
「ハイ、ドォーン!!!」
ガゴォーン!!!
「んぶぁーーー!!??」ゴロゴロゴロ
ガッツはウィンドウごと顔面を足蹴にされて吹っ飛んだ。
「オイオイ、不用意に視界を遮る物を目の前に出すな、せめて横か斜めにしろよ」
「〜〜〜ッの野郎!!」
「顔の前にウィンドウ画面出して視界を遮ってるんだから、罠だと思うに決まってるじゃん?」
「だったら来んじゃねえよ!」ドロッ
怒るガッツの鼻から血が垂れる。
「ん〜? 釣り針のエサにしてはデカ過ぎると思って、敢えて引っかかってやったんだけど?」
「真面目にやるかふざけるか、どっちかにしてくれ! フンッ」ビュッ
「あぁん? 俺はいつだって勝利に向かって真面目一本だぞー。ま、今の手応え的にバフの方は出来たんだろう? ぼちぼち始めるか」スゥー…ピタッ
武鋸を中段に鬼鋸は下段の構えで動かないアーサー。
「?」
「ほら、来いよ。どんなモンか試してやる」クイクイ
「ッ……年長面してんじゃねーよ、おっさん!」
"岳割"
ギイイィィン!!! ボウン!
剣を肩に担いだ構えから素早く袈裟懸けに刃を振るうガッツ。それに対して剣を振り切るより素早く前に出て武鋸で防御するアーサー。
アーサーの横を衝撃波が通り過ぎて土煙が舞う。
「来いっつったのに俺が行っちゃったじゃねーか。範囲攻撃は結構だが、立ち位置考えろ」
「心配しなくても自分の射程距離は熟知してるよ。余裕こくのは結構……だが、いつまで続ける気だオラァ!」
"付与術・翔念刃"
ガッツが自分の剣の鍔を指でコツン、と一叩きすると剣の表面が薄い透明な膜に覆われた。よく見ても分からない程度の違いでも、アーサーの動体視力と観察眼ならば一瞬で看破してしまう。
(ふむふむ、'岳'を'割'るのに比べれば、何段階も下位の威力のスキルか? でも単発じゃなくて付与って出てるから、効果時間中は連発もあり得るか。ここに来る前に見たスキルは高威力の飛ぶ斬撃を連発してたが別の名前だったけど、まぁ受ければ分かるか)
(CBBと同じ物理エンジンを流用した類似ゲーム、だから"外様"。細部のシステムや諸々は違うけど、UIとかに似た部分があるからして、俺が使うスキルもエリアチャットだかでバレてんだろう。名前だけ。でもどんな効果かは分からねえだろ! 付け入る隙があるとすれば、ソレだ!)
ここからアーサーとガッツの戦闘が本格化していく。
( ´∀`)ん〜何しようか。
あ、よければ下の方で評価・いいねをしてね




