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C.B.B.NEW FACE  作者: 怠慢兎
第一章・顔合わせ
54/83

54.ま、いっか( Бд`)ゴシゴシ…

 試合の結果は当初、ブラックがまだ生き残っている二人のイェンに消滅魔法を行使した瞬間、アーサーがこれを阻止した為にイェン側の反則負けになる筈だった。

 もしもあのまま魔法が直撃していたならば、イェンは確実に即死してブラックが反則負けになっていた事だろう。

 それを踏まえて審議の結果は引き分けで決着がついた。


 現在、多数の人間があちこちでバタバタと忙しく走り回っている。


 怪我の容体はどちらも深刻だがイェンもブラックも、奇跡的に意識を繋ぎ止めているらしい。

 ブラックはともかく、イェンは失神した瞬間に術が解けて奥義の反動ダメージにより十中八九死亡する恐れがあるので、死に物狂いで頑張っているようだ。


「君は冷血剤を有りったけ準備してくれ、今有る分の投与は移動しながら行う! 直接神官棟へ向かうぞ、急げ!」

「了解!」


 救護所で待機していた医療班はユウを残してもれなくブラックの治療の為に医療棟と神官棟に向かって行った。


 一方、グラウンドでも多数の人員が軍隊アリの如く、駆けずり回って騒然としている。


 その中には試合後に治療も受けた後で、観席の部下の所へ移動して居たウィル・ゴードン中尉とシャトル・サンジェルマン軍曹も混じっていた。

 両者共に絶対安静にしていて欲しいくらいに包帯でグルグル巻きの姿だったが、お互いを支え合いながらも元気いっぱいに指示を飛ばしている。


「死体を運ぶのに人手が足りないだろう。我々も手伝うぞ!」ガクガク

「「「トェェェェェイ!」」」

「それは結構ですが中尉、試合後の我々は足手纏いなので指示だけにして下さい」プルプル

「んな事わぁってらい!」


 グラウンドにはイェンの分身の死体が大量に残されている。首を折られた者からバラバラな者まで様々な死体が転がっているが、幸い、イェンが最後に使った魔法のお陰で地面や死体の衣服は血の一滴も汚れていなかった。


 お陰で整備班の仕事は地面の均し作業とブラックの放熱で溶けた部分の掃除、それから彼が身に付けていた強化外骨格の撤去にまで搾られていた。

 所がここに大騒ぎする連中が居た。


「うわあああ!? 聖鎧がなんて無残な姿にー!!?!!」

「ハァ〜、これ廃棄処分かも」

「バアアアアアアアアア!!! 絶対修理するんじゃああああああ!!!!!!」

「駆動系が溶けてるんで頑張っても良いトコ、素材のリサイクルでしょう」

「ビャアアアアアアアアアアアアアあああああ!!!!!!!!!! ハッ!」ガクン

「うわあー! 貴方まで壊れないで下さいよ面倒臭い! 誰か聖鎧を工房に持ってってくれ! ちょっとコイツの気付に神官棟へ行ってくる」

「ノームさん、隊長にコイツはヤバいっスね!」


「うるっせーなー? 近くに怪我人が居る所で静かに出来ねーのかよ」


 仮説テントの救護所には、ユウ、アーサー、カール、ビアンカと、担架に寝かされた二人のイェン達しか居ない。

 どちらのイェンも致命傷を負い、動くことも返事をすることすら不可能な容体である。辛うじて呼吸はしていても、虫の息というやつだ。

 鎖を使っていた方は脊椎を踏み潰されており、刀を持っていた方は鎖骨と肋骨ごと肩口からざっくりと切断されている。


「はぁ〜。新人一人放りやがって、薄情な連中だぜ」

「人数が少ないので……僕はイェンさんが大事なのでまあね。そんな事より、両者共、運んでくれてありがとうございます。それとアーサー、ここは禁煙です」


 流石のユウもこの状況にはご立腹の様子だ。八つ当たり気味にアーサーを咎めている。


 そして、ここで一つの問題が発生していた。


「うーん……(パーティ)用UIでは、どっちもイェンなんだよなー?」

「術は解けてねぇから、生きちゃいるんだろうけどよ? 本当に合ってんのか?」


 二人のイェン、そのどちらが本物かまだ判別がついていなかった。


「大丈夫だ、その斬られた方が本物のイェンで間違い無い」


 だがアーサーは自信たっぷりに刀を使っていた方を本物だと断定する。その根拠は、使っていた武器にあると言う。


 一見するとただの日本刀。鋸刃のようなギザギザの刃紋が特徴的な、逆に言えばそれ以外は平凡な代物である。


「この刀はな、世界に一振りしかない特別な代物で、皆の為の御守り代わりに共有枠に置いていたんだ。俺にとっても親父(オリジナル)にとっても、思い出深い小太刀なのさ」


 アーサーは抜き身の刀を手に取ると、鞄から黒漆塗りの鞘を出して納刀し、死に掛けのイェンの隣に置いた。


「俺や親父はこいつを"武鋸(たけのこ)"と呼んでいる。巷では"守護利(まもり)刀"とか"バグ刀"とか"禁止刀"とか……etc」

「"タケノコ"………へー」

「親父の大事な物なら、俺達だって無意識にでも手に取ってしまう筈だ。だからこっちが本物なのさ」

「何が『なのさ』だ。親父(ベース)のコピーが俺達なら、イェン(コピー)のコピーも同じ選択をするだろうが」

「ああいう術の第一選択権は、術者本人が最優先だ。だから、間違い無いの'さ'!」

「わかったわかった」

「ではこちらのイェンさんを先に手当てしますね。万が一間違っていて、処置を後回しにした方が亡くなって、死体(ホンモノ)を残して全部消えてしまわないよう、祈っていて下さい」

「縁起でも無ーけど、コレばっかりは頼むぜユウ」

「(´•ω•`)え? 俺の信用、低過ぎない?」

「一刻を争うので、本気で行きます」ギュ


 処置に必要な道具一式は既に机に並べてある。

 そしてユウによる手術が始まった。


( ;`•д•´)つ† 凄ぇ抗生剤〜! どぴゅっ!


( ♯`•Å•´)つ※ 強い消毒液〜! ヌリヌリヌリヌリヌリヌリ


( *`•ω•´)つやべぇ傷薬〜! ぺとぺとぺとぺとぺとぺとぺと


(o`•∀•´)つ〆 見えぬ縫合糸〜! プススススススススススス


( `°∀°´)つ又傷薬〜! ドバババババババババババババババ


( •_•)っ旧 包帯…………………………………………よし


 手術は成功だ!


「峠は越えました。イェンさん、起きてみて下さい」

 ガバッ

「(´TДT`)うぇろぶをへぶぅえい!」ゲロリンチョ


 ユウの言葉に反応したイェンの開口一番は、激しい吐血だった。


「胃に溜まってたんでしょうね。無理せず吐いちゃって下さい」

「へぅえう、そへよい( れ り)……」

「これですね。ハイ」プス、シュ〜

「ョキュッ!」


 イェンの心臓に打ち込まれたのは、CBB謹製の体力回復(ヘルスリカバリー)インジェクション。その名の通り体力を回復させる注射器である。


「どぺぺぺぺぺほぅおーーーわーーーうぅぅんっんーー!!!!!!!」

『これで安心して奥義を終わらせられる』ホッ


「どういうテンションなんだ」

「おー、死に損ないが消えたぞー」


 放置されていたもう一人のイェンが、黒い霧となって虚空に消えるのを見た気がした。それは一瞬の出来事だった。


「良かった〜、本物のイェンさんで本当に良かったです」グス


 同時に、グラウンドで撤去作業や死体運びをしていた人員の驚く声も聞こえた。


「あっ! 消えた!?」

「魔法だったのか、いや魔法の筈だし時間切れか? 何にしても、本物の死体じゃなかった訳だ。良かった良かった、お前ら席に戻れ!」ガクガクガックン

「「「トェェェェイ」」」


「ごえほぼ!」ゴボッ!

『ぐはぁ!』ビクン!


 術を解いた反動でまた吐血するイェン。そのまま気絶するかのように眠ってしまった。


「_(´ཀ`」 ∠)……zzz」

「まだ育ち切ってねぇのに"奥義"なんて使うから……」

「え、そーなの? 無茶するなー」

「オメーは奥義の事、ちっとも知らなかっただろうが」

「さてと、色々ありましたが、残りの試合は貴方だけですね。アーサー」

「ああ、任せろ。"武鋸(コイツ)"で勝って来る」ガシッ


 アーサーは武鋸を手に取ると、二重のベルトの間に佩て、そこへもう一本の黒い太刀を加えた。この2振りの拵え(デザイン)は長さ以外、瓜二つと言っても過言ではない。

 それを見たカールがその正体を言い当てる。


「"不朽武器(イモータルウェポン)"か」

「正解。公式大会なら反則だが、全力を出すならコイツらじゃないとな」

「何ですか、その"イモータルウェポン"とは?」

「耐久値が減らないタイプの武器だ。正確には、その武器の"最も正しい使い方"をしている限りだな。


 例えば、刀剣なら刃筋を立てて切るのが最も正しい。それ以外の峰打ちや(しのぎ)で防御をするのは、間違ってはいないけど"最も"正しくもない、だからその場合は耐久値が減ってしまうという訳だ」


 ユウの質問にアーサーが答える。ビアンカも初めて耳にしたのか、興味津々の様子だ。


「早い話が、ちゃんと使えば壊れない武器だ。上位ランカーでも持ってるヤツはかなり少ないけど、入手に成功したのは俺が最初だ」

「へー! スゲーなあ!」

「ふふん、そしてこの武鋸をプロトタイプにして生まれたのが、この"鬼鋸(キノコ)"だ」

「キノ…コ?」

「不朽武器シリーズ第一号にして、実は親父が考えた、いや協力? ………何にせよ開発に関わったらしい。鬼鋸とは別で、武鋸はその記念に貰ったってよ」

「第一号? では他にもいくつかあるんですか?」

「おー!? それじゃーさ、トンファーの不朽武器とか有ったらくれ!」

「ああ良いぜ、打撃系が一番緩いから、ビアンカでも扱えるだろうし」

「やったー! ……でもってどういう意味だ?」

「……貴様ら随分と愉快そうだな? こっちはそれどころじゃないってのにな?」


 声のした方を振り返ると、そこにはグレイシャードが腕を組んで立っていた。生乾きなのか少し臭う。


「相手の副団長さんの容体が、そんなに芳しくないのでしょうか?」

「おや、ユウさん、てっきり医療部隊と行動を共にしているのかと……ああ、お気になさらずとも、ブラックさんなら怪我も治って今は、失くした腕を義手にするか再生させるかで悩んでる所ですよ」

「え……再生? そんな簡単に出来てしまう事なのですか?」

「ええ、完治には時間が掛かるかも知れませんが、十年ほどで元に戻るでしょう。それは良しとしてアーサー、ちょっと来い」

「ちょっとだけよ?」

「?」イラッ


 失った腕が数年で再生可能というのは確かに衝撃的であったが、グレイシャードほど鼻の効く男がユウの存在に気付かなかった事の方が驚きだ。

 ユウはその事について反射的に話題を逸らしたが、そんな事で僅かにでも時間を取らせた事に、余計だったな、と反省した。

(´-д-`)ふあ〜あ、よく寝た

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