45. ((( ・Д・)っ)•A•;)
「只今の時刻午後6時をお知らせしまーす! これより、ベイバード騎士団 VS 新入りアーサー一行の歓迎試合を行いまーす!」
「「「ウオオオォォォ!!!」」」
ベイバードに所属している職員たちの歓声が挙がる。
昼食会から1時間後、隣の砦から急な来客があったそうで、喫緊の用ではないが重要な話らしく、その所為で試合は少し延期せざるを得なくなった。そして、この数時間で時間的都合が良くなった職員が大幅に増えたので、結局試合は屋外で行う事になった。
砦の裏側にある訓練場及び神域開拓前線広場には、豊富な人員により観客席を設けた試合場が整備された。尤も、訓練の一環として未開の地域でも素早くインフラを構築する訓練を受けている兵達にとって地面を均したり階段状の足場を組む程度は朝飯前で、部隊毎に競ってより多くの人員を載せられるように馬鹿げた高さの鉄骨足場が幾つも出来上がっていた。
「この数時間でよくこれだけ人が集まったもんだなー」
「夕食が終わって自由時間と重なったのも影響してますな。コレでも夜勤の兵士や残業の職員を除いても全体の半分でしょうな」
「日を改めてとは考えねーのかね?」
「公務であればキチンとした手続きが必要でしょうな。ですが不測の事態に備え、いつ何が起きても即応する為に、偶にこういった事を訓練の一環と称してやってしまうのが、アイズマン卿という人なのですな」
「部下にとっちゃー、たまったもんじゃねーな!」
「そうですな。ただし、設営に参加出来るのは正規職員のみで、貴方達のような誘致雇用者、つまり外部の傭兵団や教会の医療従事者は階級にも依りますが、基本的に観覧と設備利用に料金が必要となりますな」
「ハァ? じゃあウチの者はここに自腹切って来なきゃならねーじゃねーか?!」
「落ち着きなさいな。たった15人程度の小規模傭兵団なら初日くらいは目を瞑ってくれるでしょうな。その証拠に、彼方をご覧下さいな」
「オーイ! 姉さーん!」
近くの観客席の中段辺りに団員達が固まって座っている。声の主はラーナだ。
ビアンカはラーナとルルーラには特別に、入団祝いと称してワイヤレスヘッドセットを渡していたのでそれを付けた。
『何でこんな事になっているんですか?』
『んーと、成り行きでこうなった』
『成り行き…もうちょっと詳しくお願いできませんか?』
『んーだいぶ時間経ってるからなー。でもまぁ、売られた喧嘩を買っただけさ。年俸査定で有利になるように頑張るよ』
『あはは、なら大丈夫ですね。姉さんが負ける訳無いですもん』
『おう』
「……頃合いの様ですな。スケジュールはお伝えした通りですが、もう用はございませんな? 健闘をお祈りします。ではな」
サゾがビアンカ達から離れて行くと照明が落とされた。
「それではこれより試合に参加する選手の紹介を致しまーす! まずは派手な前評判をぶら下げてやって来たァ!(何? "アーサー一行"じゃなくて"ユウ一団"? うるせぇ! ややこしい!) んん゛四人の強者達ィー!!」
拡声器もなしにどんな歓声よりも耳を劈くような大声量で選手紹介が始まる。
「豪快な噂は大体コイツ! 壁も地面も何でもブチ抜く!
"豪槍 カァール・B・ヌゥ〜アラー"〜!!」
「名前伸ばし過ぎだろ。うお?!」ビカー
名前を呼ばれたカールにサーチライトが当たる。どこからかと見遣れば、観客席よりも高くに設営された物見台から、目の潰れかねない物凄い光量が照り付けている。
因みに選手紹介をしている者もそこから声を張り上げているようだ。
「あんなモンまで用意してやがんのか? あ、消えた」
「続きましてぇ、コチラもパンチの効いた話を聞いた! なんでも走る装甲車を殴って止めてタイヤを千切ったっつー話! 男を震え上がらせる腕力に乙女心も震える!
"豪腕 ビアンカァー・フォールゴォーレ"ェー!!」
「ヴー! 眩しィ!?」ビカー
次にライトを浴びせられたビアンカは腕を組んで仁王立ちしている。眩しくて顔が酷く歪んだ。
「キャー! 姉さーん!! 応援してまぁーす!」
『うん、ありがとー』
「さて、次に紹介するのはぁ! 情報が余りに少なく未知数、影に隠れて突如現れたと噂されるが実力や如何に?!
"イエェーン・タァッフオオオォー"!!!」
ビカカカー!!!
「ぬお!?」
「うわー?!」
「眼があ!?」
イェンが居るであろう場所が照らされるとそこには全部鏡貼りのオブジェが佇んでいて、ライトが迷子を探すように動くと、反射した光がアーサー達や観客席に跳ね返っていった。
しかしオブジェはひとりでにくるりと回ると、それが確かにイェンであると主張するのであった。回ると光は更にあちこちに乱反射する。
ライトは即座に消された。
「なんちゅー奴だ。気を取り直して、四人の内の最後の刺客ゥ! 世間は知らぬが同行していたあのグレイシャードがその実力を保証した! 撃った強装弾を全部斬り伏せたってんだから、そりゃもう化け物だ!
"剣豪 アーサー・リッパースタァー"!!!」
「ま、せいぜい"万年門番"の腕を見せつけ…滅茶苦茶眩しいなオイ」ビカー
ライトに照らされると同時に拳を掲げると歓声が挙がる。耳を傾けるとその内容は挑戦者に向けた応援のようだ。
「のもす」
『あれ? 二つ名アーサーにも付くの? 俺のは?』
「隠密向きって認知されてんだろう。ガンタルトもそこら辺、配慮してはぐらかしてくれてたもんな」
「かぁぺッ」
『俺の相手舐めプ確定じゃね?』
「さあさあさあ! この鳴り物入りでやって来た戦士を迎え撃つ、我らベイバード騎士団の歴戦の猛者達を紹介しましょーう! さぁあ! 一人目ェー!」
アーサー達は広場と観客席の中間で待機していたが、対戦相手は広場を挟んだ反対側で待っているようだ。
サーチライトが広場の向かって奥側中央に注がれる。そこには誰もいないが、名前を呼ばれた者がそこへ躍り出るスタイルのようだ。
「『身体が丈夫が取り柄』と謙遜しつつ、誰よりも神域の奥深くへ突き進んだ実績のある正に、鉄人! ベイバード騎士団ローガン中隊所属ゥ!
"鉄筋中尉 ウィル・ゴォーードゥーン"ンンン!!!」
「「「トェェェェェェイ!!!!!」」」
独特な掛け声に応えて出て来たのは、首周りがかなり発達した筋肉を持つ月代ハゲ(こめかみから後頭部へ線を引いたとして、線より上がツルっ禿げ)で、残った髪は余程大事に手入れされているのかサラッサラのロング茶髪を一房に纏めて垂らしている。左頬骨から右耳に架けた古傷が威圧的ながら、ニカッと笑う顔の皺の具合から推測するに齢40代と思われる。
「トェェェェェェイ!!」ムキィ!
「「「ワ〜〜〜〜!!!」」」
ぴちぴちのタンクトップ姿で奇声を上げながらパンプアップする姿に歓声が揚がる。男女比率が偏っているので野太い声が多い。
「ハァァァァー〜……トェェェイ!!!」ビリィ!
最後に筋肉膨張で服を破ると満足して引っ込んだ。
「………ステロイドの他にシoブでも食ってんじゃないか?」
「知らん」
「因みにゴードン中尉には今年頭に3人目のお子さんが産まれておりまーす。そしてぇ!! 次に紹介する男はなんとォ、中尉の長女と婚約中だぁー!!」
「負けたら破棄だ!」
「お義父さんそんな無駄な…」
「つべこべ言わずに行けェェェイ!!!」ドガッ!
「ぉおっとと、眩し?!」
暗がりから文字通り飛んで来た男は、金髪の坊主頭でシャツから露出した腕や腹は剛毛で覆われている。そいつはライトの眩しさに顔を背けて、逃げる様に引っ込んだ。
「まだ紹介終わってねーだろぉが戻れ馬鹿タレェ!!! お義父さん連れて来て下さい!」
「貴様に『お義父さん』と呼ばれる筋合いはねェェェ!!!」
「解りました! わかりましたから!」
とぼとぼと歩いて来てからすぐ、胸を張って前に出て来た姿は別人のように精悍だ。身長はアーサーと同じか少し下程度、顔の掘りが深くタレ目で右眼の下にホクロがある。
「コイツは開拓作戦に於いてメキメキと頭角を表しつつある新進気鋭の一番星! 去年、騎士資格認定試験では、神域の魔獣の討伐を以って合格と相成りましたァ! 同じくベイバード騎士団ローレル中隊所属!
"穿孔軍曹 シャトルゥー・サンジェェェルマァーン"!!!」
("シャトル・サンジェルマン"です)
ボソッと訂正した一言は、遠いのと歓声で誰の耳にも届かなかった。
「オラッもう引っ込め次行くゾォォォ! ンオッホン! 神域開拓で最も危険で重要な任務、"神獣討伐作戦"に幾度も参加し五体満足で帰還している歴戦の猛者中の猛者ァ!! 今回は専用装具の修理中で任務が無いので、都合が良いとの事で参加して頂けるそうです! ベイバード騎士団副団長ォウ!
"死線跋扈のブラック・ヴェルギリウス"ゥゥゥ!!!」
「「「オオォォォワアアアアアー!!!?!」」」
「やあやあやあ、どもどもども」ひらひら
片手を振りながらズボンのポケットに手を突っ込んだままふらりと現れたおっさんは、漆黒の短髪が同色のもみあげと口髭とに繋がっていて、眉毛も頭と同じくらい濃くて野太い。加えてずんぐりとした体型であるのに、その動作は山猫のようにしなやかである。
飄々とした口調とは裏腹に眼光は鋭く、まるで猛禽類のような戦意に満ち満ちた視線をアーサー達に向けている。
「ビアンカはどうだ? あのオッサン」
「……立ち止まって殴り合いなら負けねーなー」
「カールは?」
「無力化で済ませる自信はねえかな」
「うんぽぽ」
『弱気だねえ? まあ俺もなんだけど』
「弱気じゃねぇ、余裕だ」
「そして最後はぁ! 半年前、彗星の如く現れた傭兵団"バレルガッツ"の若き団長ゥ!! 今日と同じく、当時の歓迎試合ではなんと騎士団長と闘い、互角の戦いを魅せ付けてくれたぁー!!! その後の開拓任務でも、他の傭兵団より抜きん出た活躍を見せているぅー!! バレルガッツ傭兵団団長ゥ!!
"雷鳴のアルバレストォ〜・ガァーッツ"!!!!!」
「「「ドゥオラアアアアァァァー!!!!!」」」
ユウ一団が座る観客席から二つ隣の観客席から、示し合わせたかのような怒号が一斉に揚がった。十数段ある席の全部が件のバレルガッツ傭兵団で埋まっていて、ユウ一団よりも規模が大きいのは火を見るよりも明らかだ。
そしてライトの中へ現れたのは、これまでのゴリゴリの筋肉達磨達と比べても細マッチョと言えば良い方で、身長もイェン以上ビアンカ未満、170cmに届くかどうかだ。先に紹介されたシャトルと比べると若干若く見え、ボリュームたっぷりの真っ黒なハリネズミ頭に対してツルリとした顔が余計に若さを強調している。
自身の仲間達へ向けてサムズアップすると、じっくり周囲を見渡しながら不敵な笑みを浮かべた。
「若いなあ。あんな奴でも団長で、トリを飾ってんだから、相当なんだろうな」
「ブッ」
「まーでも順当に行くならアーサーの相手じゃん? サゾの言う通りならさ」
「……ん? そうだな」
「どしたー? 柄にも無く緊張してんのかー?」
「いや、ちょっと記憶を辿っててな……カール、あいつの靴に見覚え無いか?」
「靴? ほぉー、初めて見るタイプだが硬革の足袋か」
「ふぅん、俺は見覚えがあるのに、お前は初めて見たって事は…」
サーチライトが消え、同時に広場の四方に置かれた照明器具が点灯した。
行燈型照明の照らす範囲はそれ一つで広場の隅々を照らすには十分である、念の為、ムラを無くす目的で四方に置かれているのだった。物見台の上にも同様の行燈が点灯され、空に三日月が顔を覗かせているのにこの一帯だけは昼間の様に明るくなった。
「試合に当たってルールの確認を行いまーす! 武器の使用は自由、ただし広域破壊を伴う魔法や爆発物の使用のみ禁止しまーす! 勝敗の決定は相手に負けを認めさせる、失神による10秒間の戦闘不能、禁止行為及び死亡による反則負けの何れかにより決定しまーす! それでは歓迎試合第一試合ィ! "カール・B・ヌァラVSウィル・ゴードン"んん!! 両者広場中央へ!」
名前を呼ばれたカールであるが、残念そうに溜息を吐いた。
「ハァ〜成る程ね、そう言う事ならアーサー、お前俺と交代してくれよ。そっちの方が楽しそうだ」
「ヤダよバーカw(^^)今からお前の試合なんだから、ささっと行ってこい」
「ケッ」
ぶつくさ文句を言いながら、鞄から両端が石突の付いた長い棒を取り出したカールは広場へ向かった。
「オーイコラッ、何二人だけで通じ合ってんだよ気持ちワリー」
「ベーべベポ」
『ソーダそうだ。さっき何て言い掛けたのよ? 教えてよ』
「親父の意向で俺達はそれぞれ収集癖を持ってるだろ? 俺は武器、カールは防具、ビアンカが換金アイテム、イェンは自作アイテムだったな?」
『素材になるゴミも含めてね』
「良し。それでカールはCBBの防具を網羅している筈なんだが、あのガッツとかいう奴の履いている足袋は見た事が無いそうだ」
「? そりゃーこの世界で見る物はどれも初めて見る物だろーよ」
「だ・け・ど、俺は見た事がある……気がする」
「・・・・・」
『それってもしかして親父の記憶?』
「それも有る。ただ、遠征……メモリーカードを他のタイトルにぶっ込んでカチ込んだ時の記憶が、ハッキリしねえ夢みたいにぼんやり憶えてて、そん時に見た気がするんだよ」
「ふーん、つまり?」
『あのガッツとか言う小僧は"外様"、CBB以外のゲームのPCつー訳なんだよ』
「ほほー、そりゃ確かに楽しそうな相手だーな」
「………おう……」( ´Д`)y━・~~
『………俺が台詞を盗ったように見えるじゃねぇか。試合に集中してやがれコラッ』




