44. ( ・Д・)っ)>Д<)ブニ
アイズマン卿の後に続いてやって来たのは彼の執務室。部屋の調度類の配置はコールロア村長の部屋とよく似ていたが、こちらの方が広さも格も上である。
扉から入って正面奥には、カールとビアンカにとって見覚えのあるものより大きな執務卓がデンと構えていた。
「さて、改めてようこそ我がベイバード砦へ、とりあえず座り給え。グレイも」ギシ…
「仕事中なので遠慮します」
「連れないな」キンッ シュボーッ キンッ
アイズマン伯爵が着席するなり葉巻を点ける。もわりと真っ白な煙が伯爵の周囲に漂う。
「ふ……長旅ご苦労だったな。手土産感謝する」
手土産とは昨日、逮捕した騎士・カフソールの事である。感謝の言葉とは裏腹に、素っ気無い言い方である。
「もう少々目立たぬようであれば、尚良かったのだがな?」
「指摘されて恥をかく前で良かったでしょう」
「……何はともあれ情報提供者に感謝だな。都合良く席も空いた事だしな、うむ。そして君達もご苦労だったな、随分と派手に暴れてくれたそうじゃないか?」
「こちらも一応被害者なので、その対応をしたまでです。幸い何の被害もありませんでしたし」
「それは良かった」
腐ってもカフソールは領内の町を任されていた役人である。それが公衆の面前で逮捕劇を繰り広げたのだから、目の上のタンコブと言えどアイズマン卿にとっては面白くはないようだ。
ユウはそれを感じ取って話題を変えようと試みた。
「いやぁ末端の構成員の下っ端の強欲がここまで大事になるとは思わなかっただけに、少々はしゃいでしまったようで……。それにシャイターン氏も盗賊には大変ご立腹でしたので、恩返しのつもりです」
「それとこれとはまた別件だと聞いているが? そこのグレイシャードですら、尻尾を掴む事すら手を焼いたとか? 一体どんな手管を駆使したんだ?」
「ふぅよーハイ」
「偶然だそうです」
「…………何にせよ解決してくれて良かったな。少人数であの村の戦力を翻弄するような盗賊が近辺にあったとしたら、この砦の主力を派遣しないとならなかっただろうしな」
「そう言えばシャイターン氏から贈り物を預かっているんでした。こちら手紙と贈り物の目録になります。お納め下さい」
ユウが封蝋のされた手紙をグレイシャードに手渡し、それからアイズマン卿へ渡る。まず手紙の内容を確認し、次に目録に目を通した所で彼の眉間がグイッと歪んだ。
「なんだコレは? あの爺さん、弟だけでなく、私まで道楽に引き込もうとしているのか?」
「それは何とも……ただ物は逸品ですよ」
「盾やナイフはまだしも、大量の剣なぞ贈られても、鋳潰して新しい銃にした方がいいんじゃないか」
「失礼します」
部屋にノックの音が響く。昼食の準備が整ったそうだ。
「続きは食事の合間にしようかな。グレイもマスクを取って付き合え。村の様子も含めて、ゆっくり聴きたい」
「………了解」
昼食会の参加者はアイズマン卿とその家族、側近が数人と懇意にしている商人が一人、グレイ兄妹とガンタルト、そして我らがユウ一団の五人。
アイズマン卿が直々に参加者達の紹介をし、それからコース料理が運ばれ昼食会が始まった。
食事中の話題はグレイシャード達が解決した事件の詳細から始まり、徐々にカールやビアンカ達の活躍に触れ、コールロア村での出来事に移っていった。特に戦闘面での活躍について食い付きが良く、説明の為だけに同席させられたガンタルトの熱弁に当てられて皆が興味津々といった様子だ。
そこへ信じられないと言う商人を皮切りに、真偽を問う者が現れた。
「いやはや、あのグレイシャード様の追跡を掻い潜る賊というのもゾッとします、それをあっさりと見つけてしまうのもさる事ながら、騎士相当の方々が使用する強装弾と云うのは、それその物が対化け物を想定している代物、それを剣一本でとは……幾ら何でも信じ難い!」
「しかし……疑う訳ではないが………え〜とカァル、そしてビアンカとやらの派手な評判をよく耳にするが、当の2人にまったく目立った噂が無いのは気になりますのぉ」ニヤニヤ
「気になるか? うむ、我が砦はいつでも戦力を欲している、威勢のいい評判はあるに越した事はない。だが噂は噂でしか無い、百聞は一見にしかずという。もし良ければ、相手はこっちで用意する。我が配下と手合わせ願えるか?」
商人の出すパスを側近がトスしてアイズマン卿がサーブする。実に自然な提案である。
コレはきちんと受けなければ失礼に値するであろう。
「ああ、腹ごなしに丁度良いでしょう。イェンもそれでいいな?」
「ごょん」
「ではこちらからもよろしくお願いします」
「…………フン!」
側近の反応を見るに、アーサーの受け答えは間違いだっただろうか? まあ売り言葉に買い言葉だから気にしない。
『ねーアーサー、ズリーぞ』
『あん? あぁ、ハイハイ。ユウ』
ビアンカがチャットでゴネる。混ざりたそうなので、その意思を汲んでユウからも提案を出した。
「折角ですから4人ずつの団体戦は如何でしょうか? 仰る通り、カールとビアンカの名声に惹かれた者達が最近加わりまして、他2人を含めた4人がどの程度通用するのか胸を借りて測ると共に、この際僕らの実力を示させて頂きたいです」
「ほう。そういう事ならいっそ、午後の余興にでもしてしまおう。3時間後、練武場で行うか。手配してくれ」
「はっ」
申し付けられた若い男性が小さく会釈をしてから部屋を出て行く。
「飲食以外の娯楽が少ないから見物が多く集まりそうだな。ま、せいぜい頑張りなさい」
そうして昼食会は締め括られた。




